10:組織の命令
夕方に投稿するっていいながら朝に投稿なんて最低だよね!
僕ですね…………
★★★
「ふっ……ふふふ……ふふ…………」
「泣くなよ桜庭君、一万円くらいどうってことないさ」
「だからって残った三十二円じゃどうにもできない……」
「おいしい棒が三本も買えるじゃないか!」
「うまーい棒が三本あってもこの一ヶ月を耐え凌ぐのは無理です」
夕方の五時頃。
凛子さんから一万円むしりとられることによって『封印の書』を手に入れた僕達は、店から出てこれからどうするか思案している途中だった。
「まあ、僕が生きるか死ぬかの瀬戸際走っているという事実……今は置いておきましょうか」
「いや、置くな。自分の命をそう軽く思うな、君が死んだら私は泣くぞ」
「でもですね、僕なんて藍河先輩と比べたら月とすっぽんを見事に表したかのような関係ですし」
「よし、一旦君の価値観の話は置いておこう。今を生きなきゃ、明日の話をしたって仕方がない」
「それは正しいですねー……」
後やることと言えばこの町のどこに封印の書を設置するかということだけである。それが終われば、僕は晴れて自由の身──実際のところは今も自由の身なんだけれど。
とにかくあの変な宇宙人(なのかもしれない紫お姉さん)に関わらなくてよくなるだけでも十分だろう。
それでも今日中に事を始末せねばならない。
明日にまで期限を引き延ばしてしまうと、学校に行ったとき滅多うちにされる可能性が出てくるからだ。「封印の書はどこだー!」って感じで。
「それじゃあ、学校の近くにでも分かりやすく放置しておきましょーか」
若干気の抜けた風にそう言おうとしたとき。口を開きかけたとき。
骨董品屋の位置するこの人気の少ない裏通りで、一人の女の子が僕達を見据えていた。信じられないと言ったように、愕然という風に。
「そんな……どうして……どうしてちーくんが…………なんで……」
陽菜……ちゃん? ちょっと様子がおかしいな。
「陽菜ちゃんどうしたの?」
僕が陽菜ちゃんの元に駆け寄ろうとすると、
「近付かないで」
「え?」
「近付かないで!」
この場に張りつめた空気が流れ出す。
陽菜ちゃん……一体どうしたんだろう?
「桜庭君……下がれ」
藍河先輩が僕の耳元で囁く。
「嫌な予感がする」
嫌な予感。それは果たしてどういう意味なのか。まさか陽菜ちゃんが敵になるだなんてことが……。
「あいつと同じ空気だ、あの露出狂のおばさんと同じな」
「どういうことですか、それ? あの紫お姉さんの正体が陽菜ちゃんとでも言うんですか?」
「それはない。あのおばさんの正体があいつだったのなら、下駄箱で遭遇したときになんらかの行動に出てたはずだ。そういうんじゃなくて……あいつも何かを持ってる……そんな雰囲気だ」
「それって……」
陽菜ちゃんが言う。
「…………ちーくんと藍河先輩……、二人が何故封印の書を持ってるのか分からないし、もしかするとあの機関のメンバーという可能性も否定できないし。……なんにせよそれを持ってるってことはそうなんだろうね」
「ひ、陽菜ちゃ──」
よく分からないがとてつもない勘違いされていることが分かったので、僕は急いでその誤解を解こうとするが、それを遮るように機先を制された。
「──ちーくん!」
「……何?」
「私はちーくんのことが大好きです。……でも、ちーくんが敵なら……人類の敵なら……それを使って世界をめちゃくちゃしようって言うのなら……私は、ちーくんを殺す。殺さなきゃならない。組織の命令で────『魔法少女』の名に懸けて」
ごめんなさい──と、陽菜ちゃんはうつむき呟く。




