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僕らの非日常ハーレム生徒会!!  作者: 猿野リョウ
非日常編『もももも』
31/73

31:アジトに潜入せよ

 凜子さんの手を借りて李星人のアジトに突入するというのは全くもって楽な作業だった。ながら作業で開錠できるセキュリティだったのだ。


 そりゃロックは異次元ランクの高難度だったらしいが、僕と理世さんが話し終わったのを見計らったように携帯端末にセキュリティ解除法の旨が記載されたメールが送られてきて、それはもう懇切丁寧に分かりやすく簡潔な文章で書かれていて、クラッキングなんて一度もやったことのないコンピューター初心者な僕でも容易くプログラムの改竄(かいざん)を実行できた。


 その結果、大量の種類の文字を打ち込めるキーボードが用意されていて、元々五十文字の3パターンのパスワードを入力しなければ開くことのなかった重厚な扉は、たった一文字のパスワードで開くようになった。



「なにもともあれこれで出入りが簡単になりましたね」

「とは言え、たった一文字のパスワードだと偶然ロックを解除してしまうという可能性があるのも否定できないわね」

「多分大丈夫ですよ。昼間のうちは学校にも人がいるから、そう簡単にここから出ようとする李星人も居ないでしょうし、万が一のことも凛子さんがどうにかしてくれますよ」

「そうね、あの裏方に徹することが大好きな女なら、人知れずサポートを行ってくれるはずよね」

「いつのまにか僕のスマホをハッカー仕様に作り替えていたくらいですからね、見えないところでのサポートはお手の物だと思います」


 スマホが改造されてたなんて今の今まで本当に気付かなかった。

 ハッキングするにはそれなりのプログラムを組み込んでおかなきゃいけないんだろうけど、こんな事態を予測していたとでも言うのだろうか?

 僕は今日、凛子さんには一度も触れられていないはずだから、変化を施されたのは先程の話ではないはずだが。


 もっと昔……?


 いや今はそんなことどうでもいい。

 凛子さんがどうやって僕のスマホを改造したのか考える暇があるなら、先に藍河先輩と陽菜ちゃんを救出する方法を考えろという話だ。


「さて、これからどうしましょうか?」


 理世さんに一言言った直後、僕のポケットがブルブルと震えだす。どうやら携帯がメールを着信したようだ。


「誰だろ」

「また凛子からじゃないの?」


 理世さんの言う通り案の定凛子さんからのメールで、タイトルは無し、『ホログラムマップを開いて』という本文が書かれてあった。ちなみに、割愛しているが本文にはとてつもなく芸術的な絵文字も添えられていた、どうでもいいことなんだけど。


「理世さん、凛子さんがホログラムマップを出してくれと言ってます」


 理世さんはコクリと頷き、あの未来的なサイコロ型の地図投影機を真っ白な床に放り投げると、サイコロが頂点となる四角形の領域に一瞬で3Dマップが造り出された。


 すると今度は先程とは違い、地下のアジトまでもが詳細な模型図として表現されていた。


 どこの通路からどこの部屋に繋がるかなどはもちろん、部屋にある机や椅子、至っては飾られている額縁まで表されていて(さすがにどんな絵が描かれているのかは分からない、もしかすると本当に額縁だけなのかも)、さらには李星人がどこにいてどんな動きをしているのかすら表示されている。

 まるで小人を観察しているかのようだった。


「これはすごいわね……凛子ってばどんなアップデートデータを送り付けてきたのかしら」


 理世さんも感嘆の声を上げていた。


「とにかくこれがあれば李星人に出くわすことなく目的地にたどり着けますね」


 この自分達の様子も俯瞰(ふかん)することができるマップがあれば、あの二人の位置も簡単に特定できる!

 理世さんがホログラムでできたアジトをスクロールしたりズームしたりして目を通す。僕もしっかり目を凝らす。


「あっ、居ました」

「どこ?」

「ここです、この部屋」


 僕が指差すおおよそアジトの奥と思われる部屋に理世さんがズームインした。


 緑色のホログラムでできた髪の長い人形とセミロングの人形が椅子に腰掛けているのが分かる。恐らくこの人形が藍河先輩と陽菜ちゃんなのだろう。


 場所を覚えたらしい理世さんは、アジトの全体図が見えるようにズームアウトさせた。


「ここにいる李星人の数は約百前後。二人のいる部屋に行くとき、出くわすことになる李星人は約三十から四十体ってところね」

「無事にたどり着けますかね」

「楽勝よ」

「頼もしい!」

「私を誰だと思っているの?」

「露出狂」

「ふん!」

「ぐはっ!」


 腹を殴られた。


 こうして僕達はアジトの中を散策し始める。

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