全ての理解者
「ありゃりゃ。意外としぶといね、お姉さん」
「こいつっ、なかなかあたんねぇなっ!」
カフィーアはレッズの指示によりヒイスの攻撃を避けていた。だが、攻撃手段もなく戦闘向きではないカフィーアが長時間耐えることは不可能であることは明白であった。
ディックとリースも最善を尽くしているがそこまで手が回らなかった。レッズに限っては敵味方関係無く全員を見て、仲間にリガードゥルムを通じて指示を出していた。手が回るはずがなかった。
『地上でジョインが二人の領主を行動不能にした。だが、重傷を負いそちらへの加勢は不可能だ』
弱気なジョインが大きな戦果を挙げた。それについてよくやったと三人は思った。が、この状況が変わらないことに焦りを覚えた。ウラビスはディックを上手く引き付け、ナポロンはリースを封殺していた。
バーキンスとメルトリープが来れば。
そう思ってしまうほど今のままがいけないと全員が分かっていた。
『それぞれは目の前の敵に集中しろ。カフィーアは放っておけ』
ディックは葛藤した。自身の力ならなんとかなるかもしれない。それでも見捨てなければいけないのか、と。
リースは何も考えなかった。否、相対するナポロンの手強さに思考する暇が無かった。
カフィーアは悩んだ。ディックとリースは手が回らず、自衛の手段が無い状況でレッズの言葉を信じるべきか。ディックなら迷いは無かった。
『集中しろ、と言ったろ。なら、安心しろ。ヒイスの相手は』
私がする。
レッズはヒイスとカフィーアの前に息を切らせて現れた。
「全く、飛ぶのも楽ではないというのに」
「じゃまっ!」
ヒイスは距離が近く、突然現れたレッズに攻撃を仕掛けた。
能力、パーラー・エンディエンド。
レッズはリガードゥルムの能力で把握した情報と現場を照らし合わせながらヒイスの攻撃を避けた。その視界にはヒイスは映っていなかった。
「六、いや七割か」
「はぁ!?」
「私の勝率だ。それよりも」
レッズは掴み掛かった腕を受け流し、周囲を見渡した。
「レッズ。大丈夫なの?」
「心配するな。私の能力はそういうものだからな」
近場にいながらも何の動きもないイフティオンは戦力として数に入れなくていい。領主を全員倒して終わりだ。
「カフィーア。所定の位置へ行け。援軍を能力で鎮圧してから戻って来い」
「承知しました」
「させっかっ!」
再びヒイスがカフィーアに迫るがレッズが搦め手で動きを封じた。
「ぐぬぬっ!」
「お前は何もしないのか?」
「え、冗談困るなぁ。ボクは非戦闘員なんでムリムリ」
「そうか。それと、お前の能力は理解してる。私には効かないぞ」
「マジっすか………いっ!?」
「指示通りだ」
レッズは能力を通じて指示を出していた。
「一発おまけだ」
「あぁ、感謝する」
能力、残像。
レッズはすでに全員の位置と距離、そして能力の射程、威力、精度を全て把握していた。そして、誘導しながら戦況を操った。
「ちなみに、効かないと言ったのは嘘だ」
本人も言うように戦闘力の無いトゥティスはリースの一撃で吹き飛ばされた。見たところかなりの骨が折れただろう。地面に落下したことも加味すれば確実に戦闘不能だ。
「おまえ、つよいなっ!」
「強くはない。ただ、上手く立ち回れるだけだ」
ヒイスは何度も攻撃を仕掛けるがレッズに一切通用しなかった。攻撃を繰り返し、ヒイスは思った。レッズの動きは強者のそれではない、と。素人が頑張って動いているようにしか見えなかった。だが、当たらない。その理由が分からなかった。
「はぁ、はぁ、なんであたんないんだっ!」
「そういう能力だからだ。それと、お前。女性ならもっと品のある言葉使いをしたらどうだ?なんというか、マナーが悪い奴を見ると」
矯正したくなる。
「女性特有の柔軟さ、しなやかな筋肉、完璧に近いボディーバランス、動体視力。他にもあるが、それを生かしきれていない」
単純に勿体ない。
「美しい顔立ちであるのも相まって勿体ない」
「う、うつくしい…!」
「…おっと。最近は先生としての思考が癖になってるいるようだ。忘れてくれ。今は、敵同士だからな」
「うつくしい…」
レッズの戦い方は特殊だった。それは、能力と本人の性格によるものであった。
レッズの能力は見ることに特化したものである。見たものを数値的に把握することができる。それはありとあらゆるものに作用する。人を見れば身長や体重が分かり、攻撃を見れば何秒後に到達するか、どれだけの威力があるかを理解することができる。ただし、レッズの運動神経は並であるため分かっていても攻撃を避けられない時もあり、攻撃に関しては武器や罠を使わない限り致命傷にはならないという弱点がある。よって、レッズが得意とするのは相手の戦意喪失を狙った持久戦である。対話による説得ともいえる。
もちろん、ディック、リース、カフィーア、ジョインにリガードゥルムの能力で情報伝達を行うことも怠ってはいない。




