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B MAIN  作者: 半半人
ハインシス編
11/173

燕天六輪大砲

閃天。

ゼムレヴィン国務第二階申、シナ・ハンクの武器。連射、命中精度などバランス良く強化されている。臨機応変な攻撃が可能なため、これを持ち歩くことがほとんどである。

 何か悪魔側の方が騒がしかったけど。あれでいいのよね?

 矢を放ち終わった後にシナは思った。あの場にアイゼンが居ても…多分大丈夫だろうと。天使側に視線を戻し、弓を後ろの兵士に渡した。


「黙ってないで弓を交換してちょうだい。燕天、持って来て」


 今まで使っていたのは、連射に優れた中型弓、閃天。燕天はそれよりも大きい弓を指している。大きすぎるうえに、弦の張力がとてつもないほど強いのが特徴である。


「兵士、魔法騎士団からの合図は?」

「はっ!魔法騎士団長様からは障壁の用意は整ったと承っております!」

「兵士は?」

「それがまだ…」

「…仕方ないわね」


 左手と左足で弓を支え、右手で三本の矢を構えた。残りの兵士を巻き添えにする覚悟で矢を放とうとした。


「派手に頼んだぞ…!」


 大勢の兵士を背負い、息を切らしたアイゼンが拠点に戻った来たのだ。


「ナイス、アイゼン」


 そこからの動きは速かった。

 弓の動作と攻撃は単純に見えるのも仕方がない。だが燕天の威力は、


燕天六輪大砲えんてんろくりんたいほう


 同時に三本の矢を二回放った。風の魔法により六方向から一点に集まるような放物線を描き、目標に辿り着くと、


周囲のモノが吹き飛んだ。


 燕天用の矢は貫通力よりも、飛距離を出すために造られている。さらに、矢全体に強力な魔法と爆薬が込められている。理由は至って簡単だった。遠い敵地の真ん中に爆弾を落とすことを目的としているからである。


兵器の一つのと言っても過言ではない。


 着弾した箇所から衝撃と熱風が押し寄せるが、魔法騎士団の力により破壊の波は抑えられた。しかし、その威力によりハインシスの四分の一程が吹き飛んだ。


「…天使と悪魔より酷いな」

「ケ、ケイニーに言ってよ!」

「どう見ても魔法より火薬の量に問題があるだろ」

「…そこの兵士。その男を黙らせて」


 アイゼンの口を塞ごうとするも無意味だった。


「シナ様!魔法騎士団、兵士隊隊長からも予想外との合図が送られてきます!」

「それは報告しなくていいの!」


 この場の戦争は我々人間側にも大きな損害を与える一撃で幕を閉じた。


◇◇◇◇◇


「我らの勝利だぁ!!」


うぉぉおぉぉぉ!!!


 その夜は大騒ぎだった。隊長がことあるごとに何かを叫び、それに釣られて他が騒ぐ。それが延々と続いた。


 一人黙々と食事をしている身としては静かにしてもらえるとありがたいのだが。止まられないほどに事態が発展している。


「シナ・ハンク様の一撃!!あれはまさに、大地を揺るがす鉄槌!」


 いや、ただの爆発だが。


「人間界の女神だ!!」


 いや、破壊神だろ。


うぉぉおおぉおぉぉ!!!


 都合の良いように自己解釈し過ぎではないか?


「隣、いいかしら?」

「…どうぞ女神様」


 酒の入ったグラスをテーブルに置き、私と向き合った。


「お疲れ様。まずはそれね」

「そちらこそ、大変だっただろう。最終目的は果たせたし、私たちの完全勝利だな」

「そうね。レナードが言ったように…」


 狂喜乱舞する人の塊に目を向けた。全員が笑いながら酒を浴び、出された食事を雑に平らげていた。


「この国の指揮は問題無さそうね」

「そうだな」

「ねえ。アイゼンはお酒、飲まないの?」

「コーヒー以外は積極的に飲もうとは思わない」

「つまらないのね」

「前からそうだ。特に何とも思わん」


 シナは残りを一気に飲み干した。


「ぷふぅ。騒がしさの中にも品はあるのに」

「美人がぷふぅと言うのもどうかと思うがな」

「ギャップよ、ギャップ!お堅いイメージの階申にも人間らしいところがあるの」


 シナの顔は赤かった。それが人間らしいとはなんとも皮肉なものだ。


「階申には自由があるのか?自分の時間、自分の空間を持っているのか?」


 ヴィスティンハイムでの生活のせいで世の中のことが窮屈に思えるのだ。特に、戦いと人民の命に関わる階申のことを考えると同情の念すらある。


「大変だけど、今日みたいに笑ってくれる人がいるから。それで十分…」

「…」

「なんだか私らしくないわね」

「…そんなことはない。素晴らしいと私は思う」

「だったら…」


一杯付き合わない?


 シナに差し出された小さなグラスにはすでに酒が注がれていた。とにかく飲め、ということか。


「一杯、だけだ」


 口に含むと僅かな苦味が先に現れ、遅れて香りが広がった。喉を過ぎる頃には熱を帯び、顔が赤くなった。


「…ふふ。もう真っ赤じゃない」

「なんとも…慣れるのに時間が必要だな……」


 疲労のせいもあってか睡魔が襲ってきた。シナとの会話が面白く、安心したからか…?思考が曖昧になる前にこれだけは言わないと。


「…シナ」

「何かしら?」

「…ありがとう。少し、迷いというか悩みが晴れた気がする……」

「ええ。私の方こそありがと…」


 そこからの記憶がぶっつりと消えた。


 だが、夜が明けてもなおこの宴会が続いているのは分かった。皆が嬉しそうならそれでいい。その答えもありなのかもしれないな。


 そう思うと今までのことも報われるような気がした。

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