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Like A Broken Mirror  作者: 勾田翔
惨殺
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2(二月七日――午後八時四分~午後一一時二五分)


   2(二月七日――午後八時四分~午後一一時二五分)


 一人暮らしとは思えないほどに豪奢で広い空間の中には、絶えず水の流れる音が響いている。音源は、リビングを出て少し先に行ったところにある風呂場からである。誰が入っているかは考える必要もない。

 二〇畳はくだらないフローリングは、隅から隅まで床暖房。環境問題になど微塵も興味ありませんと言わんばかりの大量の暖房器具がフル稼働して、部屋全体を快適空間へと導いている。加湿器まで備えているのだから、健康観点から見ても文句ナシである。

 どう考えても高校生の部屋じゃねえな、と五十嵐(いがらし)は溜息混じりに考える。

 広いリビングの中は、いかにも女の子のものらしい、ぬいぐるみで溢れ返っているが、それなりに整理は行き届いていた。……まあ、満身創痍の状態で、マンションに着いた時に、『ちょっと仕事関係の資料とか出しっぱなしにしてあるから、少し待ってて!』とか何とか言われながら、一〇分くらい扉の前で置き去り食らったので、間違いなくその間に片づけは済ましたんだろうが……。

 側にある、ギチギチに膨れ上がった段ボール箱は努めて見ないようにする。

(それにしても……女子の部屋に入ったのなんていつぶりだ……?)

 中央付近に置かれたソファに腰を落としながら、ぼんやりと口の中で呟く。

 少なくとも、中学に上がってからはそんな機会なんてなかったような気がする。別にモテる訳でもねえし。

 とはいえ、家主が普通の女の子かと訊かれると、とてつもなく微妙なところなので、『わーい! 女の子の部屋だー!』みたいな感じで、混じり気なく純粋に喜ぶ事はできそうにない。一歩中に踏み込んだら、武器だらけでしたとかじゃなかっただけマシかもしれんが。

 どこからともなく漂ってくる甘い匂いに、やっぱり内心は少し緊張しながら、五十嵐は制服の上着を脱ぐ。

 身体も服も泥だらけ。しかも身体の方は傷もたくさんある。擦り剥いた側頭部が、いまだにズキズキと痛む。

「…………」ちらりと、風呂場の方を見やる。

 家の中には三人。その内の美少女×2は、ただいまシャワータイムときた。もし自分がもうちょい、はっちゃけた人間であれば、迷いなくあの場所に飛びこんでいってサービスシーンを堪能できたかもしれんが、あいにくと俺は自分の命の方が大事だ。進んで処刑台へと向かう勇気は皆無である。

 そんな訳で先ほどから特にする事もなく、ぼけーっとしているだけの一七歳男子。

 しばらくすると水の音が止み、ゆったりした服を着た少女達が出てくる。鈴鳴(すずな)の方は厚手のパーカーにホットパンツという格好だった。少し前までの殺伐とした空気から解放されたからか、その表情は、どこか緩んでいた。

 で、もう一人、ニットのセーターに身を包んでいるのは――


「………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………誰?」


 ――白目になるんじゃないかと思うくらいに目を剥いて、五十嵐はボソリと言った。

 あれ? ここって俺達三人以外に誰かいたっけ? 少なくとも二人を待っている間に、他の誰かが来た気配はなかったんだけど……。

「……何か失礼な事考えてない?」不機嫌さを露わにした声は、確かに葛城(くずしろ)のものだった。

 棘のあるその声は、眼前のセーター姿の少女から発せられている。それは間違いない。

 だが。

 普段の大人っぽいクールビューティーさなど欠片も感じさせない、中学生だと言われても納得してしまえるレベルの、この童顔少女を、『あの』葛城真彩(まや)だとは、とてもじゃないが信じられるはずもなかった。

