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03 ウチのコが一番可愛いものです


 ……いや、周りの皆さんも獣耳の人の姿だから、お約束っちゃお約束なんだろうけど。

 飼い主としちゃどうしたもんかいね? モフモフ可愛いふぅちゃん返せって抗議すべき?


 とりあえず、この(おぜうさん)姿で四つん這いはマズイ気がしたので、ドッコイショと起こして座らせてから呼びかけてみた。

「え~、ふぅちゃん?」

 ふぅちゃんはいつものように「なぁに?」ってな感じにこっちを見上げる。


 年の頃は11、2歳くらい。顎よりちょい下で切りそろえた、内側から仄かに輝きを放つ純白の髪と、その上にちょんとのってる秋田犬の耳。肌も白くて――青白いとかじゃなくて透明感のある白よ――唇は艶のある桜色。左右対称の顔の半分くらいあるんじゃないかってくらいパッチリした、黒目がちな茶色い目がウルルンとしてあたしを見上げている。


 か……っ可愛い。


 ちなみに格好は白地に要所に赤を使った着物のような服を着ている(素っ裸じゃなくて良かったよ)。穴が開いてるのかお尻のとこからはクルンと巻いたふさふさの尻尾が出ている。


 なにこれかーわーいーいー!! 

 顔立ちも可愛いし格好も可愛いしあどけないサマも全部ぜーんぶっ! 可愛いじゃないのさっ!!


 さすがうちのふぅちゃん! ご近所さんからも「美犬(びじん)になるわねぇ」とか「きっともてて困るわよぉ」とか言われてたけど、今でこんだけ可愛くて綺麗なんだから、成犬(せいじん)したら美犬びじんでモテモテよっ!!

 こんな可愛いコでおかーさん(←いつもはおねーちゃんだけど)嬉しいわぁ。


 だーきーつーきーたーいー……という衝動を抑え、きょとんとしたままのふぅちゃんの両手をそっと取る。

 うっ、爪もピンクで可愛い。どこまで完璧なんだい、この子ったらっ!(←親バカじゃないやい。)


「ほぉら、ふうちゃん。おねーちゃんと一緒♪」

 軽く上下に振ってやる。

「おねーちゃんと、いっしょ?」

「そうそう、見てごらん、今のふぅちゃんはおねーちゃんと一緒だよ?」

 声も可愛けりゃ、ちょい舌っ足らずな言い方もかーわーいーいー(←繰り返すが親バカじゃない)。心の中で悶えながら、まだ自分の“変身”に気づいてないふぅちゃんに教える。

 そこで初めて、あたしに握られている手=自分ふぅちゃんの手=人間の手になっていることに気づいたふぅちゃん。じっと、まじまじと、不思議そうに見て。それからそっとあたしから手を離して握ったり開いたりして。

「おねーちゃんといっしょ」

 にこっと笑った。


 うおぉう、なんですかこの可愛さは。おねーさんマジで鼻血噴くかと思いましたよ。

 理性が蜘蛛の糸よりも細くなってプッチン切れて抱き締めそうになったその時。


「“白の姫”とその……付き人よ、もう良いだろうか」

 何かを堪えたような抑えた声が割って入った。

 おや、狼陛下ったら空瓶握った腕に血管浮いてますよ。握りつぶすおつもりかな?


 ………そーいやすっかり忘れてたケド、外野さんがいっぱい居るんだった。(“付き人”ってあたしのことなんだろうけど、何て言おうか迷ったんだろうな、あの間は。)

 たちまちほのぼの感が消え失せ、ふぅちゃんも警戒モードに戻ってあたしに身を寄せる。

 えーっと……。


「この子が落ち着かないみたいなんで、静かにお話できるトコに移りませんか?」


 ここは大人なあたしがご提案させていただきました。


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