目覚めの時
一戦を交えたディック達は新たな仲間と共にレッズの元へ戻って来た。衣服の乱れはあるが、全員が無傷であった。
バーキンスは複数の天使と悪魔に囲まれ、何も言えなくなった。
「ほんじゃ、今日もお疲れさん!乾杯!」
ディックがそう言うと各々が飲み食いを始めた。まるで人間と同じ様に振る舞う天使と悪魔の姿に、バーキンスはもやもやとした気持ちが芽生えた。
こいつらは俺のいた場所を壊した奴等なのに…!!
「お、こいつが人間の子供か」
「あらあら。可愛らしいのね」
「!!」
「おーい。あんまいじめんなよ」
バーキンスに興味を持って近付いた男の天使はジョイン、女の悪魔はカフィーアと名乗った。
「ディック。今日は確かに勝った。大半の人間は殺られたが、オレらも多くの敵をぶっ飛ばして追い返した。もちろん、殺しもした」
「なぁ、連戦続きで疲れてんだ。言いたいことがあるならいつもみたいに隠さず言えよ」
そう言うとリースはふっと笑った。
「そう言うと思ったぜ。浮かれんのは気にしねぇが、今回も親玉を逃してんのには気付いてたんだろ?こいつを殺らなきゃずっと続くぞ」
「分かってる。だからこうやって散ってた仲間を集めて、人間を助ける天使と悪魔の集団って感じで派手に振る舞ってんだ。そのうち鬱陶しくなって人間を襲うフリをして、オレらを全力で潰しにくるだろ」
「お前は…考えてないようでよく考えてるな」
「全部レッズから教えてもらったことだ。オレも詳しくはよく分からん。ほとんどあいつの言われた通りやってるだけだし」
「そんなことはどうでもいい。オレが聞きてぇのは、親玉を躊躇いなく殺せるかどうか。同情なんかすんなよ」
「分かってるって。オレはお前らを裏切るようなことはしねぇよ」
馬鹿にすんな。
ディックもふっと笑うと、立ち上がってジョインとカフィーアの元を歩み寄った。
「振り回されるのが私達の役目だろ」
「言えてる」
レッズもリースも分かっていた。ディックという大馬鹿を信じている自分達も馬鹿なのだと。
レッズは雑に調理した食材をバーキンスの前に置いた。
「食え」
「いらない」
「それでも構わない。お前が死のうと私には何の関係もない。だが、これから私はお前を鍛える」
「…何のために?」
「何もないさ。お前は思わないのか?何故、今、こんな目に合ってるのか。子供だから、なんて甘い考えをしているんじゃないだろう?お前が弱いからだ。幼くとも生き残る者は多くいる。強くなければ生き残れない。単純なことだ」
「だから何が言いたいんだよ!」
「ディックの言うようにお前には教育を施す。その後はお前の好きにしろ。今は何を言おうが構わないが、お前が知識を持ってから、本気でものが言えるようになってから文句を聞く。それまでは黙ってろ」
「んな訳でよろしくなバーキンス。言っとくがオレもうるせぇガキは嫌いだ。黙って、オレらの力を盗め。そうすれば勝手に強くなるぜ」
「盗む…」
「まぁ、期待はしてねぇが」
「私もそうだ。第一に必要最低限の生き残る程度の能力が身に付けばそれでいいと思ってる」
この時、二人は侮っていた。子供の吸収力とバーキンスの意地を。
家族を失い、居場所を失ったバーキンスには何も無かった。こいつらのことは好きじゃないけど、なんとなく嫌な雰囲気を感じなかった、だからこそ、今だけは与えられた目標に向かって生きてみようと考えた。
◇◇◇◇◇
「あぁぁぁぁ!!何でっ!邪魔すんのか、なぁぁぁ!?」
「ボス。先日の…」
「るっせぇよぉ!!」
ディック達が倒すべき相手、ロディ・ヘルツバックは発狂していた。
「あのさぁ…ロディ様は殺したくて殺したくてしょうがないのにさぁぁ!!何なんだよあいつら!!数は少ねぇし、チョロチョロうぜぇんだよ!!くそっ!くそ、くそっ!!」
「ならば我々が…」
「だぁぁかぉぁらぁぁ!!ロディ様が殺したいって言ってんだろぉ!!お前らは黙ってろ!」
「仲間に八つ当たりするなよ。お前ら、下がってろ」
「…ゼクネス。お前も死にてぇのかぁぁ?」
「死にたい馬鹿がいるか。お前の気にしている奴等が何者か分かったから伝えに来たんだ」
「へぇぇ」
「次、同じように人間を襲えば必ず奴等はやって来る。完全には把握できてないが、約六人で構成されたかなりの手練れだ」
「たった六人に掻き乱されてるって言うんじゃないよなぁ?」
「その通りだ」
「っくしょうが。…そういえばぁ、次って言ったよなぁ?」
「あぁ」
「なら、次はロディ様が一番最初に、派手に血の雨を降らせてやる。くっくっくっ…」