 もちろんスタイルは、モデル並みに申し分ない。綺麗に染色された明るい茶髪も、彼女のトレードマークだ。

 なのに、肝心な部分が、あまりにも違う。

「……こんな純真無垢であどけない感じの可愛らしい女の子が、あの暴力女のはずが……」

「心の声が出てるわよデリカシーナシのアホ男」

「へぐうッ!?」頬に強烈な平手打ち。――ああ、たった今確信できた。やっぱこの子が葛城だわ。……殴られた事であっさりと納得できてしまった自分自身に軽く引いた。

「単に、化粧落としただけよ」と彼女は、腕を組みながら呟いた。こちらから眼をそらし、顔を赤らめる。「……素顔なんて家族以外に見せた事ないんだから……言っとくけど、誰かに言いふらしたりしたらぶっ殺すからね」

 なるほど。葛城が普段からあれだけ念入りにメイクをしてる理由が分かった気がする。

 が……たとえそれでも、いくらなんでも化粧ひとつで変わり過ぎだろという思いもある事はあるが。もはや、特殊メイクのレベルじゃねえか。

「その顔、嫌いなのか?」我ながら、かなり直球。

「直球過ぎでしょ、アンタ」心中を見破られたかのように、ジト目で睨まれる。それから軽く横髪をいじくった彼女は、「こんな顔じゃ、舐められるのよ」と投げやりな調子で言った。「……こんな世界で生きてるんだもん。こんな子供っぽい外見じゃ、依頼人の信用も勝ち取れないし、標的にまともに近づく事だってできないの」

「標的に、近づく……?」

「そ。アンタも見たでしょ? 私の扱う武器。私の仕事のやり方は大体こう。――標的の変態オヤジ共にネコ被って近づいて誘惑……ラブホでも何でもいいから、二人だけになれるトコに連れ込んで、あとは日用品に見せかけた銃でバン! それが私のスタンスね。……ま、実際にヤッた事なんて一回もないけどさ」

 あんなキモイ豚なんかに犯されるくらいなら舌噛んで死ぬから、と彼女はつけ加えた。

「金持ったお偉いサマ達は、本来の私になんか一切興味ないだろうからね。幼女好きの異常性癖者じゃない限りは」

 あまりにも生々しい話に、口の端を引きつらせる五十嵐。彼女とちょっと関わるだけで次々に別世界の話が飛び出してくる。

 メイクで自身の顔を隠すというのも、確かに納得はできる。しかし五十嵐の方は、首の後ろに手を回して、「う~ん」と唸ると。「でも、もったいないよなあ……」

「? 何がよ?」

「いや……せっかく可愛い顔してるのになあと思って……」

「――――ッ!?」突如、面食らったような調子で顔を赤くする葛城。何気なく言っただけの感想のつもりだったが、予想以上に効いたらしい。「なッ……!? く……くだらない事言ってないで、さっさとアンタも風呂行ってこい! 身体中の血落としてこないと手当てしてやんないわよ!」

 ぐいぐいと背中を押されて風呂場まで運ばれる。脱衣所に放り込まれ、そのまま勢いよく扉を閉められた。磨りガラス越しに、「早く上がってきなさいよ!」と急かされ、足音が遠ざかっていく。

「……………………」

 ――その一連の仕草を、不覚にも可愛いなと思ってしまった事は秘密である。



 傷口に染みるシャワーと格闘しながら風呂を済ませると、泥を払った制服に袖を通してリビングに戻る。

 そこで。

 化粧を落として童顔となった葛城に続き、息を呑むほどに変貌した姿の鈴鳴を発見した。

「ふふん、どうよ?」得意げに訊いてくる葛城。「なかなかのモンじゃない?」

 両手にハサミとゴミ箱を携えた彼女の傍ら。そこには、肩まで伸びた手入れのされていない、切れ味の悪いナイフでぶち切ったような歪な髪型――ではなく、ふわふわとした、軽やかな印象のショートボブになった鈴鳴が照れ臭そうに、ちょこんと座っていた。

