01 ぼんやり散歩は危険でした
1:少なくとも“あたし”について糖度はほぼゼロです。
2:使い古された設定かもしれませんが、内容は純粋に作者の逃避心あふれる妄想の結果となっております。
3:作品全体を通じて、主観及び個人的経験を基にした記述が多いです。
どうぞご注意ください。
9月の土曜の午後6時すぎ。
いつものように散歩に出て、いつものコースを歩く。
いつもと変わらない日常のはずだったのに。
朝晩涼しくなったよね~とか。過ごしやすくなってきたのはいいけど、この季節って短いんだよね~とか。
他に人や車の通りが無いのを良いことに、ここ数年の初春や初秋に定番になったことを思いながらぼんやり歩いていたのが悪かったのか。
右手首にぐいっと引っ張られる力を感じてそちらを見れば、視線の先にはぽっかりと開いた真っ黒い“穴”。
マンホールの蓋が外れてる? とっさに思ったものの、すぐに打ち消した。
だって、よく見りゃ電信柱と地面にまたがって開いてんだもの(←んなマンホール無い無い)。
そんなヒラメキ&ツッコミの間も引っ張る力は弱まることなく続き。
いえね、一応踏ん張りましたよ。踏ん張ったんですけどね、いかんせん綱引きのスキルを持ってないあたしにゃ無理でした。(右腕も痛かったし。)
最後はスポーンと穴に吸い込まれました。
「・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」
ざわめきで気がついた。どうやら少し気を失っていたよう。
――あたしでも気絶ってするんだわ~なんて、ちょっと感動。いや、自分にそんな可愛げがあるなんて、これっぽっちも思ってなかったんで。え、別問題?
「・・・・・・・・・・」
なんか固い床の上に突っ伏しているみたいである。とりあえずセルフチェーック!
……引っ張られた右手首がちょっと疼くくらい。他に痛むところはなし。
と確認してみたところでゆっくりと起き上がってみる。いきなり立ち上がって立ち眩みおこしちゃマズイから、まだ座り込んだままね。
「・・・なんと・・・・」
「・・・・・・では・・・」
うわぁお。
真っ先に視界に入ったのは、3mくらい離れて取り囲むように立つ人・ひと・ヒト。
しかもアレですよ、奥さん!(いや、特に誰ってわけじゃないケド。)
皆さんファンタジー(貫頭衣ってやつ?)系な衣装に、頭の上には獣耳ですよ!!
形は三角尖ったのから丸いのまで、大小&色は様々なケ・モ・ノ・ミ・ミ!!
でもって、人壁の向こうの石造りな壁の窓の向こうには、昇ったばかりなのか、おっきな青銀の月と小さな白い月。
あたしが煩悩獣萌え~な夢をみているんじゃなけりゃ、アレですか? トリップってやつですか?
右手首もまだ痛むし、やっぱこれって現実よねぇ。――え、あたしってば余裕すぎ?
ふっふっふ。アダルトチルドレン現役だった兄&姉を持ったおかげで、気がつけば“ライトノベル”なんて言葉ができる前からの初期作品が身近にあったこのあたし。召還・トリップ物なんて、これまで飽きるほど読みましたよっ!! (もちろん、リアルに起きるなんてコレっぽっちも思っちゃなかったケド。今でも読んでるケド。)
「白く麗しい・・・」
「・・・力に満ちている・・・」
――と、そこでハタと気づく。
ところでコレって召還? それとも落ち系トリップ?
ちょっと距離のあるところで踏ん張ったのに引き込まれたんだから落ち系とは思えないけれど。でも、「召還の儀式してましたー」なんて雰囲気でもないのよね、なんか。
そう、敢えて言うなら「集会やってたら急に部屋の中に(知らない&奇妙な格好の)人が出て来て遠巻きに見てる」みたいな?
ま、単なるハプニングじゃなけりゃ、何かしらここに来た意味ってあるんだろうし――勇者? 神子? それとも今流行りの魔王? 嫁ってことは無いと思うけど(年齢的に←痛!)。生け贄とかは却下ね(もしコレだったら速攻逃げる)。それとも……。
「ようこそ、我らがケンロウ国へ」
年の頃は20代後半の、一際背の高い男が進み出た。野生味の強い整った顔立ちに、後ろを長めに伸ばしたウルフカットの銀髪の上にピンと立つ三角の耳は――狼耳?
着ている服もさりげなく上等そうだし、こりゃテンプレの“若き王”ってヤツかいね?
あたしの観察対象のその男は、右手を胸に当て片膝をつくと、
「一同、心より歓迎申し上げます。姫」
左手を、あたしの右側へと伸ばした。
その手の先を見れば、そこにはあたしと一緒に散歩に出ていた、愛犬の風花号(白の秋田犬、雌、生後11ヶ月)。
本命はそっちかいっ!!
………あたし、橘奏、(人類、女、アラサー)。
飼い犬のおまけで、異世界トリップしたようです。
すみません、やっちゃいました。
書きかけの短編数編ぶっちぎっての連載投稿でございます。
ラブ(ほぼ)ゼロの数編で終わる予定です。
お暇つぶしでご覧いただければ幸いに存じます。