11(二月七日――午後一二時四〇分~午後一二時四五分)
11(二月七日――午後一二時四〇分~午後一二時四五分)
「はあッ……はあッ……! くそッたれが……ッ!」
息を切らせながら、武田は悔しさを滲ませた声で吐き捨てた。
近くの自販機でペットボトルの緑茶を買うと、それを一気に飲み干してしまう。
結局、あのワインレッドのジャケットの男には逃げられてしまった。
単純に歳の差のせいという訳でもなかった。赤ジャケットの男は、武田の追跡に気がついた瞬間、通常の人間では想像もつかない行動に出たのだ。
手近な建物の外壁に、あまりにも身軽な動作で飛びつき、ロッククライムのような動作でよじ登り、屋上にまで達すると、さらに近くの建物の屋上へ飛び移る。
それの繰り返し。
赤ジャケットの男の身軽さからすれば、常識に乗っ取って地上を進んでいた武田の事など、まるで眼中になかったようだ。武田の全速力を嘲笑うかのように、男はすぐに行方を晦ましてしまった。
「ちッ……」武田は舌打ちしながら携帯電話を取り出すと、笠峰に電話をかける。
数回コール音が鳴ったのち、電話の向こうから彼の声が聞こえてくる。
『武田さん! いきなり飛び出して行ったんで心配しましまたよ……! 今どこですか?』
言われ、武田は辺りを見回す。「結構、遠くまで来ちまったな……」と電話に向かって呟く。「今から戻る。ちょっとばかり、時間もかかりそうなんでな。どっかで適当に時間潰しといてくれや」
笠峰からの返事も待たず、通話を切る。
「さて……過ぎた事をいつまでも根に持つほど、俺に余裕はねえ。さっきの手がかりが消えちまった以上、次の手がかりを探さねえとな……」
取り出した煙草に火をつけ、咥える。煙を吸い込みながら、武田は考える。
次に切るカードを。




