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夢と幻のキネマ館  作者: 黒木 静
『白と黒のメリー』
23/453

13.怒れる死の風〈デス・ウォーカー〉①



 13.怒れる死の風〈デス・ウォーカー〉①



〈怒れる死の風〉。または〈デス・ウォーカー〉。


 観測所の導き出したランクは“B2”人間を殺戮するには事足りぬ力を持つ者であることを証明している。

 数ある伝説には、これは風の怪物であり、一歩が国を跨ぐ巨人の姿とも言われる怪異の形である。人をその一歩に巻き込んでは誘拐し、天高く舞い上げ、殺害する。北極点から特定の位置まで移動することのできないとも言われており、主に北半球に出現する〈怪物〉。これが起こす失踪事件は数知れず、多くの人間が空を飛び、そして腐敗して地に落ちる。由来不明の死体が各地に転がり騒動となったことも多々あったという。

 現在ではその行動範囲も広がり、世界中に吹く死の風に乗り、あらゆる都邑を吹き飛ばし、天空へ打ち上げては地面に打ち据える、人の生命を冒涜する〈宙色の怪物〉に仕える〈眷属〉の一柱である。

ニューヨーク近辺を襲った突風はこの〈怪物〉の所為だ。北極から発生し、その道上にある州の田畑や家屋を薙ぎ払いながらニューヨーク都心に接近。そこに立ち上がったのがアメリカ国内に対怪物戦を得意とする魔術師、ロバートだった。

 エクソシストの家系を持ち、戦闘経験もある強者だ。

 当時は〈堕神〉の可能性もあり、各州にも多くの武力が揃っていた。魔術師も公になり、怪物との戦いに備えられていたため、いかなる怪物も滅ぼさんという勢いだった最中、〈デス・ウォーカー〉の出現である。あらゆる魔術師達が戦った。どれも芳しい結果ではなく、後退という憂き目に終わり、ついにはニューヨークまで迫った次第である。

 そこで立ち上がるは魔術師ロバート。退魔に長けた血族である彼の家では、少年時代からの厳しい魔術修行から肉体鍛錬、新たに登場するであろう怪物に備えた研究など、充実した教育期間を経ていた。ロバートは生粋の対怪物の性能を備えた魔術師としては一級の力を持つ者として、ニューヨーク防衛を任された。


 迫る〈デス・ウォーカー〉。そして、待ち伏せるロバート。


 そして……勝利したのはロバートだった。しかし、ロバートは同時に厄介な〈印〉を受け取ることになる。この場所に居る発端となった、始めの出来事だ。

 かつて西洋から中東を壊滅に導いた夜闇の王。光の更に向こうに住むという〈宙色の怪物〉、まごう事無き《名も亡き王》の堕神点である。

 ロバートが生まれるより百年ほど前に討伐した、伝説級の怪物の〈印〉である。

〈デス・ウォーカー〉は《名も亡き王》の眷属……〈堕神点〉を用意することも可能であろう。と、メリーはそう言った。〈デス・ウォーカー〉が、早急にも主の復活を望んでいる。という事も。

 そして、ロバートは〈デス・ウォーカー〉の力と、『名もなき王』の〈堕神点〉を得て、人間ならざる強靭さと不死という絶対的な生命力を手に入れた。が、代償に、いつ訪れるかも分からぬ恐怖に怯えることになる。


 ロバートの目的は一つ。堕神点を消滅させ、家に帰ること。

 それは自分の死をも覚悟した言葉である。

 そういった経緯もあり、似通った目的を持つメリーに出会ったということである。




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