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B MAIN  作者: 半半人
幼き日の憧憬
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師匠と先生


 バーキンスがディック達の世話になって三ヶ月。軽く走れる程度には回復した。


 そしてレッズの学習に加え、


「ぶはっ!はっ!はっ!…!」

「馬鹿野郎。もう一分潜ってろ」

「死んじゃうよ!」

「そう簡単には死なねぇよ」


 リースの厳しい指導が始まった。


 病み上がりの体にいきなり負荷を掛けないように水中での訓練をしていた。体にほどほどの大きさの岩を結び付けられ沈まないようにするという、一種の拷問まがいの訓練にバーキンスは本当に死にかけていた。


「リース!こんなんで本当に強くなれんのかよ!?」

「いいか。俺はお前より年上で、お前に教えてやってる立場だ。もっと敬うようにしろ。というか単純に呼び捨てが腹立つ。例えば…」

「リースさん?」

「駄目だ駄目だ。長いし気持ち悪い。師匠にしとけ」

「分かった。で、師匠。これで本当に強くなれる?動きにくい、息もしにくいし」

「…うるせぇ!!てめぇは黙って言われたことをすればいいんだよ!!」

「え、えぇ…」


 その後も沈まないように泳ぎ続けた。


「ってことがあったんだよレッ…じゃなくて先生」

「あいつは結果だけを述べるからな」

「あんなことして本当に強くなれるとは思えないよ」

「そう思うのは分かるがあいつなりに考えているんだ。私でもそうしただろうし」

「…死にそうになるんだよ?」

「死んではないのなら大丈夫だ。そのまま続けろ」

「やってらんないよ!」

「そうか。では、今日は人間と天使と悪魔の共通点と相違点を教えてやろう。これを聞けば納得する」

「嘘っぽいなぁ」


 この授業も日課になっていた。元から勉強は嫌いではなかったことに加え、レッズの話はとても面白い。説明が上手く、飽きさせない巧みな話術でめきめきとその知能を高めていた。


「まずは共通点だ。第一に見た目だ。羽の有無はあるが基本は変わらない。次に言葉だ。各自で使う文字は違うが言葉たけは何故か通じる。これは謎だ」


 レッズの講義が始まり一通り聞くと、


「ここからがお前の言っていたことに繋がる。天使と悪魔は“能力”を持っている。なら、人間の場合は何だ?」

「人間が持ってるのは魔法。能力じゃない」

「そうだ。だが、そう考えてるのは人間側だけで私たちはその魔法も能力の一つだと考えている」

「どういうこと?」

「能力も魔法も魔力を使うという点では同じということだ。次に進むぞ。人間と天使と悪魔にはそれぞれに運動能力の差がある。この中で一番運動能力が高いのは?」

「天使」

「理由は?」

「内側で魔力を使うから」

「そうだ。つまり、魔力を体内に多く持っているということは高い運動能力を有しているのと同じことになる」

「それって悪魔も同じじゃないの?」

「そうだ。だが、人間もそうだと言える。何が言いたいか分かったか?」

「俺は魔法使えないし、魔力なんて持ってないよ」

「だから魔力のある場所で訓練をして体の中に取り込もうとしているんだ。動き難かったり、息がしづらかったりするのはそのためだ」

「へぇ」

「魔法を使えないということは、魔力を外に出すことが無い。お前がこのまま訓練を続ければ明らかに身体能力は向上するだろう。おまけに魔力が体内に多いと傷の治りも早くなる」

「へぇ」

「おい。今日は山に行くぞ。空気も少なくて鍛えるにはもってこいだ」

「今支度をさせる。続きは後だ。リースと共に行ってこい」

「…はぁい」


 こうしてバーキンスはリハビリを兼ねた鍛練で少しずつ成長していった。一人でも生きていけるほどになる頃には十歳になっていた。


 そこで選択を迫られた。バーキンスが必要最低限の生存力を身に付けるまで世話をする目的が達成されたからだ。これからは何をするのか、どのように生きていくのか。ディック達はバーキンスの答えを尊重しようと考えていた。


 そこでバーキンスはこのままでいることを選んだ。恩を感じて留まった、これからも教えを請いたいと思ったから。その選択に間違いは無いと信じていた。


 その後もバーキンスはディック達と行動し多くの戦いを経験した。実際に戦ったことはほとんど無いが、情報戦や人間との連絡係として貢献した。


 バーキンスは早く皆に追い付きたいと思った。自分にもディック達の様な能力があれば、と何度も考えた。だからこそ、リースとレッズからひたすら学んだ。


「まずは真似ることだ。そうすれば近付くことはできる」

「はぁ?追い越してぇなら真似たらダメだろ?」


 二人の意見は対立することがあったが、バーキンスはその両方を吸収した。まずは真似ること。次に真似ないこと。

 ディック、リース、ジョイン、カフィーアの戦い方を見て、記して、何度も思考した。


「レッズは戦わないの?」

「まぁな。私の能力は戦闘向きではないからな」

「よく言うぜ。この中で一番負けない能力のくせによ」

「??」


 バーキンスがこの意味を知ることは最後までなかった。この時は地形の把握や敵の勢力を把握することなどに長けていることなのだと思った。


 こうしてバーキンスは二人の師の元で、価値観や人格が少しずつ変わり始めた。全ては皆を追い越すためだった。


 

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