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50:ゲームセンター!

 二人の対戦が終わる前にさっさと退散しよう。

 映画並みのカーアクションを展開する、あの画面をもっと見ていたかったけど、あの対決が終わる前にこの場所から離れないと見つかってしまう。

 僕はゲームセンターを闊歩する。

 なんとまあ空いているゲーセンではあった。

 一応休日なんだけど……、ここまで人が居ないと一部の客に穴場認定されるだろうな。


 例えばあそこの音ゲーでボタンとペダルを高速で叩き、蹴る女性のように。

 て言うかなんなのあれ、ズダダダダダダダとかとんでもないスピードでボタンを叩きまくってるんだけど、音ゲーってあんなに忙しいものなの?

 お金の浪費と腱鞘炎という代償を超えてダイエットできそうな勢いだ。

 それにしても、音楽ゲームなんて和太鼓の達人の、難易度かんたんしかやったことないから分かんない。


「てか……あれって、あの綺麗な紫色の髪って、あの豊満なバストって、あの凹凸のはっきりした体って、あのジーンズ越しからでも分かる柔らかそうな太ももって、至って普通の服装なのにどこからどう見ても卑猥に見える人って……」


 そんなの一人しか居ないじゃないか!


「理世さん!」

「……ふ…………っ…………んしょ…………」

「…………」


 効率よく最低限の稼働率で、その時々の音符に合わせた体捌きの最適解を導かなければならない音ゲーなのだが。いや、ただの推測なんだけど。

 とにかく、全く理に敵わない荒々しく乱暴な動きで、筐体に入力信号を叩き込む理世さんは、特に疲れた様子もない息遣いだった。


「……にしてもだ、揺れとる揺れとる」


 一番気になるのは、身を上下左右に激しく揺らすことによって、連動してふるふると揺れるおっぱいだった。

 ゲームに熱中している彼女にこっそり近付き、後ろから鷲掴みにして、そのまま変態と罵られつつ平手打ちでぶっ飛ばされたりしたかったけど、その後のことを考えるとどうにも実行に踏み出せない。

 寿命が後一ヶ月なら迷いなく揉みに行っていたが、脱がすまでも行っていたが、いかんせん今の僕は輝かしい未来が待っているピュアな青少年なのだ。そんな無茶苦茶はやれない。


 しばらくするとプレイが終了したようで、特に続けようとはせずにこちらを振り向いた。

 目と目が合うー。


「や、こんにちは」

「あらあらさくらんじゃないの。ちょっと恥ずかしいところを見られちゃったわねぇ」

「本当ですよ。あんなに胸を揺らされたら、見てるこっちが恥ずかしくなってきますって」

「……は? 今なんて──」

「──何もないです。さっきそこに居たコスプレイヤーの胸部が非常に震えまくってて、気になって見ていただけなんです。理世さんのおっぱいをガン見してたとか言う、ふしだらな真似なんて決してやってませんから」

「ふしだらな思考はどうにも消えないらしいわぁ……」


 ふむ、そりゃ消えんわ。男だもの。


「ところで理世さん。こんなところで何をしているんですか?」

「見ての通り、リズムゲームをやっていたのよ」

「ゲームをやるなんて意外です」


 この人がポチポチボタンを押して、画面を見て一喜一憂する姿なんて想像つかないんだよね。


「前から気になっていたから、いい機会だしやっておこうと思って。ゲームなんて似合わないかしら?」

「SMゲームとかなかなかフィットしていると思いますけどね。ちょっとエッチなゲームのヒロインにも合ってます」

「今すぐ酷いお仕置きされてドMになっちゃいたい?」

「…………うーん、迷うなぁ……」


 割と素晴らしい提案なだけに天秤がぐらつく。


「迷わないで否定してくれないかしら。なんだかとても悲しい気持ちになるわ」

「悲しいって、僕は哀れまれるようなことは何もしてませんよ!」

「こんな変な友人が居ることが悲しいのよ……」


 僕ってそんなに変な奴なのだろうか。

 けっこう良識のある一般的な常識人だと思うけどなぁ。


「そう言えば、さっき藍河先輩と陽菜ちゃんが居ましたよ」

「ああ、一緒に来たのよ。生徒会の親交を深めようということで」


 あ、あのう……僕それに呼ばれてないんですけど。


「えっと僕は?」

「……え?」

「イッツコールミー! 僕誘われてないんですよぉおおおお!」


 顔を明後日の方向に向けつつ、チラチラと視線を理世さんに送る。

 理由を求めている合図なのだ。


「メールを送ったけど、あなたは用事があるから行けないって自分で言ってたわよぉ?」

「断じて送ってませんよ! そんなメールは!」


 なんなんだ!

 誰かが僕の携帯を勝手にいじったのか!? 怖いわ!


 もう、あれだ。あれに決まってる。

 僕を呼びたくないというのをバラすわけにはいかず、こうして行き当たりばったりな言い訳をしたんだな……。

 僕をあそびに誘ってくれない友人が居ることが悲しいです。


「何かの手違いがあったことは確かね。それについては謝罪させてもらうわ、ごめんなさい」

「僕はとてつもなく悲しい気持ちに包まれています」

「もう、ごめんなさいって言ってるでしょう? 後でなんでもやってあげるから、拗ねてないで皆と合流しましょう」

「やった! 今、なんでもしてくれるって! やったあああああああああああああ!!!」

「…………あなたって」

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