小さな拳
「困った時は口に出して確認するといいぞ」
「何で?」
「何で、って言われてもなぁ。何か良いんだよなぁ」
「癖なの?」
「癖だねぇ」
「ふぅん」
今思えばジョインは師匠や先生とは違う…。兄貴のような存在だったのかもしれない。
「おい、聞いてるのか?バーキンス?バーキンス?」
「…あ!ごめん」
「最近おかしいぞ。どうかしたのか?」
「いや、別に。何でもない…」
バーキンスは課題をこなせないまま半年が過ぎた。知識、運動能力は向上してもそれだけはできなかった。
不思議に思ったレッズはディックに相談した。
「…というわけで様子がおかしい。お前から聞いてみてくれないか?」
「あぁ、いいぜ。迷えるクソガキを導くのが大人の役目ってもんだろ」
「たまには指導者になってみろ」
「オレが誰かに教えることなんてねぇよ。めんどくせぇから背中見て勝手に学べって感じだ」
「お前らしいが、ちゃんと見てやれよ。いくら賢いといえまだ子供だということを忘れるな」
「分かってるって」
後日。
「バーキンス。ちょっと来いや」
「え、何?」
「たまにはオレのカッコ良いとこ見せてやるよ」
「別にいいよ。いらない」
「そう言うなって。飛ぶぜ」
「って、うぉおお!!」
ディックはバーキンスを抱え有無を言わさず飛んだ。バーキンスは人生で初めての大空に言葉が出て来なかった。
「これがオレ達の見る景色だ。人間にはちょっと贅沢かもな」
「……」
「どうした?ビビったか?」
「…ビ、ビビってねぇよ!」
「なら、こっから先もビビんなよっ!」
ディックはそう言うと急降下した。激しい風の音に怯え体が強張った。
「目ぇ閉じんな!!見ろ!」
「怖ぇぇよぉぉ!!」
「うるせぇ!そういえばお前、最近なんかあったのか!?」
「それどころはじゃないよ!!」
「言いたくなきゃ別にいい!けどよ!悩んだり困ったりするだけ無駄だぜ!」
「何も悩んでないよ!」
「そうか!」
ディックは地表付近を滑空し、速度を落として着陸した。
「うしっ、着いたぞ」
「はぁ…はぁ…はぁ…!」
着いたのは小さな遺跡だった。
「…ここに何があるの?」
「友達がいる」
「はぁ?修行とかじゃないの?」
「たまにはサボったていいだろ。ってなわけで今日は自由にしていいぞ」
元々自由なディックは歩を進めた。バーキンスはそれに一応着いていった。
「よぉ!ディック!」
「久しぶりだな、ビルトン」
そこには男の子と少し老けた天使がいた。
「え?友達?」
「あぁ。同年代だ」
「…え?」
「あれ?言ってなかったっけ?オレこう見えて六十六歳」
「えぇぇ!?」
「詳しくはレッズにでも聞いてくれ」
バーキンスが驚くのも無理はない。この時のディックの容姿は二十代前半にしか見えなかった。
「おっ!とうとう人間と子供でも作ったのか!?お前の破天荒さは相変わらずだな」
「んなわけねぇだろ。拾ってきたバーキンスだ。そっちは息子のガキか?お前も爺さんになったんだな」
「あぁ。孫のホバック、六歳だ。なんやかんや時が過ぎたもんだ」
「バーキンス。ホバックと遊んでこい。オレはビルトンと話があるからよ」
「…分かった」
「…?」
ディックとビルトンは腰を下ろした。特にやることもないので言われた通りこの天使と遊んでやろうと思った。
「オレはバーキンス。よろしく。年は?」
「ホバック・ホービン。よろしく」
バーキンスは恐る恐る手を差し出し握手を求めた。メルトリープのように能力を発動するようなら二度と握手はしないと思ったがそうはならなかった。
「なぁ、ホバック。お前の能力見せてくれよ」
「…やだ」
「何で?」
「…ホバックの能力は弱っちいって皆がいじめるんだ」
「はぁ?」
バーキンスはホバックを観察すると小さな痣がいくつかあった。
「許せねぇな」
「…バーキンス?」
弱者を一方的に痛め付ける強者。そんなことがあってたまるか。ましてや能力の強弱で格付けされるなんて…!
沸々と沸き上がる怒りにバーキンスははっとした。規模は小さいとはいえ、この状況はディックが目指すものと同じであると思った。
「お前をそんなことする奴をこらしめてやる。ホバック、そいつらを教えて」
「またいじめられちゃうよ」
「そうならないようにするから。信じて」
バーキンスにしっかりとした考えはなかった。だが、動かずにはいられなかった。
遺跡内の居住区をホバックに案内させ、バーキンスは目的の相手と遭遇した。道中で人間だということで不快な顔をされたが関係ない。
「お?お前はここに来んなって言ったろ!!」
「弱虫ホバックちゃん、どうしたのかなぁ?」
「うん?後ろの人は…人げ…」
「おらぁぁ!!」
いじめっ子三人と遭遇した瞬間。バーキンスは一番近くの奴に殴り掛かった。
リースから学んだ戦いのコツその一。先手必勝。
「いてっ!」
「うわっ、何だこいつ!?」
レッズから学んだ戦いのコツその一。情報を与えない。
場が乱れてるうちに終わらせる!!
一人、二人と殴り倒し、最後の一人となった。
「何なんだよお前は!」
能力、ライズドーピング。
「ホバック、あいつの能力は?」
「すごい動きが速い」
「全部強化だね」
「こっちを見ろっ!!」
「うぐっ!」
バーキンスの腹に鋭い一撃が叩き込まれた。
「痛っ…くない!」
「ぶぇ!」」
負けじとバーキンスは殴り返した。
手加減知らずのリースの方がずっと痛いし、すごく速い。さっきは初めてだから避けられなかったけど、
「遅い!」
「はっ!」
体が余裕で対応できる。
顎に一撃を入れいじめっ子全員を制裁した。




