表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/27

漂着

 長い年月を経て海辺に辿り着く硝子片のように。

 人の思いが届く瞬間があります。


 就職が上手くいかず、発達障害の診断を受け、成す術なく私は長らく離れていた実家へと戻りました。両親は私の障害を当初、理解出来ませんでした。

 やっとアスペルガーの認知が広まり出した頃でした。

 家に居場所がなく、私はひどく辛い思いをしました。

 それから数年を経て、やっと両親もアスペルガーの何たるかを以前よりは理解するようになり、私への態度も軟化しました。


 私が、ある、どうしようもなく苦しい思いを抱えていた時期。

 精神的に弱っていた私は、父に謝りました。

「アスペルガーで生まれてきてごめん」

 泣きながらそう言いました。普段であれば絶対に言わないことです。

 そうしたら父はこう返したのです。

「それなら儂も謝らんといかん。儂もアスペルガーやから」

 診断された訳ではありませんでしたが、父は自分を発達障害があると認識しているようでした。

 私の謝罪は、他のアスペルガーの方たちに対して、失礼なものだったと今では思います。言い訳ですがそうした分別がつかなくなるくらい、私はぼろぼろだったのです。


 ただ、私の心に、父の言葉は慈雨のように沁みました。


 つい先日、母に、中学生時代のことを話した時。

「気づいてあげられなくてごめんね」

 そう言われもしました。


 時間は時に苛酷で残酷です。

 容赦なく人を苦しめもします。

 しかし稀に、温もりある漂着物を届けてくれることがあります。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