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感情が遅れてついてくる。
これもアスペルガーの特性の一つです。
「今」、「この時」自分が何を感じているのか、その把握が下手なのです。
それが喜びであればまだ良いでしょう。
嬉しかった感情を、噛み締めて、それをもたらしてくれた人に少し遅れてありがとうと言えば済みます。
けれど怒り、悲しみ、苦痛であれば。
負の感情には往々にして相手が伴います。
私はあの時、あんな風に言われて辛かった。悲しかった。負の感情を一人持て余し、困惑するのです。
例えば相手にそれを伝えたとしましょう。
相手はきっと、きょとんとします。
今になって、どうしてそんなことを言うんだろう。
その時になぜ、言わなかったの?
時には感情の遅れを逆に呆れられ、責められます。
今更、と思われるのです。
けれどやはり、解ってもらいましょう。
今、こんなことを言うのもなんだけど。
そんな風にちょっと前置きして、タイミングを計って。
打ち明けてみたら、もやもやがすう、と、ミントのように清々しく溶けるかもしれません。
私はこんなことが今まで多くありました。
まず、人の心を思い遣る人が相手の場合、真摯に謝られます。これは、嬉しいことです。こちらも、遅くなってから言ってごめんね、と言えます。
そうでない、つまり相手の心を重んじない人が相手の場合。
あれが辛かったのだ、と言うと、「何で今更、それ言うの?」と、冷淡に返されたりします。
これはただでさえ開いた傷口に塩を塗られる行為です。
ですので、相手に心情を吐露する場合、この人はそれを受容してくれる人かどうか、の見極めが肝要となります。
無理そうだ、と思った時は、難しいかもしれませんが、水に流すように諦めてください。
相手には貴方と共鳴する心がないのです。
そんな場合もあります。
悲しいことですが、多いパターンです。
遅れた感情を大切にしてくれる人を、私たちも大切にしましょう。
彼らは貴方や私を、私たちの心を尊重してくれる人です。
そんな人たちに感謝しながら、自分の思い、感情を愛おしんでみてください。