 鈴鳴は頬を赤くさせて、「似合う、かな……?」と遠慮がちに尋ねてくる。

 五十嵐は少しの間、呆けたように彼女を見ていたが、すぐに我に返って首を縦に振った。

「すげえ似合うよ! メチャクチャよくなった! これ、葛城がやったのか?」

「当然よ」と彼女は胸を張る。「なんてったって、この私が絶対似合うと思った髪型見繕って切ったんだからね。ざっとこんなモンよ」

 改めて鈴鳴の方を見やる。銀色の髪の毛は、以前に比べて格段に艶もあり綺麗になっていた。葛城が何かつけたのかもしれない。鈴鳴の髪色も相まって、その細く煌びやかな髪の一本一本が、上品な絹糸を連想させた。

 前髪も、眉毛にかかるくらいのところで整えられており、彼女の幼いながらも端正な顔立ちが、しっかりと望めるようになっている。

「ああ……それにしても、我ながら実に完璧な出来……」

「……ん? 葛城?」不意にうっとりとした甘い声を発した葛城に、五十嵐は怪訝な表情を向ける。そして次の瞬間、あまりの光景にギョッとした。

 視界に飛び込んできたのは、恍惚の表情で悶える葛城の姿。赤く染めた頬を両手で押さえながら、何やらぶつぶつと呟いている。「……人間離れした髪色に、愛くるしい顔……それを際立たせるショートボブ……」

「おい……葛城、お前……」

 彼女の様子に何か不穏なものを感じ取った五十嵐は、そろそろと鈴鳴を庇うように場所を移動した。二人揃って引きつった苦笑いを見せながら、五十嵐はちらりと室内に視線を泳がせる。

 そうだ。そこら中に置いてあるのは、一様に可愛い外見のぬいぐるみ。冷静に考えろ。あの葛城がそんなものを持ってるんだぞ。まず、そこに疑問を抱けよ俺。

 直後――


「――もうダメ! 我慢できない! いっただっきまーす!!」


 満開の笑みで、男一人をぶっ飛ばした葛城が、鈴鳴に抱きかかる。いきなりの出来事に赤面した鈴鳴がわたわたともがくが、葛城は彼女をガッチリとホールドして離さない。

「ああん! もう何なの? この可愛さ! 最高過ぎるううう!」慌てふためく鈴鳴に容赦なく頬ずりしながら、「このまま私の家に置いておきたいくらい! ねえ、鈴鳴ちゃん、アイツの家なんかどうせ狭くて汚いだけでしょ? ならずっと私のところにいない!? いっぱい可愛がってあげるから!」と怒涛の連撃を浴びせかける。

 一方の鈴鳴は、眼をぐるぐるとまわして、「ふええ……? いやあの、私は……って、くすぐったい! やめて、そんなトコ触らないでくださいいいッッッッ!!」と喘ぎながら、涙眼でこちらに助けを求めてくる。

「…………」五十嵐は無言で眼をそらした。

 鈴鳴の事も心配ではあるが……それ以上に数日前まで葛城に対して抱いていた畏怖の感情が音を立てて崩れていくのを、直視する事ができなくなっていた。こんなのが俺の知ってる葛城真彩のはずがねえ。「本当のコイツは単なる暴力女だ……こんな女子らしい仕草なんか全く似合わねえくらいの……」

「またまた心の声がダダ洩れになってるわよーん?」

「ぎょぱッ!?」

 凄まじい速度で飛んできたテレビのリモコンが額にクリティカルヒットし、今度こそ意気消沈する五十嵐であった。



 さすがに我を見失い過ぎたと、あとになってから後悔したらしく、おとなしく自分の部屋に潜り込んでいった葛城。ちなみに夕食は全てレトルト食品やら冷凍食品やらで済まされた。飲み物を取るために冷蔵庫を覗いてみたところ、全くと言っていいほどに食材が入っていなかった事を考えると、やはり料理はできないらしい。

