6(二月八日――午前〇時四五分~午前〇時四八分)
6(二月八日――午前〇時四五分~午前〇時四八分)
こちらを見て固まる二人組の男女に向けて拳銃を突きつけながら、「ちょいと話を聞かせてもらおうか」と武田は言った。「ああ、お前じゃねえ。そっちの銀髪のお嬢さんだ」武田が睨みつけると、銀髪の少女は僅かに身を強張らせる。
笠峰が震えた声で武田を見やる。「武田さん……いくらなんでも、こんな子供に……」
「見た目なんてアテにならねえよ」武田は吐き捨てる。「いや、コイツにいたっては、見た目もそうだ。今この状況で、こんな銀色の髪してるヤツが無関係な訳ねえだろ」
「アンタ達も特殊部隊の人間か……?」少女の傍らにいた、学生服を着た少年が警戒しながら問いかけてくる。
武田は肩をすくめて、「違げえよボケ」と言い捨てた。「ただの刑事だ。ま、追ってる奴は一緒だがな」銃口を少年に向ける。「そのお嬢さんを、こっちに渡せ。まさか他にも『エデンの使徒』がいるとは思わなかったぜ。千条神羅の居場所を聞き出せるかもしれねえな?」
少年の顔が険しいものに変わる。「千条神羅? 誰だそれ? 彼女はそんなヤツ知らない」
「外野は黙ってろ」武田は忌々しそうに、「お嬢さん、お前もあのクソガキの仲間だろ?」と断定するように言った。「無関係とは言わせねえ。この狭い範囲に、『エデンの使徒』が二人も紛れ込んでいやがったんだ。さあ、教えろ。すっとぼけんなら、ドタマぶち抜くぞ。テメエらみてえな殺人狂に容赦できるほど、俺は人間できてねえからな」
もちろん、すぐに殺す気はない。威嚇程度に撃つ気はあるが、この少女が無関係であるという可能性もある以上、安易な事はできない。ただ本気に見せかけて脅すだけだ。
「……知らない」と少女は囁くように言った。
「そうかい」武田は引き金に指をかける。「なら、ちょっとばかし痛い目にあってもらう」
引き金を引くと同時に、銃口を横にそらせるよう、手許に意識を集中させる。
「いたぞ! あそこだ!」
その瞬間、遠方から複数の足音が聞こえてきた。四人は驚愕の表情と共に、音の方向に視線を走らせる。そこには数人の、兵士のような格好をした者達がいた。
頭にはフルフェイスのヘルメットを被り、全身にはアサルトスーツ。防弾ベストで胴体を覆い、手にはアサルトライフルといういでたちだ。
武田はすぐに合点がいった。「あの連中――SATかッ!」
SATの狙いは『エデンの使徒』。そして一般人の犠牲すら許可されている彼らは、迷いなく秘密を知った一般人すら手にかけようとするだろう。つまり、武田や笠峰の命も危ういという事だ。
「くそッ! 最悪のタイミングだ!」吐き捨て、踵を返す。重要な情報源となりそうな少女の事は惜しいが、ここで殺られる訳にはいかない。「笠峰! 逃げるぞ!」
「は、はい!」一瞬遅れて笠峰は返す。
迫りくるSATと、少女達に背を向けて、二人は全力で走り出した。




