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49:土曜日は忙しい!

 というわけで土曜日。

 前日の藍河先輩誘拐事件については、無事に丸く収まった。

 そもそも先輩は一切危害を加えられていないので、丸く収まったというか元から丸かったのだが。


 あれから僕の家に行くと、あの人の言う通り先輩はベッドで眠らされていて、毛布の中ですやすやと心地よさそうだった。


 それから学校に戻ってやるべきことをやるのも面倒だと思い、その日はもう学校に戻らないことを、生徒会メンバーに電話で告げた。

 その後、夢から覚めた藍河先輩を家から退去させるのに、かなりの時間を要したのは言うまでもない。



 金曜日。結局僕は一人で一人の時間をゆっくり過ごした。


 そして現在、僕は日課のように散歩するのだった。

 いや、全然日課じゃないんだけどね。多くて月に二回くらい。




「暇だからゲームセンターに行こう──」


 ふと脳裏に浮かぶ数々のゲームに連動して、僕の足はマッハで動いた。


「──と思って、やって来たら知り合いが仲睦まじくゲームをしている件」


 その知り合いとは我が高校が誇る全知全能の生徒会長、僕的には誇れないストーカー気質な藍河先輩。

 そして隣の席に座って一緒に湾岸ミッドモーニングをプレイしているのは、我が校の生徒会の紅一点であり生徒の憧れの的 (なのかもしれない)夕崎陽菜ちゃんだった。

 ぶっちゃけうちの生徒会は変な人が多くて、紅一点と称することができるような大和撫子が居ないので、比較的可愛らしい見た目の陽菜ちゃんをギリギリ紅一点として認めておくことにした。


「それにしてもどういうことなんだ? あの二人がこんなところで仲良く対戦ゲームをしているなんて……」


 様々な筐体からの爆音雑音が交差するこの施設では、他人の会話していることは視認できても、会話の内容を傍聴することはできない。

 だが、僕は気付かれないような極限の距離まで詰め、処理能力を全て聞くことだけに傾けることによって、二人の仲良しズッ友トークを耳に入れ込んだ。


「あっ、おい! ぶつかってくるんじゃない!」

「クラッシュ上等! あんたの順位をぶち落として一位になってやる!」

「壁際に押し込んでくるな! このアホ!」

「アハハハハハハ! 残念、これであなたの順位は変わらない。変化量永遠のゼロよ!」

「ぬぅ! お前絶対に倒す!」

「やってみなさいよ、そんな壁ずり車体でできるならね。アーハハハハハハハハハハ!」


 普通にぶつかり合ってた。


「仲良く対戦ゲーじゃなくて、ガチ対戦かー。ゲームでも喧嘩なんだね……」


 喧嘩腰なだけで、もしかするとこれが藍河先輩や陽菜ちゃんなりの友情なのかもしれないけど。


「いい加減にやめろおおおおお!」

「やめないわよ、私が勝つための方法なのよ」

「私を壁に押さえつけることによって、僅かに車体が前に出ているお前を抜けなくなっているのは事実だが、それによってコンピュータに抜かれまくっているのに気付け!」

「あ……」

「くそっ! 仕方がない!」

「じ、順位が大変!」

「聞け、夕崎」

「……何?」

「このままでは私達二人とも一位争いすらできずに最下位争いで終わってしまうだろう。それでも、今からでも一位争いをする方法はある」

「もしかして……協力しようって言いたいの?」

「まあ、そうなるな」

「協力して一位まで一気に駆け抜けようってことね。了解。ただし現在のトップを抜いたその瞬間から、私達は敵同士よ」

「分かってる」


 なんか外国の人気カーアクション映画『マイルドスピード』みたいな展開がゲームで行われてるんだけど……。

 そういえば、最近『マイルドスピード/グランドミッション』とかいう最新作が劇場公開開始したらしい。

 車が地面を掘りながらマントル近くで見せる激しいカーアクションが見所だと聞いた。







現実的な話で申し訳無いのですが

今年は大学受験で執筆時間が取れずに、凄まじく遅い投稿ペースになると思いますが、これからもよろしくお願いします。

勉強ペースに余裕が見えたら、投稿ペースも早くなったりするかもしれません。

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