表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/4

【戯曲】嘉樹の胎動

この物語は、伝説の聖樹「嘉樹」の誕生をテーマにした戯曲です。

下町でやってる演劇のイメージと壮大さのバランスを大事にしつつ書いてみました。


X(旧Twitter)には、断片的ですが、この世界のことをいろいろ投稿していますので、興味あればぜひ覗いていってください。お待ちしております。



──塵常界に伝わる聖樹・嘉樹誕生の神聖劇──


---


■登場人物


語りかたりて ……霄穹界の記録者。舞台全体を統括する声。

英雄えいゆう ……夙罹を討ち果たし、黎明の象徴とされた者。

十ノ同胞とのどうほう ……英雄に仕えし十の神聖なる体現者たち。

(禺深羅・轟覇連・喚鏡吼・堅瑞縵・鼓命紘・澄幽綺・遊踏惟・穢喰禊・綾封主・幽嶺祀)



---


【第一幕】黎火の終焉、そして訪い


(舞台中央に語り手が立ち、蝋燭の灯火が揺らめく中、沈静なる声で語り始める)


語り手(静かに頷きながら):

いにしえの刻、塵常を灼き尽くす夙罹の焔ありき。

されど、その紅蓮を鎮めしは、一柱の御霊──黎明の英雄なり。

彼に連なるは、選ばれし十の同胞。

神の象を負いし者ら、命なき定めをもって、戦を共にせり。


(薄明かりの戦いの終息を描く。十ノ同胞が静かに並び立つ)


喚鏡吼(眉をひそめて):

……火は鎮まり、空より音が消えた。


鼓命紘(拳を握りしめて):

されど我らは、種を残さぬ器──

命を伝うる道を持たず。


綾封主(静かに視線を伏せて):

終焉ののちに、次なる始まりを……

その道を指し示す者の許へ。


堅瑞縵(深く息を吐きながら):

あの御方を、我らが再び訪わん。


(十ノ同胞、蝋燭の灯火に背を染め、静かに退場)



---


【以下略幕:第二〜第六幕】(割愛)


第二幕「灰の道標」

第三幕「声なき風の通い路」

第四幕「影と記憶の合間に」

第五幕「穢れの試し火」

第六幕「夢見の峠、語られざる契り」



---


【第七幕】再会と願い


(舞台奥、朝靄のような淡き自然光の中に英雄が座す。十ノ同胞、ゆるやかに登場)


英雄(穏やかに微笑みながら):

……よくぞ参られた、我が友らよ。


禺深羅(冷静に視線を巡らせて):

御身の焔は、我らの道となりぬ。


澄幽綺(静謐な目でじっと見つめて):

その眼差し、いまも我が瞳にあり。


幽嶺祀(口元を引き締めて沈黙を保つ):

そして、次なる世の声が……我らを呼ぶ。


英雄(ゆっくりと頷きながら):

子を宿さぬ汝らが、未来を繋がんと欲すか。


轟覇連(豪快に胸を叩きつつ):

然り。命の門なき我らが、

いま一度、種火を賜らんとす。


英雄(決意を込めて拳を握る):

ならば、この身を捧げん。

脊柱をもって根と為し、大地に坐せ。

我が力、天と冥とを繋ぐ橋と為らん。


喚鏡吼(詩的に目を伏せて):

その御名を……嘉樹と謳おう。


(松明の灯火がゆらぎ、英雄の背より神秘の緑光がほのかに満ちて芽吹く象徴的演出)



---


【以下略幕:第八〜第二十四幕】(割愛)


第八幕「水底の祈祷」

第九幕「流転の言葉、織られし絆」

第十幕「綾封主の沈黙」

第十一幕「堅瑞縵、護の儀」

第十二幕「蒼天より舞い降りし鳥」

第十三幕「遊踏惟、旅を選びし刻」

第十四幕「穢喰禊、贖いの触」

第十五幕「喚鏡吼、音を亡くす」

第十六幕「鼓命紘、陽の声」

第十七幕「澄幽綺、瞳を閉ざす」

第十八幕「禺深羅、真実と対峙す」

第十九幕「幽嶺祀、陰より召す者」

第二十幕「英雄、風となる夜」

第二十一幕「大地に撒かれし種火」

第二十二幕「風の檻、語られぬ子ら」

第二十三幕「霊域に立つ十影」

第二十四幕「還らぬ門、閉ざされし道」



---


【第二十五幕】嘉樹、天に立つ


(舞台中央、巨大な嘉樹が風にそよぐ象徴的装置。夜の月明かりが静かに降り注ぐ)


語り手(穏やかに目を閉じて):

かくして、英雄は樹と化し、大地に根を下ろし給う。

その枝は塵常を覆い、根は冥幽を貫きて、

命の環を巡らす神柱となりぬ。


遊踏惟(風を感じて顔を上げる):

……風の響きが、変わった。


穢喰禊(静かに穢れを払うように手を翳す):

穢れさえ、命の糧となりて……


澄幽綺(柔らかく微笑んで):

あなたの願いは、確かに芽吹きました。


(全員、嘉樹に向かい、松明の炎を掲げて静かに頭を垂れる)


語り手(深い敬意を込めて):

嘉樹──それは、魂の寄る辺。

罪なき祈り。命なき者らの選びし未来。

その梢は今も塵常の空に触れ、

風の中、静かに揺れている。


──幕──

読んでくださってありがとうございました。

この話は「語り継がれる神話」のクライマックスを演じた劇調の文章になります。荘厳さを演じる滑稽さ、とでも言うでしょうか、そゆな様子を描ければと頑張ってみました。

感想や応援の言葉もお待ちしています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