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5:揉んで揉んで揉んで揉んで〜

      ★★★



「そう言えば……藍河先輩が帰ったところで聞きたいことがあるんだけどいいかな?」


 制服のしわを気にして、スカートをいじる陽菜ちゃんに話を切り出す。


「? なぁに?」

「この前胸を揉ませてくれるなんたらって本当?」

「ぶはっ!」

「ちょっと、大丈夫?」

「けほっ……けほけほっ……だ、大丈夫」


 吹き出し、咳き込む陽菜ちゃんの背中を優しくさする。


「唐突な話の振りに驚きを禁じ得ませんでしたね」


 敬語になった……。


「え、えーと、やっぱりちーくんはしたい……の? 私の……触りたいの……?」

「うん」

「迷いなく速攻で言い切った!?」


 だって触りたいんだから、揉みたいんだから仕方がないことだと思う。

 若干の焦りを見せながら陽菜ちゃんは、


「わ、分かった。分かったよ、ちーくん。私一肌脱がせてもらうよ! 私の胸を、触って触って揉んで揉んでもみくちゃにして!」

「容赦はしないよ、手加減はなしだ。僕が満足するまでひたすら、ひたすら触って触って揉んで揉んでもみくちゃにする。それでいいんだね」

「うん……だって私は、ちーくんが好きだから。ちーくんのためならなんだってしてみせる……なんだってするんだから!」

「ありがとう。恩に着る」

「そんな照れ臭いよ……、後こんなことにいちいちお礼なんていらない……。私達二人の関係だもん、当然だよ!」

「陽菜ちゃん……」


 陽菜ちゃんが両手をバッ、と広げて受け入れの体勢を取る。

 緊張を感じさせながらも、安心感を与えるその笑顔に……僕は……いや、これ以上はいけない。これ以上は危ない。

 僕は陽菜ちゃんの顔は見なかった。

 見たら、きっとその理性を保てはしなかっただろうから。


「来て、ちーくん」

「行くよ、陽菜ちゃん」


 狼のように陽菜ちゃんの胸元へダイブ。

 ふにゅっ、と柔らかいそれを掴み──いや、揉んだ──いや、揉みしだいた。

 Dカップってけっこう大きいんだな……と、感慨に浸ったりしつつ……陽菜ちゃんの様子をうかがう。

 両手で顔を隠していて……けれど、隙間から僅かに見える顔は朱に染まっていて……プルプル震えていて……可愛かった。


「ぅぅぅぅ…………」


 ものすごく小さく唸る陽菜ちゃん。


「僕達の遊びはまだまだここからだ!」


 それから数十分ほど、陽菜ちゃんの胸を揉みまくった僕だった。

 襲ってしまわなかった──何故耐えることができたのか……それは恐らく揉むだけという約束を守るという意思が……本能からの意思が本物の狼になることを防いだのか──それとも単純に藍河先輩への罪悪感というかなんというか……、いつも僕のことを好きだといってくれる先輩への裏切りになると思ったから──だったりするのかもしれない。



      ★★★




「あっ」


 ベンチの上だった。公園のベンチで寝かされていたのだ。

 ……しかも。


「ついにお目覚めというわけか、桜庭君」


 藍河先輩の膝枕、どちらかというとむっちり太もも枕で寝ていたらしい。


「……頭やお腹が痛いです。鈍痛です。ハンマーで殴打されるのと同等の威力の(こぶし)を何度も受けたかのような……。僕って不良かなんかと喧嘩してたんでしたっけ? 思い出せません」

「そうだ、かっこよかったぞ。また見たいくらいだ」

「本当ですか……? 僕はもう嫌ですけど」


 喧嘩は好きじゃない。口喧嘩も物理的な喧嘩もどちらもだ。

 まあ本気の喧嘩じゃなければそこまで嫌がりはしないけど。


「さっきまで夢を見ていたみたいです」


 どうやら昨日の放課後の出来事を回想していたみたい。

 僕は起き上がり、ベンチから立つ。


「せっかくの膝枕なのに離脱が早いわ。……まあいい、ところでなんの夢を見たんだ?」


 藍河先輩もベンチから離れる。


「昨日の放課後の話ですよ。陽菜ちゃんのあれを揉んだとかの」

「は?」

「ち、ちょっと待って、落ち着いて藍河先輩! なんでボクシングの構え取ってるんですか!? 記憶にないけれど、なんかデジャヴってます、超デジャヴってますから! なんか頭とお腹に更なる痛みが追加されてきた! 記憶を取り戻してきてるのかな?!」

