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私は、早い段階から息苦しさに絶望していました。
世間に自分の居場所はないと思い、事実そうでした。心許せる人のいない孤独は、例えようもなく辛いものでした。
そして、自分は、自分の世界を構築する分野の仕事でしか恐らく生きていけまいと確信し、けれどその難しさに思いを馳せてやはり絶望していました。
昔から本が好きでしたが、自分が書き手になるとは思いもしませんでした。
作家という言葉はとても恐れ多く、自分などが夢見るにはおこがましいと考えていたのです。
ですが、一作だけ、一生の内に書きたい物語がありました。それは私の胸の奥深く、密かに息衝き、とうとう私はそれを書き始めました。二十歳過ぎてのことです。
出来上がった小説は長編で、今読み返すとはなはだ未熟な文章の連なりです。そして怖い物知らずなことに、私はそれを小説投稿サイトに投稿したのです。
ずっと書きたかった物語を出来はともかくとして形にできて、それで満足するはずでした。
しかし私はもう一作、もう一作と書き続けていったのです。
書く喜び、自分の世界を構築する心地よさにとりつかれてしまいました。
長い間、サイトの中で一人、黙々と創作を続けました。
やがて少しずつ読んでくれる人、繋がってくれる人が増え、私は仲間と言える人たちの存在のありがたさを知りました。
暗く、長い間閉ざされていた冬の時代。
やがて春が来るなど思いもしなかった。
今、作家としての一歩を踏み出していることがまだ信じられないような気持です。
苦労もありますが、自分の世界に浮遊する喜びを噛みしめています。
昔の私に教えてやりたい。
春は来るよ。
頑張って、と。