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僕らの非日常ハーレム生徒会!!  作者: 猿野リョウ
史上で地上で最も最高級ブランドと謳われた日常編
38/73

38:立証する

お、おそくなってすまないとおもっている…………

 僕は理性を保とうと脳から命令を発する暇もなく、自分を制御することができず、気付いたらいつの間にかプロレス技を仕掛けていた。割とハードなやつ。


「ももっももももももっ!! ももーなんなんだ、その技はぁぁぁもも!? 卍固めもも? 卍固めももか? 国会に卍固め、消費税に延髄斬りってか、ふははははははは──あっ、もももももももももももぉー!」

「登場したばっかりで特に印象もなく、お前が出てきてから更新が一時スローペースになって、見てる人から『誰だっけこいつ?』とか思われたくないからって、もももももももも言って無茶苦茶なキャラ付けしてんじゃねえ!!」

「やほおおおおおおいい!! 肩に脇腹がいい感じにキテるぞおおおおおおい!! ……あふぅん」

「気持ち良さそうに痛み感じるな! 気持ち悪っ!」

「あんっ!」


 こいつキモい!

 アレクサンゲリアンは片膝を地につけた状態で、歴戦の戦士のような雰囲気をガンガン発してかっこよく言った。


「な、なかなかやるじゃないか……。こんなに強烈な技を受けたのは三十年ぶりだよ」

「あんた今何歳? 働けよ、ニート」

「ぼくいまさんさいでちゅう」

「は?」

「…………」

「…………」

「ごめん、冗談──」

「──シャイニングウィザードォォォ!!!」

「冗談ですってばぁぁぁぁあああ!!」


 僕の膝が奴の顔を綺麗に打ち抜いた。

 その綺麗な顔をじゃがいもにしてやるぜ、って決め台詞言っておけばよかった。


「ところで、どうしてここに居るんだ? 一体何をしにここに来たんだ? て言うか顔が人間になってるのはなんで?」


 僕はうつ伏せに倒れたアレクサンゲリアンを見下ろす。

 彼は起き上がろうとはせず、顔を床にくっ付けたままだ。


「顔については言及するな、禿げそうなほどの苦痛と恐怖を乗り越えてようやく手にしたフェイスだ。あれを思い出したくはない」

「何があったのか本当に気になるんだけど」

「とにかくだ! どうしてここに居るのかその理由は一つ。さっきも言った通り今日からボクもこの学校の生徒だからさ!」

「え……まじで?」


 確かに制服は着てるけど……こいつ一体何を企んでいるんだ?


「ああ本当さ。まあそれは建前っちゃ建前なんだがな。……真の目的はサクラバくん、お前とあの女の監視だ」

「監視……」

「言ったろう? 証明し続けろと。それを見届けるためにわざわざこの学校にやって来たんだ」


 そうだった。僕はこいつと約束をした。契約を交わした。

 藍河先輩の隣の席を僕が埋めることによって、彼女は世界中に生きる人類と同じ人間なんだと主張し続けるということを条件に、猶予を貰った。

 一発逆転の駒を探す猶予を。


「実はそれも建前」

「?」


 だったら他にどんな目的があって……。


「人を知りたくなった」

「どういう意味だ」

「……ボクは言わずもがな李星人だ。ウイルスの感染からではなく、李星人と李星人の間に生まれ落ちた純正のね」


 アレクサンゲリアンは言う。


「けれどボクには致命的なバグがあった。それは理性があることだ。本来李星人には地球人のような理性などはなく、本能のまま繁殖の為だけに活動する。なのにボクには知性があり学習能力があり感情があり……ひたすら悩んだ。何故ボクにだけ心があるのか? そんなのわかりっこない。何かについて疑問を持てるのはボクだけだ。他の李星人は喋ることだってできやしない、ボクは独りぼっちだった」


 ゆっくり立ち上がった奴の表情が輝くような笑顔に変わる。


「でも見つけた、ボク以外に心を持つ生き物を」


 それが僕達。人間か。


「ボクは他者の心を知りたいだけだ。他者の心に触れたいだけだ。キミのような人を想う気持ちを近くで見てみたいだけだ。あわよくば誰かの心と繋がりたい。キミらの言葉で言うなら…………絆を」



 ボクも誰かと絆で結ばれてみたい──と彼は徐々に小さくなる声で告げた。

 まるで諦めているかのように、自分が誰かと絆を結べるはずがない。そんな可能性など微塵もないという切ない表情を浮かべていた。



 僕は。

 独りぼっちだった藍河先輩に手を差し伸べた。

 それは本気で助けてほしいと願っている表情だったから。


 僕が藍河先輩を助けたのは下心とかそんなものでは無くて。

 ただ辛そうだったからだ。


 僕は、その人が本気で悩んでいるのなら、本気で助けてほしいと思っているのなら、例え敵でも手を差し伸べるのかもしれない。


 だってそんなのは当たり前だ。

 困っている人を放っておけないと思うのは、困っている人を助けたいと願うのは、普通じゃないか。




「──おい、アレクサンゲリアン」

「なんだ?」


 僕は彼に向けて手を差し出す。


「だからなんだ?」

「握手だよ、握手」

「どういう意味なんだ?」

「僕が友達になってやるって言ってるんだ」

「え……」


 僕はバカだ。敵の世話を焼こうなんて。

 けどこんな辛そうな顔してると手助けせずには居られない。


「藍河先輩が普通だと証明するって言ったよね? ついでにもう一つ実証して見せるよ」


 あーあ、我ながら馬鹿なことをやるもんだ。


「お前だって誰かと心と心で通じ合える仲になれると、誰かと固い絆で結ばれることができると」





 僕が証明する。







 こんな日常も悪くない。

 誰かのために動くっていうのも……いいものだ。

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