 制服の上着をリビングのテーブルに投げ出し、ソファに寝転ぶ。ベッドと布団は女子二人が占領してるので、自分にあてがわれた場所はここのみである。

 とはいえ、ようやく殺伐としたあの状況から解放されたのだ。ゆっくりと安心して眠れると思うだけで、心の平穏は計り知れない。

 ここしばらくの疲労が蓄積していたせいか、毛布をかけるとすぐに、まぶたがまどろんできた。その眠気に逆らう事なく、静かに眼を閉じる。

 そんな時だった。

 不意に、ごそごそと何かが蠢く物音と共に意識が覚醒した。

 こんな時間に何だ? と思いながら音の方向に視線をやると、鈴鳴が、五十嵐とソファの背もたれの間に潜り込んでいる最中であった。

 鼓動が跳ね上がり、思わず声をあげそうになる。吐き出されかけた情けない声を呑み込み、「鈴鳴……何してるんだ……?」と少々上擦った声で尋ねかける。

 その声で初めて五十嵐が起きている事に気がついたのか、彼女はビクリと肩を震わせて、羞恥に染まった相貌でこちらを見つめてきた。「い……いつから起きて……」

「ずっと起きてたよ」

「あ……そうなん、だ……」平静を装うとしているが、今にも泣きそうな鈴鳴である。罪悪感を掻き立てるような表情で、しばし硬直した彼女は、このままでは埒が明かないと判断したのだろう。開き直ったように、背もたれと五十嵐の間のスペースに、完全に身体を収め込んだ。

 お互いの顔の距離は、吐息がかかるくらいに近い。視界いっぱいに広がる、可愛らしさの権化に、馬鹿正直に心臓の拍動が早くなっていく。

「ごめんなさい、起こしちゃって……でも一人じゃ寂しかったの……」鈴鳴は小動物のように震えながら言う。「もし嫌じゃなかったら……一緒に寝てほしいな……?」

 ……無論、そんな顔でそんな事言われて無下にできるほど、自分はドライにはなれない。とはいえ、このまま普通に答えようとすれば、間違いなく緊張した唇からは情けない声が出てくる事必至だ。

 そんな訳で、無言で彼女にも毛布をかけてやる事でアンサーとした。至福の表情を覗かせながら、すり寄ってくる鈴鳴。

 と、そこで五十嵐は彼女の身に着けていたあるものに意識がいった。彼女の首許、そこに下げられたペンダントだ。高級なものかどうかは判断がつかないが、貝殻の形を模したチャームがとても綺麗に感じられる一品だった。……そういえば初めて会った時から、ちらちらとチェーンらしきものが覗いていたが、そんな事など気にしている暇もないくらいの事態に見まわれていたので、全然気に留めていなかった。

 五十嵐の視線に気づいたのか、鈴鳴は小さく笑ってペンダントを手に取った。

「これね……私の宝物なんだ」と言いながら、貝殻のチャームに指をかける。どうやら開閉式のロケットペンダントのようで、パカッ、とチャームが開いた。

 その中には写真が納まっていた。家族写真のようだ。人のよさそうな笑みを浮かべる若い男女の間に挟まれるようにして、銀髪の幼子が写っていた。

「これ、私が小さい頃の写真……『施設』に連れて行かれる少し前に撮ったやつだったかな……?」懐かしそうに話す彼女の声には、どこか憂いのような感情が感じられた。

「施設……?」

「うん、お母さん達がね……私の事、これ以上面倒見られないからって……施設に入れられちゃったの……」彼女はどこか遠くを見つめるように。「きっと……私が皆と違ったから……愛想尽かしちゃったんだろうなあ……」

