序章ノ弐
ぼろ布を纏った影が一つ、路地裏を歩いていく。
「は、はあ・・・」
溜め息とも息切れともつかぬ声を出す影。
「こ、ここなら人もたくさんいるっぽいし向こうも手を出してこないはずだよねー」
何者かに追われているような台詞を呟きながら、夜空を見上げる。
「満月かー」
いい夜にこの街に来られてよかった、と思いながら影は、
「女の子が一人で夜道を歩いていいもんじゃあないよねえ・・・」
そう呟く。
その影は驚くことに少女だった。
その少女は終始くだけた口調ながら、
「どこか泊まれるところか安全なところないのかなー」
焦っていた。
何に?
言わずもがな、今晩の宿に。
ついさっきこの街に来て、そのまま路地裏を歩いていた少女。
無論、地理に詳しいはずもなく、ただ光のある方向に歩くしかなかった。
おぼつかない足取りで光の溢れている場所へと身体を進めていく。
そうして、辿りつく。
光の溢流とでも呼ぶべきか、どこを見渡しても光のない場所などないそういうところだった。
「すごい・・・!それに、人もたくさん!」
駅から延びた中央通りと呼ばれている場所で、これなら一晩くらい大丈夫だろうと少女は考え、寝床を探した。
お金など持っていないので当然野宿である。
「野宿♪野宿♪のーじゅーく~♪」
楽しいはずもないのに歌ともいえない歌を歌いながら野宿できそうな場所を探す。
すれ違う人から怪訝な目を向けられながら、
「のじゅ・・・おお!」
少女は声を上げ、駆けていく。
「ここだぁ!」
そう言って今夜の寝床に決定した場所は、駅の横にある公園だった。
「ここなら明るいし、それに・・・!」
公園には、少女と同様に野宿を図る人か、それともホームレスか、とにかくこの公園で一晩を過ごそうとする人たちがいた。
「木を隠すなら、森の中ってねー」
そう言いながら手早く野宿の準備を終え、横になる。
――明日もいい日になるといいなあ。
そう思いながら、少女は目を閉じた。