begins 2-01.未来の関係
大富豪の正体は、泣く子も黙る、人体実験を行う恐怖のマッドサイエンティスト。
そんな話を聞いたって、食指は動かないけれど……いや少しは動くだろうけれど、自分から危険地帯に飛び込んでまで確かめたいものかと言われると、実際そんなことはない。
安全地帯で眺めるだけがいい。
危険が危ない以上に何重にもリスクがある行動はできない。地雷原を走り抜けるなんて不可能だ。
屁理屈をこねるのなら、威力の高い地雷を踏み抜けば、地雷原を抜けるまで吹き飛ばされる、なんてこともほんのわずかにあるだろうけど。
ただ、それは殺される前に真実を教えてもらっただけの、地味な登場人物と同じだ。僕の理想とは違う。
どうせ地味な登場人物なら、安全地帯にいるキャラクターがいい。
そんな風に、心中でニヒルな笑みを浮かべていた僕だったけど、そんな中ニ病の構えをしている場合ではなくなった。
どうしても気になった。
初恋の女子と富豪ファミリーの名前が被ったことに。
更に彼女は最近戻ってきた、と証言があった。これも富豪ファミリーが、最近引っ越して来たタイミングと言われる一致する。
明確な時期は分からない。
偶然の一致の可能性が高い。
そもそも大きな組織と中二女子を結び付けること自体、馬鹿らしいと一蹴されてもおかしくない妄想だ。
そこに更に、現代の道徳や倫理感にそぐわない、人体実験なんてワードも混ざるのだから、もう中二男子の黒歴史一直線の妄想に他ならない。
事実、僕は中学二年生の男子なので、もうそういう風に片付けてもよかったかもしれない。
危険だと分かっているはずなのに、子供である自分がやるべきことではないのに、と頭では分かっている。
何度も反芻した。
それでも僕の理性では、僕の意志を止めることができなかった。
まさに若気の至りで、僕はゆららちゃんと藍河家の謎を探ることに決めたのだった。
不安や恐怖もあった、でもそれ以上に知りたいという好奇心が止まらなかったのだ。
これからもあの子と関係を続けていきたいからこそ、知っておかないといけない。




