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64.おやすみなさい
「胸を張って誇れるものがあるじゃないか。結果が悲惨でも、過程が杜撰でも、誰もやろうとしなかったことを、君はしてくれた。自分を想ってくれる人がいると、妹に教えてくれたんだ。だからありがとう、君がいてくれて本当によかった、君が存在してくれてよかった」
存在意義に価値なんてない。
居るだけでよかった。
僕の存在する意味っていうのは、そういうことだったんだ。
何かを成し遂げるわけじゃなく、成し遂げないわけでもなく、ただ誰かが誰かを想うこと。
誰かを想うから人は生きるんだ。
誰かに想われてるから人は生きていける。
自分が誰かの心に居るから、どんな辛いことも乗り越えようと思えるんだ。
数時間後、僕は自宅に戻っていた。
明日からまた普通の日常が始まる。
「ありがとう」
暗い部屋、ベッドの上で僕は呟く。
今まで生きてきた自分への感謝。
そんな僕の心を支えてくれた、僕を想ってくれた人達への感謝。
僕は今日も誰かを想う。
それが僕がこの世界に居る意味だ。




