08 おミミとシッポで分かるものです
「陛下もアナタを見習ってもうちょっと大人な対応をしてくれれば良いんだケドねぇ…」
不安が一つ減った安心感で、思わずポロッと零れる愚痴。
「私としては、陛下のあの態度は微笑ましいものですけれどね」
ほう?
「一国の王様があんなに気持ちダダ漏れで良いのかと思うのですが?」
意外な答えに尋ねてみれば。
「フーカ様とご一緒の時だけですよ、あんなのは。普段はもっと落ち着いて――と言うより冷静でいらっしゃいます」
返ってきたのはすぐには信じられない答え。
……ホントかいね?
思いっきり不信感が顔に出ていたのだろう。
「私たち獣人は、種族の程度こそあれ、概ね耳や尻尾の動きにどうしても感情が表れてしまいます」
なるほど。まぁ、確かに。
ゴロンと寝そべってても耳だけこっちを向いてる(←あたしはこれを“耳レーダー稼働中”と呼ぶ)とか。大人しくちょんとお座りしてても巻きが取れそうなくらい尻尾をぶんぶん振り回したり(←どんだけ嬉しいのさ!)とか。
耳の動きと尻尾の動き(慣れればプラス視線)で、ふぅちゃんの気持ちはか~な~り分かる!
でもって、口がニマニマするくら可愛いんだな、こ・れ・が♪
「それを如何に抑えることができるか、というのは為政者に求められる能力の一つですが、国主としての陛下はあの若さにして完璧と言えるほどです」
………ふぅん。
この狐侍従がそう言うからには、バッチリできてるってことなんでしょーね。たぶん。
「ですが、最近ではそれが“完璧”すぎて、“私”としての部分まで己を厳しく律しすぎていらっしゃるように見受けられ、私や父は逆に心配していたところだったのですよ」
……あれですよね? 張りつめた糸は切れやすくなるっていう。
そりゃまぁ? 狸宰相とか狐侍従が心配するのも分かるケ・ド!
「………そんなコト、部外者も部外者なあたしに言って良いんですか?」
あたしとしちゃ、ふぅちゃんのコト以外は関わり合いたくないってのが正直なトコなんですけど?
あたしの視線の意味など分かっているだろうに。
「部外者などと。陛下の将来のご伴侶たるフーカ様が今現在頼りとされている御方ではないですか。
「それに、陛下はああ見えてカナ様にもお心を許していらっしゃるご様子(←いや、それはさすがに異議アリ!)ですし」
にっこり微笑みながらしゃあしゃあと言ってのけるあたり、やっぱりタヌキだな(←種族はキツネだけどさ)。
しかも何さ、“今現在”って。将来は違うでしょ、ってかい?(←うっわー、ムカツク!)
「ですから、陛下にはどうかお手柔らかにお願いいたしますね」
イイ笑顔で言ってくれましたよ。
………もしかしてこの一言が言いたくて残ってたんだろうか?
“多少なら目を瞑るけど、度が過ぎると黙っちゃいねーぞ”とか?
家臣って立場を考えれば分からなくはないケドねぇ。
あたしにとっちゃ何より優先すべきコトは決まってますから?
「ふぅちゃん次第ですね(←今のままじゃ無理でしょ)」
こっちもイイ笑顔で答えさせていただきましたよ?
耳が垂れてる犬種はまた別でしょうが、耳が立っているワンコは耳の動きだけでも面白いです。
左右で違う方向向いたりとか、困ったときにはへにょっと伏せたりとか(笑)。
我が家の犬は和犬の尻尾で巻いてますが、寝てる時はだらんと垂れてます。
作者の顔を見て巻いたままぶんぶん振ってた尻尾が、相手せずに放置してると止まって次第に力なく垂れていく様を見る度に、随意筋なのか不随意筋なのか不思議に思います。