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B MAIN  作者: 半半人
幼き日の憧憬
106/173

能力、レーヴ・ファンタズマ


 戦いとは何か?


 対等な力を持つものが争うことである。対等であることが重要であり、力の差が大きすぎる場合は戦いとは言わない。そして、それは常に不確定であり絶対は存在しない。力を持つものが一人の加入、脱退することでその勝敗が逆転することもある。


 と、カフィーアは思っている。


 だが、実際に戦いを行ったことは一度も無い。



 能力、レーヴ・ファンタズマ。



 カフィーアを視認した者は無自覚のまま幻を見る。そして意のままに操られる逃れる術は無い。


 一人を除いては。


 そう。その一人がディック・シュタルバードである。それからカフィーアは悩まされていた。まるで起きながら見る夢の様に、ただの天使であるディックが気になって仕方ないのだ。全ての相手を格下として認識していたカフィーアにとって初めて対等でいられる存在を嬉しく思っていた。そして、それが恋心ということには気付かないでいた。


「はぁ…貴方は今何をしているのかしら?」


 早く合流したい。


 溜め息を一つ溢すと、能力の支配下にある天使と悪魔を一ヶ所に集めた。その数、約4千。戦わずして無力化したのだった。


 ついでに邪魔な虫も消しましょうか…。

 

 余裕のあるカフィーアは別のことを考えた。ここでの虫とはリース達のことを表している。能力が通じることと、カフィーアとディックの仲に少なからず悪影響があると思っていた。もちろん、この中にはバーキンスも入っている。誰であろうと邪魔であると決め付けていた。


 単純にディック以外が嫌いとも言える。


 だが、それでもカフィーアがリース達に能力を使わないのには理由があった。嫌われたくないのもそうだが一番には利用できるからであった。そして、ゆくゆくは二人だけの国を作り、それを全て支配し自由に生きる。気に食わない者は能力で処分し、二人だけに必要な人材だけが存在できる世界を最終的には築き上げることを目標としていた。


 端から見れば狂っているように思えるが彼女は本気だった。カフィーアにとっては唯一の存在なのだから一切の加減は無い。


 敵は消す。味方も邪魔になるなら消す。


 横暴な極論である。だが、それを実現する力があった。


「はぁ…。皆さんも面倒なことをしますね。一目で楽になるというのに」


 カフィーアを見なければ能力は発動しない。天使は魔力を、悪魔は魂を感知できる。それに優れていれば目を瞑っていても戦うことができる。気付いた数人がカフィーアを囲み、今にも襲いかかろうとしていた。それをさせまいと素早く能力の支配下にある者を盾に、身を隠した。居場所が特定される前に、カフィーアは次の指示を出した。囲まれているのは敵である貴方達だということを思い知らせた。


 十数分後、各々の能力で応戦するも数の暴力に勝てはしない。


 これこそ戦いにして戦いに非ず。


◇◇◇◇◇


 各自戦闘を終え、ディックの元へ集まった。


「サンキュー、リース」

「死なれたら困るだけだ」


 リースはジョインの危険を察知し戦闘を止めた。助けに行くと相討ちの様に見えたがジョインは生きていた。そこで、肩を貸し仲間と合流することにした。ある程度数を減らし撤退させたが油断はできない。

 そう考える一方で、カフィーアはスキップしながらディックの元へ向かっていた。途中で遠くにいるリースとジョインに気付いたが見ていないことにしてさっさとその場を後にした。

 

 ディックは気絶させたロディを担ぎながら適当に歩いていた。皆が集まるまでその場で待機とレッズに言われていたがすることが無いとどうも落ち着かなかった。


「お、来た来た!おーい…!」


「おい。オレらに気付いてよな?」

「いいえ。私は迅速に役目を済ませ、ここに来ました。貴方達のことは一目も見ていません」

「へぇ、そうかよ」


 険悪な空気を出しながら三人が合流した。


「ジョイン、どうしてこうなった?」

「さぁ?俺ちゃんには分からない」

「これは長くなりそうだなぁ」

「いつものことじゃん。あんたも可哀想だな」


 ジョインは気を失ったロディの肩を叩いた。それぞれが避難、迎撃と連動した働きを見せた。個人の動きがチームの結果に繋がる。それが良くも悪くもディック達のチームの特徴だった。


「途中で暴れられたら面倒だ。カフィーアのこと見せてくか」

「嫌ですわ」


 カフィーアはリースの提案をさらりと否定した。


「カフィーア、頼むぜ」

「かしこまりました」

「おい」


 カフィーアはディックの頼みを快く受け入れた。


 敵の頭を押さえられたことで目的は果たした。ディック達は素早くその場を後にし、レッズの元へ向かった。


 その道中でロディが目を覚ました。だが、誰も気付かなかった。レッズの元へ向かうにつれ、操れる血液の存在を察知した。気分は悪いがそれだけは分かった。


「ご苦労だった。で、そいつは?」


 レッズが全員を出迎えた。


「こいつは多分敵の大将だ。能力は血液を…」


 そこまで言った時全員が気付いた。怪我を負い、出血しているバーキンスの存在を。


 ロディが能力を発動しバーキンスを殺しに掛かった。


 それよりも速く。


 ディックの拳が。リースの残像が。ジョインの雷撃が。カフィーアの幻覚が。ロディを襲った。


 間一髪でバーキンスは助かった。皆が胸を撫で下ろしているなか、バーキンスだけは別のものを感じた。それぞれの異なる格好良さに気付いてしまった。そして、憧れてしまった。

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