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僕らの非日常ハーレム生徒会!!  作者: 猿野リョウ
非日常の終わりは日常の到来
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final.生徒会長に愛を捧げよう!

 長いと心の中で愚痴っているうちに授業も終わり、早くも放課後になった。

 クラスの友人達に「どこかに遊びに行こうぜ!」なんて言われたけど、今日ばかりは行けない。どうしても藍河先輩と話をしたかった。

 バッグに持ち帰るべき荷物を積み込み、僕は教室を足早に去った。


 校内帰宅ラッシュを乗り越え、渡り廊下を歩き、職員室の横を通り過ぎ、階段を登り、やがて生徒会室までたどり着いた。

 誰かいるかな?

 うちのクラスは割と早めに終わったし、理世さんは先生に呼ばれてたから、僕が一番乗りかもしれないな。


「失礼しまーす......」


 雰囲気も静かでどうせ誰もいなさそう、と思った僕は、いかにもやる気のない高校生みたいに生徒会室の扉を開けた。

 しかし中には人が居た。藍河先輩だ。

 先輩は僕を見て、


「ん、失礼してどうぞ〜」


 まるで僕の調子を真似てやる気なさそうな声で返事をした。こちらを見てニヤニヤしている。


「なんだいなんだい桜庭君、随分気の抜けた顔してるな。私への恋心を自覚してポケーッとしてるんじゃないのか?」

「いやそんなことないこともないこともないような気もします」


 いつもの冗談じみた絡みに僕の心が揺れた。なんだってあんなことがあった翌日に、正確に言えば0時を過ぎていたから今日なんだけど、しかし再び過去を鮮明に思い出した今の僕には、恋だとか愛だとかラブリーな話をするのは身体によくない。


「先輩こそ今日はなんだか大人しいですね」

「まあ......な、どぎまぎしたもんだよ。うちの繋兄さんと君が戦うなんて聞いてさ。それも無事に終わったみたいだけど、どうやって事後説明したもんかと悩んでたんだ」

「必要ありません、大体わかりますからなんで和解してたのに黙ってたかとか......それに凛子さんが言ってました。この話はやめよう、未来があるんだしって」


 気まずい雰囲気になるのは嫌なので、未来を見据えたいものだ。それに何もひどいことをしたわけじゃない。みんながみんな、最善を尽くしただけだ。


「だからいいじゃないですか。暗い話はやめて、明るい未来を見ましょうよ」

「いいこと言うな君は、確かにその通り。流石桜庭君」

「いやぁ、これ凛子さんの受け売りみたいなものですけどね」


 受け売りみたいっていうか受け売り。


「まあ人のセリフを我が物にしてドヤ顔キメる君も好きだぞ」

「そんな恥ずかしいところは好きにならなくていいんですけど......」

「恥ずかしいところも何もかも含めて自分だってことを忘れちゃいけないんだぞ。生きている以上、自分から自分を切り離すことはできないんだからな」


 

 しかし変に真面目な話はやめた方がいいかもしれない。もうそろそろ陽菜ちゃんも生徒会室に来るだろうし。


「......もう生徒会業務の準備をした方がいいかもしれませんよ」

「ああ、そうだな」

「まあ業務って言っても、そんなもんうちにはあまりないですよね」

「ないな」

「漫画やアニメみたいに権力があるわけでもないし」

「そういう意味では至って普通だが、魔法使える奴と超能力使える奴が居る生徒会はこの学校だけだろうな」


 挙句に宇宙人がやって来たりもするし、とんでもない学校だと思う。


「へんてこりんな生徒会ですけど、僕は楽しいです」

「私もそう思うよ、君と二人きりの生徒会も、今の生徒会も」


 それを聞いて僕は安心した。今の日常を好きだと言ってくれたのは素直に嬉しかった。

 この時、生徒会業務を始めなければいけない、というのはわかってはいたけど、僕は自分を止められなかった。



「藍河先輩は前に言いましたよね、返事はいつでも待ってるって」


 先輩の顔を見ることができない。前を向いているようで、前を見てない。だからあの人がどんな顔をしているか僕には分からなかった。

 このまま言葉を紡ぎ続けてしまうのが怖かった。今すぐ冗談に逃げてしまいたかった。

 藍河先輩はすごい。人に正直な気持ちを本当に伝える時ってこんなに怖いのに、あの人はいつも僕に好きだと伝えてくれた。今更になって体が重い。

 いきなりどんより曇る僕を見かねたのか、藍河先輩笑って答えた。


「返事はしてたじゃないか、『嫌い』って」


 僕の胸がじわじわと痛んだ。いつも僕はそう伝えてきた。それはどれだけ先輩の心を傷付けたんだろう。お互い冗談だって馴れ合いだってわかってるけど、言葉の重みは決して軽くない。きっと小さな傷を刻み続けたはずだ。


「それを返事とは認めないって言ってました......」

「どうしたんだ桜庭君、急に」


 問われて、僕は胸の内を明かした。


「僕、ずっと思ってたんです。僕は藍河先輩に釣り合わないって、あなたに胸を張れるものが何もないって。何もしてないのに、何もできていないのに、先輩と一緒に居るのはふさわしくない、分相応、身の程知らずだって思ってたんです」


 声も体も震えていた気がした。


「桜庭君、多分繋にも言われたと思うけど、ちゃんと私の口から君に言うよ。君は自分が誇れるものがないって思ってるみたいだが、そんなことはない。人と人を対等にする一番大事なものは、何を成し遂げたかとか、何をしているかじゃない。ただ目と目を合わせて話せばいいだけだ。君は君のままでいいんだよ」


 対等になりたい。必死に顔を動かし、目を向けようとするが、うまく動かないまま、僕は口を動かす。


「藍河先輩、今まで酷い返事でごめんなさい。僕......! 僕は......っ......」


 言いたいことが言えない、言葉に詰まって、今までの積み重ねが想いを阻む。


「大丈夫、言えるよ。今度は私が君を助けるから。だからこっちを向いて、私の顔を見て、もう一度やり直そう」


 ずっとずっと見てなかった。

 今日、お互いの目が初めて合った。


「あの時、私を助けてくれてありがとう」


 僕は顔を伏せた。

 思わず涙が溢れていたから。

 今までやって来たことが報われたような気がして。


「私の目を見て」


 もう一度、視線が重なった。


「君は相変わらず不器用で大馬鹿だな」


 すると勢いよく席を立って言った。

 かつて藍河先輩が、僕にくれた──そして僕が言えなかった想い。

 今度は僕も同じ言葉で君に届ける。



「でも私は、そんな君のことが大好きだぞ!」


「そうですか......僕も先輩のことが大好きですよ」

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