「もしかして……その髪のせいだったり、するのか……?」

「それもあるけど……それだけじゃないかな……? 普通の人には……できない事ができたから……だと思う」

 できない事? と五十嵐が反芻すると、鈴鳴は伏し目がちに――

「たとえば、こんなふうに瀕死の傷を早く治してしまったり、とか」

 ――そう言って、自身の服をはだけさせる。

「ちょッ……!?」いきなりの大胆な行動に顔をそむけようとした五十嵐だったが、直後に意識は別の事柄へと方向を変えた。「どうして……?」

 包帯も取り払って、露わになった肌には、一切の傷もついていなかった。傷つけられたという事実自体がなくなってしまったかのように、全てが元通りになっている。

「これが私が、いろんな人達から嫌われた理由のひとつかな……。私が近くにいると、理解できない事が起こってしまうからって……」

「その、施設ってのは……どうしたんだ? 鈴鳴はそこにいたんだろ?」

「……そこもね、もうなくなっちゃったんだ。七年くらい前に、潰されちゃって……。それからは、ずっと一人で生きてきた……たまに優しくしてくれた人もいたけど……結局は皆、私を怖がって離れていった……『化け物』って言って……」

「それじゃあ……」

 ――彼女は七年間も、たった一人でこの世界をさまよっていたのか? 頼れる人も誰もいない、落ち着く家もない。冷たく薄暗い場所で寂しさに苛まれながら、孤独感に襲われながら、それでもこんなに純粋な心のまま成長してこれたのか?

「実はね、この鈴鳴って名前……私の本当の名前じゃないんだ」

「違うのか?」

「うん……『施設』に入れられてから……私ずっと泣いてたんだ。お母さんとお父さんに会いたいって言って……誰にも心を開かなかった。そしたら、今度はお母さん達がどんどん憎くなってきて……一時、私、本当にどうしようもなくなっちゃたんだ」

 でも、と彼女はそこで言葉を区切った。

「ある日ね……新しく『施設』に入ってきた男の子がいたの。『施設』に集まってくる人達は皆、私と似たような境遇にあった人達でね、どこか……他人を信じれないところがあったんだよ。一度、裏切られて傷ついた心は、簡単に元通りにはならないって感じかな……。なのに、その男の子だけは違った……どんな理不尽な運命にも負けないで、笑顔を絶やさずに、『施設』の皆に接してきた……」

「…………」五十嵐は静かに、彼女の話に聞き入っている。

「いつしか、皆が彼に心を開いていって……私もちょっとずつ笑えるようになっていって……でも、お母さん達に捨てられた事が、ずっと胸に引っかかっていて……そしたら、ある時、彼が言ったんだ。『そんなに昔の自分が嫌いなら、新しい自分に生まれ変わればいいじゃないか』って」

「それで、名前を変えたのか?」

「そう。とはいっても、今の私の名前は、自分で名づけた訳じゃなくて……その男の子がつけてくれたんだ。鈴を鳴らすみたいに綺麗な声をしてるから、『鈴鳴』って。すごく気に入ってるんだ。今じゃ、このペンダントより大切かも? ふふっ……」

 彼女は、クスクスと含み笑いを洩らす。

「鈴鳴」と五十嵐は彼女の名を呼んだ。「この騒ぎが納まったらさ……俺の家に来ないか?」

「え?」

「俺は、たとえ鈴鳴がどんな奴でも拒んだりしない……。その、何だ……? 自分の居場所が見つかるまでは、俺の家に好きなだけいていいからよ。俺、貧乏だから、そんなに贅沢はできないけど……」

「本当に……いいの?」と彼女は確認を取るように訊いてくる。「私がいたら……あなたにいっぱい迷惑かけちゃうよ……」

「男に二言はねえさ。約束する」

 瞳を潤ませて鈴鳴は言う。「すごく嬉しい……ありがとう……」

 五十嵐は満足したように微笑んで、「それじゃ、今日はもう寝ようぜ」と言って、彼女に布団をかけ直した。「おやすみ」

「うん、おやすみ」

 寝息を立て始めた鈴鳴を見届けると、五十嵐も静かにまぶたを下ろした。

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