06 愛を感じると嬉しいものです
ふぅちゃんを見る時は優し~い目になって狼耳もへにゃってなるのに、あたしに視線を向けると睨み殺さんばかりに眦はつりあがるわ耳もピンとなるわで……めっちゃわかりやすいわ~、狼陛下。
恋敵(←あたしのことだろな、やっぱし)憎しなのはわかるけどさ、そんな感情ダダ漏れで一国の王様なんてやってられるのかねぇ。
い・ち・お・う、うちの可愛いふぅちゃんへの求婚者なワケだから? まだ認めたわけではないですけども? 心配はさせていただきますよ?
周りはどう思ってるんだろ?と思って狼陛下の後ろに立つ狐侍従――外見30ちょいくらい、あたしがちっちゃい頃流行った少年誌原作のアニメに出てくる妖狐のよう――をチラッと見てみると。
うわっ! これぞ!っていうくらい「生温か~い」視線&口元微笑みで見てらっしゃった。思わず視線があらぬ方向に逃げちゃいましたよ。
ありゃ、状況わかってて楽しんでるねぇ。……うん、さすが狐だ。
いや、まぁ、あたしだってもともと狼は好きだし? ビシバシ向けてくる敵意さえなけりゃデレてるサマは可愛いんだけど?
だかしかぁし! むしって冷ましたゴハンの鳥肉をはむはむと食べているふぅちゃんには敵わないさね!!(←しつっこく言うけど親バカじゃないっす!)
思わず頭をナデナデして可愛いお耳をつまんでマッサージ。もちろん、常日頃のスキンシップの賜物で、ふぅちゃんは嫌がりませんよ?
――うおぉう、狼陛下からの殺意が3割増しですよ、旦那(←モチロンそんな相手いないけど)。なんかココまで黒いオーラを出されると国王サマじゃなくて魔王サマですな。
ふぅちゃんの頭を撫でる手はそのままに、狼陛下がどこまで禍々しくなるか観察していると、いつの間にか食事を終えたふぅちゃんがあたしの腰に手を回してしがみついてきた。おっと、集中してないのに気が付かれちゃったかね。
苦笑しながらあたしも抱きしめようとすると。
「おねーちゃんはふぅちゃんの!」
狼陛下を睨んでの、イキナリの「あたしの」発言。
あらあらふぅちゃん? ひょっとしてヤ・キ・モ・チかな?
まったくもう、どこまでかーいーんだか、このコはっ!
抱きしめてかいぐりかいぐりしながら、さて狼陛下の反応はと見てみると。
お~お~、狼狽えとる狼狽えとる。(「な…っ」だの「ちが…っ」だの、ちゃんと言葉になってないよ~、陛下。)
自分がしあわせさんなものだから、さすがに狼陛下が可愛そうになって?(←勝者の余裕ってやつ?)
「違うよ、ふぅちゃん。陛下はね、ふぅちゃんが(←ここ強調)、おねーちゃんとばかり仲良くするからヤキモチ妬いたんだよ?」
フォローをしてあげたあたし。で・す・がっ!!
「ふぅちゃんはおねーちゃんの! だから仲良くしていいの!」
ちゅどーーーーーーん!!!
な・ん・で・す・とぉーーーっ! 「あたしはアナタのもの」発言キマシターーーっっ!!
アタシの腰に回した腕をさらにギュッとして。うるるんっとした濃い茶の瞳で見上げて。
あまりの可愛さの破壊力に、えぇ、もう糸がプチッと切れましたよ。
「なんって可愛いんだっ! 絶対嫁にはやらーん!」
はい、思わず出ました親父発言。
飼い主さんがちゃんとご自分を上位者として認識されていれば大丈夫ですが、そうでない方が食事中のワンコに手を出すと噛まれる恐れがあります。ご注意ください。
狐侍従のイメージは(安易ですが)、幽●白書の蔵●さんでお願いします。