05 実は犬嫌いなコでした
我が家のワンコの体験を基に書いた内容となっております。
もちろん個体差がありますので、必ずこうなるものではないとご了承ください。
あたしが居間のジャンボクッション――獣姿になった時のためか、置いてあるのは椅子じゃなくクッションだしテーブルも座卓の高さである――に座った途端に、腰に腕を回してしがみついてくるふぅちゃん。頭をなでなでしてやると、嬉しそうに目を細める。
くぅ~っ、今日も可愛いじゃないか!
それにまた、この髪の手触りがね~。
髪型がストレートなもんだからサラッとしてるのかなと思いきや、わんこ姿の頭を撫でた時のような微モフッとした手触り。……もしかしてダブルコートかい?ってな触り心地ですよ、旦那っ!!(←いや、ホントに誰ってワケじゃないけど。)
腸の弱いふぅちゃんのために作った茹でた鳥肉を冷めやすいように裂いてやりながらチラリと横目で見れば、お向かいのクッション(←この世界では“椅子”と呼ぶべきか?)に座っているのは若き国王のヴァルスロット陛下(←狼陛下のこと)。
だからさ、あんたの愛しいふぅちゃん――色が云々というよりホントに一目惚れらしい――があたしにベッタリなのが気に入らないのは分かるけど、そんな態度だといつまで経ってもふぅちゃんは懐かないよ? ……と心の中でだけご忠告。
何を隠そう、うちのふぅちゃんは犬嫌い。
秋田犬という日本犬で唯一の大型犬種のふぅちゃん。生後2ヶ月でうちに来てすぐと、さらに1月後の予防接種を終え、外にお散歩に出せるようになった時には、か~な~り、大きかった。もう、そこいらの小型犬を見下ろすくらいに。
んでもって、数年前のブームもあって、そんな小型犬ばかりだったご町内。可哀想なふぅちゃんは、遊びたいやんちゃ盛りだというのに、チワワには吠えたてられ、ミニチュアダックスフンドには唸られ、コーギーには避けられ、シェルティには無視され……散歩途中で会う犬たちに悉く遊んでもらえなかった。
あたしが遊んでやるって言ったって、タオルの引っ張りあいやボール投げが精一杯。(ちなみにボールは“取ってこい”ではなく“くわえて逃げる”だし、実はフリスビーも教えようとしたがバキバキに噛み砕くのであきらめた。)
――こうした結果、ふぅちゃんは7ヶ月くらいになった頃には、犬同士の遊び方を知らない、何より犬に遊んでもらおうとしない、犬嫌いのわんこになってしまったのである。
さらに更に。
和犬好きな方はご承知の通り、洋犬に比べて“飼い主への忠節心が強い”という特性も相まって。
今のふぅちゃんはすっかり“他人(犬含む)にツン、身内にデレ”という変形ツンデレなおぜうさん。(小さい頃からかまってもらったご近所さんには友好的態度を示すが、デレまでいかないのが飼い主にとってはまた心憎いっ!)
そんなふぅちゃんにとってはこのあたしが唯一の“群れ”の仲間で、且つリーダー(←権勢症候群にならないよう頑張ったさね)。
そんなあたしにケンカを売るということは、ふぅちゃんにケンカを売っているということで。逆に言えば、ふぅちゃんを射止めたかったらまずあたしを懐柔しなければならないのだが。
――気づいてないんだろうねぇ、この狼陛下は。(こっちでも“ナントカは盲目”って表現があるのかね?)