46:カフェの中に!
指定された場所はまめかふぇと呼ばれる喫茶店。
洋風と和風の入り交じった和洋折衷案だ。
ぶっちゃけると、入り交じったというか入り雑じった感じで、折衷案どころか和と洋が大喧嘩している。互いに尊重しあい互いの良さを等しく輝かせる妥協点を探るのではなく、互いが自身の良さという武器で激突しあい飲み込みあい侵食しあい、五分五分の闘いを繰り広げることでバランスを保っている感じだ。
これがもし絵になるとするならば。
漫画に、アニメに、映画に、なるとするならば、恐らくは表現しきれないのでまず映像化計画がおじゃんになる。
喫茶店の内装のせいで大事な計画が破綻すれば、内争だって起きかねない。
ともかく、そんな喫茶店の扉に取り付けられた鈴をカランカラン鳴らさせながら、僕は藍河先輩誘拐犯との対面を果たそうとしているのであった。
まめかふぇに一足踏み入れた僕を迎えてくれたのは、マスターの白崎黒乃さんだった。
「やあやあ桜庭君、こんにちは。私の焼くパンケーキが食べたくなったのかい?」
「こんにちは白崎さん。夕方なのでどちらかというとこんばんはですかね。ちなみにパンケーキは注文しません」
「じゃあいつものカプチーノ?」
「今日お金を持ってきてないんですよね。だから何もいらないというか」
「何しに来たんだ君」
「友達と待ち合わせです、多分もう来ていると思うんですけど」
僕が辺りを見回そうとすると、白崎さんは「あー……」と唸ってからこう言った。
「もしかしてあの人?」
白崎さんが目線で示した所に居たのは、大学生くらいのちょっと大人びた感じの優男だった。
可も不可もない服装に、可か不可と言われれば可に一辺倒な顔。
僕の予想通りだ。
「あの人も友達と待ち合わせだって言ってたけど」
「そうそう、そうですよ。ありがとうございます」
僕はそう言って彼の座る席へと足を運び、そして向かいの席に腰かける。
コーヒーを啜る優男がカップを口許から離した。
「元気そうだね、桜庭くん」
「繋さんも元気そうで何よりです」
「フフ、確かに僕は毎日元気だけれども」
そうやって。
繋さんは。
藍河繋さんは。
藍河先輩の兄は。
嗤った。




