能力、時限雷電
ディックとリースと同様に、ジョインはゼクネスと対峙していた。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…」
「俺の能力は体を炎に変える。お前の戦い方は見ていた。雷を操る能力だ。それでも続けるか?」
どーも。俺ちゃんはジョイン。能力で悪者をババッと倒す正義のヒーロー。と言いたいけど、ヒーローはディック・シュタルバードことディっちゃんだ。ディっちゃんは馬鹿だけど、それがいい。リースも、カフィーアも、その他の仲間も何か分かんないけどディっちゃんのよく分かんないところを信じてる。何て言うか、ディっちゃんも子供みたいなんだ。やることとか言うことが子供みたいでめちゃくちゃなんだけどさ。いっつも前向きなんだよ。みんな仲良く笑い合えるようにしたいって夢があるんだ。もう馬鹿すぎって思っちゃうんだけどさ、あいつは本気なんだ。でもさ、あんまりにも本気で全力だから。
「手ぇ抜きたくねぇんだよなぁ…!」
何で戦闘中にこんなことを考えてるかって?答えは簡単。
能力の相性が悪すぎて思考停止してた。
「さて、どうすっかなぁ。これは頭使わねぇと」
ジョインは考えるのが苦手であった。そのため独り言で色々と確認する癖があった。
「いやぁ、頑張れば何とかなるけどさ。疲れるし、失敗するし」
「部下の仇は取らせてもらう」
「いや、死んでないから。多分数時間後に目覚めるから」
能力、ラフイゴの炎拳。
燃え盛るゼクネスの拳が空振った。
「あぶねっ!!ちょっ、タンマ!」
「誰が待つか」
ジョインは背中を見せ、全力で駆け出した。格好つけてみたが、相性が悪い奴と戦うのは割に合わない。
「誰か助けてぇ!」
先程まで部下を軽く扱っていたとは思えないな。俺の見間違えか?
「逃げるのか!」
「ったり前だ!勝てないなら戦わない、これ大事!」
「身勝手な!」
ゼクネスは空を飛び、ジョインとの距離を詰め攻撃を仕掛けた。
「だから!あぶ、ねっ!躱すのも!楽じゃな、いんだよ!」
弱気な発言と態度だが、その回避能力は目を見張るものがあった。ゼクネスの攻撃は全て空回り、ジョインはひたすら走り続けた。
「こっちから攻撃できないからって調子に乗りやがって…!」
ジョインはゼクネスとの距離を計りながら崩れた民家の残骸に身を隠した。
「上から見たらすぐバレるよなぁ…。でも、これならどうだ!」
能力、時限雷電!
ジョインが能力を発動すると反対方向で放電が起こった。音と光に反応したゼクネスは思わずそちらの方を見てしまい、ジョインの姿を見失った。だが、冷静に次の行動に移った。
「ふぅ。これで少しは…」
「焼き払えば問題ない」
「げっ!」
少しは考える時間をくれよ!逃げも隠れもできないなら…!
ジョインは半ばやけくそで足元に落ちている石や木片を投げ付けた。しかし、ゼクネスは焼ける拳でそれらを振り払った。二度、三度繰り返しゼクネスが呆れたとき、突然目の前に迫る石が弾けた。
「ぐあっ!」
「わぁっはっはっ!!石ころに雷を仕込んどいたんだよーだ!バーカ!」
「…あの野郎……っ!」
再びジョインが走り出し、それをゼクネスが追った。埒があかず苛立ったゼクネスは自身の熱を高めた。すると、空気が高温になりゼクネスの周囲の有機物が触れずに燃え上がった。
「燃えて無くなれ…!」
逃げるジョインを巻き込み、広範囲に渡って炎が包んだ。それを防ぐ術がないジョインは走ることを止め、炎を掻き分けながら高く羽ばたいた。
「あちち!…あ……っ!」
「これで終わりだ」
狙いを定めていたゼクネスはジョインが現れると同時に攻撃を叩き込んだ。炎を纏った拳はジョインの防御を軽々と貫いた。肉が焼け骨まで伝わる熱に意識を奪われた。そして大きな隙が生まれ、渾身の横薙ぎの蹴りを食らい宙を舞った。
急所には当たらなかったが重傷には間違いない。だが、少しでも邪魔になる可能性があるのなら確実に息の根を止めるべきだ。
ゼクネスは吹き飛ばされた後をすぐに追った。そこには熱傷と打撃の痛みで踞るジョインがいた。立ち上がり反撃する余力は残ってはいなかった。
「…ってぇ……いてぇよこの野郎…」
「腹は立ったが、お前は強かった。だからこそ、手は抜かない」
「…そりゃどうも……でもさ…」
触れたよな?
こいつ!まだ何か隠している!?それよりも速く…!!
満身創痍で何もできないことは明らかであった。だが、ゼクネスはジョインの瞳に臆した。とどめの一撃を繰り出す前に一音。
バチッ!
ゼクネスの体に強烈な電撃が走った。
「ぐ、おぉ……っ!」
「…へ、へへっ……割に合わねぇけどな……」
「…くそ……!」
名付けるなら遅効性の雷。ジョイン・フルライトの能力は“体内で作った電撃を触れた相手に移し、それを任意に放電させることができる”というものであった。威力は高いが触れなければ発動しない。そのため、本人はこの能力を嫌っている。触れるということは相手に触れられる、すなわち攻撃されるリスクも高まるということに他ならないからだ。
「…でもまぁ、ちょっとはカッコ良かったかな?」
ジョインは震える足で立ち上がり、まだまだやれると自分に言い聞かせた。




