表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Like A Broken Mirror  作者: 勾田翔
惨殺
40/51

10(二月八日――午前三時二七分~午前三時二九分)


   10(二月八日――午前三時二七分~午前三時二九分)


 空になったロケットランチャーの発射装置を投げ捨て、手許に控えさせていたスナイパーライフルを構える。スコープを覗き込む。

 どうやら、自分はこの場所に因縁があるらしい。銃を構える先には、廃墟と化した住宅街が広がっていた。周囲を高い外壁で囲われ、その他の世界と明確に隔離されている場所。

 ――あの夜、千条神羅に自分が敗北した場所。

 スコープ越しの景色からは、今さっき久郷がロケットランチャーによって爆撃した建物のフロアが確認できた。砂埃が舞い上がり、景色が閉ざされている。

 久郷がいるビルの屋上から、千条神羅達がいる建物までの距離は――およそ九〇〇メートル。

 視界の悪さと、吹き荒れる風は、それだけで狙撃の正確性を大きく削り取る。

 さらに長年愛用していた狙撃銃は、千条神羅と初対峙した際に破壊されており、今手にしているのはスペアの安物に過ぎない。銃そのものの精度もたいした事はない。

 だが。

「そんな些細な事は、関係ない」久郷は、はっきりと断じた。

 条件が悪いからどうした? 武器の性能が良くないからどうした? 

 そんな小さな事は、全て自分自身の技術で補ってしまえばいい。

 久郷は引き金に指をかける。自分の役割は時間稼ぎ。一秒でも長く、千条神羅をあの場に足止めしておく事だ。ゆえに、自らの心が落ち着くのを待っている余裕は存在しない。

 ――撃つ。

 耳を穿つような発砲音が鳴り渡り、射出された弾丸が砂塵の向こうにいた千条神羅を確実に捉えた。さらに連続して引き金を引く。銃弾が到達するたびに、この距離からでも視認できる『セフィロト』の盾が防御してしまう。銃撃は一発たりとも千条神羅自身には当たらない。

 ――それでいい。

 久郷は内心で囁く。最初から狙撃で倒せるなんて思っていない。

 狙いは、もっと別のところにある。遠方から連続して狙撃する事によって、千条神羅をこの場に縫い止める。おそらく『セフィロト』の有効射程は、狙撃銃ほど長くはない。

 それは彼との最初の戦いを通じて掴んだ情報だ。あの時、久郷の撃った銃弾を防御した千条神羅は、久郷を始末するためにわざわざ接近してきた。それはすなわち、彼が遠距離戦を苦手とする事を意味しているのではないか。

 千条神羅は依然、身動きが取れずにいる。――『今』だ、やれッ!


 その瞬間――あらかじめフロアの入り口付近に張り込んでいた五十嵐が、突如として姿を現し、少女を抱え、一目散に走り去る。


 千条神羅が驚愕の表情を向けたが、もう遅い。久郷は重ねて弾丸を叩き込んでいく。

 そう。これが久郷と五十嵐の立案した作戦だった。五十嵐が単身、千条神羅のもとへ潜入し、久郷の奇襲と共に突入――少女を救出する。作戦は成功した。

「これで心置きなく、千条神羅と戦える」

 弾倉が空になった瞬間、久郷は狙撃銃を放棄すると身を起こして出口へと向かった。

 条件は整えた。ここからが本番である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