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アスペルガーの特質に、言葉を額面通りに受け止める、というものがあります。
私にもこの特質があります。
欧米の人が日本人の「またお会いしましょうね」という言葉をそのまま受け止めるのと似た感覚です。
褒められればその通りに受け止めて舞い上がり、一度言った言葉は必ず守らなければならないと思い詰める性分です。
当然、相手にも同様のことを求めてしまいますが、相手にも事情があるのだということを考慮しなければなりません。
まだ子供の頃、親戚宅に泊まった晩、その家の犬の散歩を翌早朝にしよう、と叔父に言われて、私はそれを楽しみに眠りました。
翌日、早起きして叔父を起こそうとした私を母が止めました。
その時は、約束したのにどうしてそれを実行しようとするのを妨害されなければならないのか、と不満でした。
今になれば、母が止めた理由も解る気がするのです。
口約束はしたけれど、まだ眠っている叔父を、だからと言って起こすのは非常識だと母は考えたのでしょう。
私は約束を絶対のもののように考えていました。
子供の立場だからと言って甘えて良い領分とそうでない領分がある。
そのことが解らなかったのです。
「約束」
これは自分がそう受け取ったもののことですが、必ず守らなければならない、と思い込んでしまいます。相手は軽い気持ちで言っただけのことかもしれないのに、双方の言葉の比重が違うのです。
以前、ドラマで知的障害のある役を演じていた主役が「約束は、守らなければいけません」という台詞を口癖にしていました。
「約束」は、発達障害の人にも、同じように重いものとなってしまうのです。
特質というのは中々に直すのが困難で、今でも自分の言葉は必ず貫けなければならないと考えたり、相手にもそれを求めるところがあります。
自分や相手に言質を盾に何事かを強いる。
これは良くない癖です。
皆、それぞれの事情を抱えて生活しているのですから。
そのことを忘れずに、もっと融通の利く大らかさを持ちたいと思っています。
自分の為にも、人の為にも。
また、注意や非難を受けて、必要以上に落ち込む癖も直したいと考えています。相手は私をいたぶりたいのではなく、恐らくは思い遣りの気持ちから言ってくれているのですから。