イレギュラー
能力、レーヴ・ファンタズマ。
カフィーアは能力を発動し、敵軍の半数以上を無力化することに成功した。
「レッズ。地上で移動してる連中はどうするの?木々が遮蔽物になって止められない」
『大丈夫だ。お前は自分のことだけを考えていろ。残りも頼んだぞ』
「それだけ?」
レッズは必要最低限のやり取りをして会話を終わらせた。カフィーアは偉そうにするレッズが苦手であった。
『ジョイン。目を覚ませ』
「…う、っは……っ!」
『地上を進軍する者を止めてほしい』
「いや、俺ちゃんボロボロなんだけど」
『お前はそこにいればいい。地面は触っているな?』
「あ、なるほど。すっかり忘れてた」
能力、時限雷電。
ジョインの能力は触れたものに電気の塊を残し、それを任意で放電させることができる。そして、その対象は自由である。あらかじめ戦場になると予想していた場所には無数の罠を仕掛けておいた。
「これがホントの地雷、なんてな」
全範囲で放電が起こり、地面を移動する天使と悪魔は次々に倒れていった。
「…手応えなくて分かんないけど。多分、大丈夫だよな?」
レッズへの呼び掛けも空しく、ジョインは取り残された。
一方、大規模の放電により前線にいたバーキンスとメルトリープにもその音と微かな衝撃が届いた。
合図だ…!
二人は前線を抜けディックの元へ急いだ。
◇◇◇◇◇
「決まりだ。ディック、リース下がれ!」
レッズは二人を呼び戻し前に出た。
「残るはお前達だけだ。後続のほとんどを無力化した。まだ続けるか?」
ウラビス達は最後までディックとリースの二人を倒すことはできなかった。
「止めるわけにいかんのだ!!」
「うるせぇな。分かってんよ。まだ、やれる」
「まだまけてない!」
状況が覆る可能性は限りなく低い。それでも続けるというのか。
「おいおい。いい加減にしとけ。お前らに無理だ」
「待て、ディック。様子がおかしい」
何を焦っている?この状況で何が考えられる?
レッズは思考しながら能力で三人を見ていた。すると、様々な数値に大きな変動があった。異常であることはすぐに分かった。
「二人とも下がれ!」
能力、鉄の心臓!
能力、残像!
距離を取れないと分かった二人は能力を発動し防御に転じた。
全身を硬化させたディックはありとあらゆる攻撃を防ぐが、ウラビスの斬撃を止めることはできなかった。正面に影の盾を作ったリースはヒイスの伸びた拳に打ち砕かれた。
「ってぇな!」
「待て、リース!強くなった事実と、目の前の姿を見ろ」
目の前の三人は体が膨張し、言葉にならない唸り声をあげていた。
「操られてんのか?」
「分からない。ただ、身体能力や魔力量は先程とは桁違いだ。全くの別人と言っていい」
「オレは傷付いてもいいけどよ、リースは大丈夫か?」
「うるせぇな。あんなもん何発でも食らえるぜ」
「少し時間を稼いでくれ。その間に解決策を考える」
「おう!」
「任せとけ!」
操られているなら魔力の痕跡がある。それをリガードゥルムの能力で探ってみたがそれらしきものは無かった。体表に表れないということは天使系統の能力であることは間違いないかった。
条件を満たした相手を強化する能力か?自我を失っているのは副作用か?
三人の戦う様子を眺め、その前の動きと比較し脳内で修正した。能力の威力と精密さも上昇していた。が、
「知能が無いなら対策のしようはいくらでもある」
『リース、服の下に影を作成』
「なるほど。これなら閃光でも消えねぇな」
『ディックは硬度を上げろ。ウラビスとヒイスの攻撃に注意しろ』
「おうよ!」
『前からヒイスの攻撃。伸ばした腕を鞭の様に横に払うつもりだ。ディックが受け流しながらリースが距離を詰めろ。そこでヒイスは一歩下がる。方向を変えディックを狙うウラビスに連撃を仕掛けろ。ナポロンの閃光はヒイスの腕を掴んで引き寄せ壁にして防げ』
よし。対応可能だ。
『二人とも左に寄れ。三人同時に仕掛けるがそれを分断しろ』
時間を稼いだ分、
「間に合った…っ!」
能力、クリティカル・アウト!
メルトリープはディックとリースが繋いだ好機を逃さなかった。攻撃を逸らし、無防備になったナポロンに触れることに成功したのだった。
「能力を封じる!」
「助かった、メル」
「邪魔は消えた。こっからは全力で行くぜ!!」
息を切らしたメルトリープはレッズの元へ引き下がった。
「ご苦労。遠くからよく頑張った」
「はぁ、はぁ…」
「バーキンスは?」
「置いてきた」
「…それでいい。空中戦では役立たずだからな。それに」
「終わったぜ」
「余裕だ」
「最初から敵ではない」




