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begins 00.始まり



「ねえ、もしかして千夜せんやくん?」


 図書館で本を読んでいると、後ろから僕を呼ぶ声がした。

 椅子から立ち上がり振り向くと、そこには見たことのない美少女がいた。中学生で人生経験が決して豊富とは言えない僕は、あたふたしかけたが、なんとか心の平静を保つ。


「はい、僕は千夜です……けど、君は?」


 内心どぎまぎし、表面上は冷静に装いつつ僕は問う。すると覚えられていなかったことに、少しショックを受けたようで、あからさまに表情が暗くなった。

 しかし、がっくりとした顔にはすぐに明るさが戻った。


「私を覚えてないの? 私だよ、藍河瑠璃。小学生の時、よく一緒にこの図書館で話したよね」


 そう言われて僕は思い出した。

 昔好きだった女の子を。

 よく一緒に世界の訳本を読んで、記されている情報に二人で胸を躍らせたものだ。擬似的に世界旅行をした感じだったなぁ。


「覚えてる、覚えてるよ、今思い出した」


 何もかも思い出した。


「瑠璃ちゃん、すごい綺麗になったね。全然わかんなかったよ」

「え、本当? ありがとう」


 びっくりするくらいに大人になっていた。本当に僕と同い年なのか迷ったくらいだ。

 ちなみに僕は中学二年生で、過去に出会った際、瑠璃ちゃんが年齢詐称していなければ、彼女も同じはずだ。

 まあ一般的に女子は男子よりも、成長期が早いと言われているので、思ったより大人っぽくなっていても、不思議ではないのかもしれない。


「それにしてもどうしてここに? 遠くに引っ越したんじゃなかった?」

「色々あってね、戻ってきたんだよ」

「じゃあこの近所に住んでるの?」

「まあそんな感じ」


 瑠璃ちゃんの顔に、僅かに笑みが浮かんでいた。


「まあとりあえずここから出よ? 図書館でぺちゃくちゃ喋り続けるのは駄目だからね。もう私達はわがままで小さな子供じゃないし、マナーはしっかり守らないとね」


 まあその通りだ。

 小さい頃に図書館で、瑠璃ちゃんと喋りまくっていたのを思い出し、今更ながら小学生の自分を省みる。


「そうだね、外に出ようか」


 僕らは図書館を後にし、特に行くあてもなく歩き始めた。


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