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*4*

 友達に関しては、こんな失敗談もあります。

 私は争いごとや、人との優劣をつけることが苦手で、嫌いでした。

 カッとするところがある反面、感情の摩擦の「ひりひり」にひどく弱かったのです。

 他を押し退けて一等賞をとるより、独りぽつねんと絵を描いていたほうがいい。

 そんな子供でした。

 今でも、その名残はあります。


 ある冬、小学校で持久走大会がありました。

 高学年の頃だったと思います。

 私は前回お話した子とは別の、親友と呼んで差支えない子と並走していました。

 仲良く、そのまま走っていくつもりでしたが、徐々にその子が遅れ始めました。

 だいぶ距離が開いた時、私は決心して、わざとペースダウンしました。

 みるみるその子との距離が縮まり、私はまた一緒に走れると安心しました。


 けれど、その子は、怒ったような顔で私を睨むと、ぐっと脚に力を籠め、どんどん先に走って行ってしまいました。

 私はショックを受けました。

 よかれと思ってしたことが友達を怒らせ、一人で走って行かせることになってしまったのです。


 しかし心のどこかで気づいてもいました。

 自分が、友達のプライドを傷つけてしまったことに。

 相手の心に悲しみと怒りを呼んだ軽率さに。


 その子は競技を純粋に競技として捉えており、仲良く走り続けることなど望んでいなかったのです。

 今であれば当時よりはっきりと、自分や相手の心の動きが解ります。

 子供であってもプライドはあるのです。

 私は、自分自身がプライドの高いほうであるにも関わらず、友達のプライドを蔑ろにしてしまいました。

 その子はからっとした性格なので、幸い、そのあとも付き合いは続きました。


 私は今でも相手の感情や状況を捉え損ね、ちぐはぐな言動をやらかしてしまうことがありますが、それは子供の時から続いていることなのです。

 自分が発達障害であると知ってから、以前よりは慎重になりましたが、時々、まだうっかりやらかしてしまうことがあります。


 毎回毎回、懇切丁寧なフォローもできません。

 ですからなるべく、自分がうっかりなぶん、人にも「ほんわか」することで調整しよう、と心掛けています。


 相手にだけ我慢を強いるのではないバランス法で、人とのコミュニケーションを保持しよう、と努力する日々です。


 発達障害でなくても、人には何がしか欠点、短所があります。

 そのことで人間関係に悩みもします。

 相手に何を期待できるかも大事ですが、相手に自分が何をできるか、考えることも大事だと思います。

 状況や場合により、何もできず離れるしかないこともあります。

 そこの見極めは年を経るごとに学んでいけるかと思います。

 それは少し、「悲しい学び」です。


 次回からもまだ、子供時代の話が続きます。



 ここでお心に留めていただきたいことがあります。

 私の語りは特殊な訓練を受けたものでも、それに特化したものでもない素人のものです。

 そして、あくまで私の場合に限っての狭い話です。

 私は「カモフラージュ型」と分類されるくらい、発達障害とそうでない状態との間のグレーゾーンに立つ者です。

 それならそれであるからこそ、お伝えできることがあるかと思い、こうして筆を執っている次第です。


 また、書くきっかけの一端となった出来事があります。


 以前、偶然にツイッターで、自分はアスペルガーである、と呟く人を見ました。

 私も少し知っている、まだ若い青年です。

 活力に溢れている筈の時期の。

 それから自暴自棄な呟きが続きました。

 病院に入れられるかもしれない、と。

 もっと一見しただけでわかるような病気なら良かったのに、と。

 私は心の中で呻きました。

 自分もよく知る感情だったからです。

 恐らく、多くの人が知る感情でもあるでしょう。


 何か、書くことで変えられはしないだろうか。

 その思いが今も私を動かしています。






挿絵(By みてみん)






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