能力戦
決戦の日。各自配置に着いた。どう戦いを進めるか考える暇は無く、すぐに六人の領主が現れた。
空中で待機するディック、リース、カフィーアの元には四人。地上で待機するジョインには二人が対峙した。
「リガードゥルム。どういうことだ?強大な魔力が接近したらすぐに伝えるように言っただろう」
『グゥン…そいつら急に現れたんだよぉ。ちゃんと見張ってたよぉ』
「仕方ない。能力によるものだとしたら、それは相手が上手だっただけだ。なら、今度は私と仲間全員を繋いでくれ。指示を出す」
『グァ!』
能力、ガルファリオン!
『強度七』
「うっ…やはり、慣れには少し時間がかかるな」
強度七ともなると周囲のほぼ全てのものが理解できる。膨大な情報量に頭が痛くなった。だが、これで現状を完璧に把握することができる。
「ディック。そこにいるのはナポロン、ヒイス、ウラビス、イフティオンだ。能力の相性を考えて戦え。ジョイン。お前の所にいるのはアグナとトゥティスだ。相性は最悪だ。接近戦でなく、いつもの戦い方で翻弄しろ」
天使はナポロン、ヒイス、ウラビス、アグナ。悪魔はイフティオン、トゥティスであった。
全員に指示を出すが返答は無い。もうすでに交戦しているのかもしれない。
「全員の無事を祈る」
「ブラド。もういいぞ。能力を解除してくれ」
「へい」
先に領主たちと対峙してしまったのなら隠れる必要はない。それよりも今優先すべきはカフィーアの離脱。でなければ約八万の雑魚を相手にしなければならないのだから。正しくは八万千四百だが、この数は侮れない。
◇◇◇◇◇
レッズが指示を出す数分前。
ディックたちはすでに領主と向き合っていた。
「どうも諸君。小賢しく策を練っていたようだが、我々には通用せんぞ」
「やってみなきゃわかんねぇだろ。馬鹿かてめぇ」
「リースやめろ!挑発すんな!」
「ナポロン、彼の相手を」
「うす」
「カフィーアはイフティオン」
「了解でぃ~す」
「ディックは我々で相手をする」
ウラビスが指示を出すと各自配置に着いた。その瞬間から命を取り合う戦場の雰囲気へ変化した。
「カフィーア!能力を…」
「あ~、ムリムリ。だってもう」
能力、downdowndown。
「彼女の魔力0だからさ」
イフティオンが能力を発動した瞬間、ディックたちに何かが繋がった。それは、リガードゥルムの能力でレッズと通信が繋がったことを示していた。
『…無事を祈る』
レッズの言葉に耳を傾けながら、目の前の敵に集中していた。
「ボクの能力は範囲内の魔力を0にする。だから、魔力探知をすり抜けられたし、こうやってお姉さんのことも封じられた。いやぁ、お姉さんは魔力が多いから今こうしてるのが精一杯だよ」
ディックとリースがカフィーアの元へ向かうがそれぞれが敵に遮られた。
「大丈夫、大丈夫。ボクは争いが苦手だから。攻撃とか一切しないから」
「ぼくは、なっ!」
カフィーアの元へ手が空いたヒイスが攻撃を仕掛けた。
「させっかよ…」
能力、残像。
カフィーアの周囲に拳の残像が現れた。防御でありながら攻撃にもなる策にヒイスは一歩引いた。
「あんたの相手俺だけど」
能力、オプティクス。
ナポロンが能力を発動すると強烈な閃光と共に連撃がリースに叩き込まれた。その閃光のせいで影が消え、カフィーアを守るものが無くなってしまった。
「自分の能力は光。光による残像効果っす」
「くそが…」
ナポロンの能力はリースの正反対であった。光を発し、自分の像を残す。それによりリースの影を無効化し、自身の攻撃に利用していた。それを身をもって知ったリースは唾を吐き捨て構え直した。
「リースが駄目ならオレが行くしかねぇよな!カフィーア、心配すんな!」
「心配なんかしてないわ」
能力、鉄の心……!!
能力が発動するよりも早く、ウラビスの剣がディックの首を跳ねた。
能力、クル・オリカルコ。
武器を具現化する能力とそれを振るう速度に、気が逸れたディックは反応できなかった。
「噂ではこれぐらいでは死なぬと伺っているが…」
「……痛っぇな!」
切断面から新しい頭部が生え、ディックは顔をしかめた。
「死ぬわ、てか死んだわ」
「やはり、効いていない様子で」
「しっかり効いてるっての。めちゃくちゃ痛ぇし」
ディックは首の骨を鳴らし、正しい位置に戻した。
こりゃやべぇな。オレの能力じゃ相性が悪りぃ。カフィーアを助ける余裕は無さそうだな。
相手との力量を察したディックは思考した。しかし、元々直感で動くため思考する時間は短かった。
「能力、鉄の心臓。噂通り、無敵になる能力であったか。そこで、提案する。我々の仲間になれ。貴様らは強い。ここで殺すには惜しい存在だ。優遇もする。だから…」
「バカじゃねぇのか?オレは誰かとの争いに興味はねぇ。オレが戦うのは自分が強ぇと勘違いしたバカが弱い者いじめをしねぇようにするためだよ」
能力、鉄の心臓…!
「相性なんてどうでもいい。気が合わなそうなお前はオレが倒してやる」




