36:新たな日常の始まり。
五月一日。木曜日。
今日の僕は朝から本気鬼ごっこする気にはなれず、玄関前で待ち伏せていた藍河先輩と、電柱からひょっこり顔を出してこちらを覗く陽菜ちゃんと一緒に学校に行くことにした。たまには一緒に行くというのも悪くはない。
「ねえ、私李星人の件で秘密機関魔法連邦から脱退させられそうなんだけど、どうしたらいいかな?」
朝っぱらからハードな話題はやめてくれ。
なんて言ったらいいか分からないから。
「もうやめてしまえばいい。無理に所属し続けることもないだろう」
と、陽菜ちゃんの相談に対して藍河先輩が真面目に答えた。
「でも魔法を使えるって言うのは私だけの専売特許というか、特徴というか、アイデンティティーというか。専売特許と言えばあと可愛さもね」
「こいつ何言ってんの?」
「あー、僻みとか妬みとかやめてほしいよー」
「いやいや僻みとか妬みとかないから、私の方が可愛いんだから。美しすぎて宇宙が霞むレベルだぞ」
「何それ意味分かんない。背伸びしているのがバレバレ!」
「じゃあどっちがより可愛くて綺麗なのか桜庭君に決めてもらおう」
「どうせ私が勝つもんねー。ちーくん判定をどうぞ」
「どっちもブス」
「「ヴエエエエエエエエエエエ!!!」」
藍河先輩と陽菜ちゃんは混乱した。
ピヨピヨピヨ。
二人はわけもわからず互いを攻撃した。
ポカスカポカスカ。
どっちもブスは言い過ぎた。両方とも可愛いとは思うけど、今は眠くて眠くてどうしても喋る気にならないから特にフォローを入れることはせず、僕は一寸も狂わないリズムテンポそのままに歩き続けた。
落ち込んでいるのか、肩も視線も歩行スピードもガックリ落としている二人は放って、そのまま一人学校に向かった。
その日の休み時間。
いつもならあの二人、僕のクラスに一度は来るはずなのに、今日は来なかった。
どんだけショック受けてんだ!
ジョークじゃん!
冗談なんだからそんな真に受けなくても!
そして放課後、僕は生徒会室の戸を意気揚々と開けるであった。