「桜庭君……きみにはもう一度意識改革をしてもらわなければいけないかもしれない」

「意識改革って絶対正しい意味で使ってないですよね!? 考え方や関心、取り組みの姿勢などを、従来のものから新しいものへ入れ替えること──みたいな意味では使ってないですよね!? 単純に意識がなくなる、気絶するみたいな感じですよね!?」

「さあ、夢の世界へいざなってあげよう」

「やめてええええええええええええ! くださーーーーい!!」


 僕の意識が飛ばされようとしているとき……彼女はやって来た。


「って、コラー! このアホ先輩! ちーくんに何をしようとしてるんだ!」

「陽菜ちゃん!」

「ちーくん大丈夫!? この先輩……人がちょっと目を離した隙に……」


 二人からすごいオーラみたいなのが見える。

 と、闘志が燃えたぎっているぞ!


「そうだな……これから生徒会で活動していく上でも大切な上下関係というものを教えてやるとしよう」

「私は権力には屈しない……。今ここで生徒会長を倒して、野望を打ち砕くわ!」

「来い……力の差を思い知らせてやるぞ!」

「おらああああああああああああああああああああ!」

「うりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」


 もはや淑女とは思えぬ獣のような叫びと、高速ラッシュを繰り出す双方。パンチの残像が見える……人間を超越してるだろ!


「隙あり!」


 ラッシュ、ガード、ラッシュ、ガードを二人が繰り返すうちに生まれてくる(わず)かな隙、それに気付いたのであろう、陽菜ちゃんが言う。彼女の右拳が藍河先輩の脇腹を(えぐ)り込もうと唸りをあげた。


「!」


 驚愕の表情を(にじ)ませる陽菜ちゃん。

 なんと、藍河先輩は陽菜ちゃんの防御の隙を突いた攻撃を防いだのだ。


「馬鹿め、わざと脇腹のガードを甘くしておいたのさ!」


 藍河先輩の罠。

 渾身の一撃を見事に流された陽菜ちゃんに一瞬の硬直。わざとではない本物の隙が生まれ、それをあの人が逃すはずもなく──二人とも無為無策に戦いを始めたわけではないだろうが、それでも今回は藍河先輩の方が陽菜ちゃんより一枚上手だったということは明白であった。


 先輩の無慈悲の攻撃──暴虐の限りを尽くさんと牙を剥くそれは、攻撃というより暴撃と言った方が似合う気がする。

 けれど、今の今まで殺気すらも感じさせてパンチを繰り出していたにも関わらず、そのオーラが消え、陽菜ちゃんの頬を打ち抜く寸前で……ミリ単位の寸前で、その拳がピタリと止まった。


「なんのつもり……お情けってわけ?」

「お情けもくそもあるか。私はお前のことが好きじゃあないが……それはお前の体を傷つける理由にはならん。そもそもそんなことをしたら桜庭君に嫌われてしまうからな」

「元々嫌われている気も」

「それは言うな」


 …………。


「とにかく今回は私の勝ちだ。というわけで、今日桜庭君は私の物だ」

「え? 何よそれ! そんなの聞いてない!」

「知らん。この私に戦いを挑み負けたのだ、それくらいの代償は当たり前だ」

「そんなの傲慢よ!」


 どうでもいいけど、僕の意思は無視だったりするんですかね。


「勝手に決めないでくださいよ。僕はもう少ししたら家に帰ってソーシャルゲームしなきゃいけないのに」

「桜庭君、今は黙っててくれると助かる」

「あ、はい」


 僕が悪い人みたいに、そしてすごく申し訳なさそうに制止を食らった。

 結局、物理的な喧嘩を終えても口喧嘩が続く二人、全くどうしてこうもぶつかり合うのか……それも仲がいいということかな? 喧嘩するほど仲がいいみたいな言葉もあるし……、それにしても出会って間もないのにここまで言い合える仲になっているのは正直びっくりだ。


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