同時展開
レッズとヒイス。リースとナポロン。ディックとウラビス。偶然にも三組は持久戦を繰り広げていた。だが、それぞれの内容が全く異なっていた。
さて、どうしたものか。私はヒイスの攻撃を食らうことはないが攻撃に転じることができない。仮に攻撃に成功したとしてもヒイスの身体機能と強靭さの前では全くの無意味だろう。
リースは影を封じられて不利であり、ディックは武器によって間合いを詰められずにいた。そして、数分。何も変化することなく時間が過ぎたが、レッズの準備が整った。
同時にナポロンとウラビスは違和感を抱いた。相対する二人の動きに無駄が無くなっていた。これはレッズが現れてからの変化であり、なんらかの能力が働いているのは明らかだった。
「ナポロン」
「うす」
ウラビスの掛け声にナポロンが反応した。対峙するリースとディックを無視し、レッズに接近した。始動早かったため二人は追い付けなかった。
能力、オプティクス。
能力、クル・オリカルコ。
リガードゥルムの能力で接近するウラビスとナポロンに気付いたレッズはヒイスに背を向けた。ヒイスの動きは把握できたためである。あとは二人を見ることで攻撃を完全に回避しようと考えたのであった。
能力、パーラー・エンディエンド。
ウラビスの攻撃範囲到達まで2.3秒、ナポロンの攻撃範囲到達まで3.8秒。この僅かな差を生かして攻撃を避ける。二人の攻撃の軌道は読める。背を見せているがヒイスへの警戒は解いていない。三人同時攻撃であろうとも回避は失敗はしない。
状況を瞬時に整理し、全てに警戒しつつも最善の回避行動を脳内で算出した。そして、最善のタイミングで体を動かした。ウラビスの縦振りの剣を避け、ナポロンの攻撃と同時に後ろに下がった。このとき、ヒイスの攻撃にかろうじて反応できる距離を保った。
この間にディックとリースは距離を詰めた。だが、レッズを敵から引き剥がす前に三人にはもう一度攻撃できる時間の余裕があった。
能力、残像。
リースは影を伸ばし、レッズをこちら側に引き寄せようとした。しかし、
「その能力、もう飽きた」
能力、オプティクス。
ナポロンは体を発光させ影を掻き消した。だが、そのおかげでディックが距離を詰め、ナポロンの攻撃を遅らせることができた。
魔力の変動…!背後か!
前に気を取られていたレッズはヒイスの魔力の変化を察知し、ウラビスに自ら近付いた。
「!」
「盾にさせてもらう」
反撃する腕を掴み上手く後ろへ誘導した。
能力、サン・ピエール!
ヒイスの拳がウラビスに直撃した。
「本当に素人か?咄嗟にしては良い動きだ」
幅のある大剣を盾にしウラビスは攻撃を防いでいた。だが、その剣はヒイスの一撃で粉々になってしまった。
「大丈夫か?」
「あぁ」
「一度休んどけ。オレ達に任せろ」
ディックとリースは前進し、ウラビス、ナポロン、ヒイスと向き合った。
距離を取ったレッズは深呼吸をして能力を解いた。ディック、リース、カフィーア、ジョインの行動と周囲の状況を確認しながら戦っていたためはかなりの疲労が溜まっていた。自分も含め五人分の情報を一度に処理するのはレッズ以外には不可能であった。カフィーアが危機に瀕したためにとった行動はここまでは成功だと言える。
問題はここからである。見ることに長けた能力と豊富な知識がレッズ武器だ。それを生かしても三対三の戦いでは足を引っ張ることは分かっていた。そこで身を引くことで敵の範囲外に逃れ、一度状況を整理した。疲れが少し和らぎ、集中力が戻ってきた。
能力、パーラー・エンディエンド。
再び能力を発動させ、ウラビス、ナポロン、ヒイスとディック、リースの戦いに目を向けた。
「リガードゥルム。頼むぞ」
そう言うとレッズの情報伝達速度が早まった。
『先程のヒイスの能力は理解できた。体を宝石に変える能力だ。腕が伸びたのは展性の性質を持つ宝石、ソウゾ・ラフィアを真似たからだろう。他にもあると思われるが攻撃範囲が広がっただけで威力に変化はない。ディックに関しては食らっても耐久可だ』
全員の能力が明かになったところで二人は仕掛けた。
「目、瞑れ」
能力、オプティクス。
ナポロンは接近する二人に閃光を浴びせた。
「くっ、うぅ!」
「くそが!」
『狼狽えるな。視力が戻るまで指示を出す。リース右前に影の壁。ディック前進、ウラビスを押し退けろ。そこで体を捻る回避。横から迫るヒイスを避け、影の壁にぶつかって動きが止まるところをリースが攻撃。ディックはナポロンと距離を詰め閃光をさせるな。それが済んだら真後ろに下がれ』
レッズの的確な指示で三人の全ての攻撃に対応し、それぞれに攻撃を仕掛けることができた。
「よし、目が治ってきた」
「こっから反撃だぜ」
頭を使う戦い方が向かないディックとリースは、レッズの支援により三人を相手にしても全く引けを取らなかった。




