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B MAIN  作者: 半半人
幼き日の憧憬
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能力、クリティカル・アウト

「ねぇ、カフィーア。こういうのはお前がよく知っているだろうってディックが言ってたんだけど」

「え?何々?」

「ここに登場する女の人の心情なんだけど…」

「もう、しょうがないわねぇ。ここはね…」


 レッズ曰く、ディックの名を出せばカフィーアはちょろい。

 バーキンスは十歳になった。


「人間、天使、悪魔の順で数が多い。逆に悪魔、天使、人間の順で能力が強い。何故人間が減らないか詳しくは分からないが、私は歴史が深く関係していると思われる」

「歴史?」

「天使と悪魔は同じ能力が少ない。そのため情報が少なく上手く扱う方法や応用といったことを自分で模索しなければならない。人間は五つの属性しか操ることができない。だがからこそ私たちに勝るとも劣らぬ魔法を追究することができたと考える」

「レッズ達が苦戦した人たちがいるってこと?」

「まぁな」

「へぇ」

「だが、そこまでに辿り着ける者はごく僅かだ。お前のように魔法を使えない者も含めればもっと少ない数になる」

「じゃあ、魔法以外で人間が勝てる方法は何かないの?」

「…あるが、これはほぼ不可能だ」

「教えてよ」

「…それは」


 殺して奪う。


「えっ…?」

「これは確率の話になるが、人間は天使か悪魔を殺した際に殺した相手の能力を使えるようになるという。だが、これは先程話した優れた魔法使いよりも更に稀だ。私も未だに一人しか見たことがない」

「それって天使と悪魔も同じなの!?」

「人間だけが当てはまる」

「…他にはあるの?」

「後で教えてやる。ここからは先は…危険すぎるからな」


 本日の講義は触れてはいけない部分に近付いた気がした。それと同時にバーキンスは考えた。この情報が本当なら簡単に強くなれる、と。


「おっと…そろそろだな。今日はディックが新しい仲間を連れてくる。年はお前より四つ上だ。プライドが高く、潔癖だ。機嫌を損ねると面倒だ。覚えておけ」


 レッズはバーキンスに釘を刺した。相当の曲者だということは分かったが、年が近いことで友達になれるのではないかと思った。


「帰ったぞー」


 ディックが連れてきたのはマスクに加え一切肌を見せない格好をしたバーキンスと同じぐらいの背丈の悪魔だった。


「こいつはメルトリープのメルだ。バーキンスとは初めてだからな。仲良くしろよ」

「おう。よろしく…」


 バーキンスは手を差し出し握手を求めた。すると、一瞬で体が硬直した。


「触るな、触れるな、近付くな人間」

「え、えぇ……」


 能力、クリティカル・アウト。


 メルトリープの能力はありとあらゆるものを封じる。まだ若く能力の本質に気付けてはいないがそれでも強者であることには変わりなかった。


「ディック!助けて!」

「それ本人も解除できないらしいからしばらく我慢な」

「何でだぁ!」


 初対面でこの仕打ち。さすがに頭に来た。


「潔癖だ、と言ったろ」

「こんなことになるなんて思わないよ!」

「そうか。それは悪かった」

「いつになったら解けるの!?」

「遅くても二時間だ。昼食には間に合う」

「そういう問題じゃないよ!」

「そう怒るな。…そうだ、バーキンス。私から宿題を出そう」

「それどろこじゃないよ!」

「メルトリープに触れることができたら、その先を教えてやる」

「!」

「そうだな…。寝ている時は嘘は吐くなよ。すぐに分かるからな」

「分かった」

「よし」


 こうしてバーキンスは一つの目標に向けて試行錯誤することとなった。しかし、この宿題がどれだけ難題か知らなかった。


 バーキンスは考えた。初対面で能力を知れたことは幸いだった。無理矢理触れにいけば必ず防がれる。最初で最後の一回に集中するしかない。戦場に同行し情報を集め、仲間に話を聞いたりした。だが、能力以外のことを知ることはできなかった。


 どうしよう…。


「なるほど。最近組手に集中してねぇのはそのせいか」

「闇雲に触りにいかないのはかなりの成長だ。物事を考えてから行動するという効率的な精神が馴染みつつあるな」

「これからどうすんのか見物だな」


 レッズとリースは事の成り行きを楽しんでいた。


 ある夜、深夜に衣擦れの音がしてバーキンスは目覚めた。普段なら気にせずもう一度眠るのだが、その音の正体がメルトリープであったことから目が覚めた。周囲を気にしている様子から何かを隠していることが分かった。そして、バーキンスはこっそりと後を追った。メルトリープは夜空を飛んでいたが、レッズから学んだ尾行術で見失うことはなかった。

 辿り着いたのは森の中にある大きな湖であった。月明かりが射し込み、水面が白く光っていた。そこでメルトリープはマスクを外した。


「え、女…!」


 声を出してしまい慌てて身を潜めた。名前は女らしいと思っていたがマスクで声が籠っていたし、体格や口調からは分からなかった。そのため驚いてしまった。

 こちらに気付いていないメルトリープは服を脱ぎ、裸になると水浴びを始めた。その様はまさに芸術であった。バーキンスは拙い語彙力からそれに相応しい言葉を探すも見つからなかった。ただただ美しいと思っていた。齢十とはいえ、男であったバーキンスに初めて見る女性の裸体は刺激が強すぎた。あまりの美しさに放心してしまったバーキンスはメルトリープがいなくなったことにも気付かず夜が明けるまでそこに佇んでいた。

 

 そして、一切の物事に集中できなくなった。

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