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ひとりぼっちの最終防衛線(ラストライン)  作者: 輝夜
第四章 ルナ・サクヤの揺りかご

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第五話:神の設計図と凡人たちの期待


ルナ・サクヤによる「ファンタジーゾーン」構想の発表は、世界に新たな衝撃と、そして奇妙な興奮をもたらした。

安全な「オアシス」の外側に、未知なる冒険と、莫大な富が眠るかもしれないフロンティアが生まれる――そのニュースは、復興作業に追われる人々の日常に、新たな「夢」と「目標」を与えたのだ。

まだ見ぬ世界への扉が、神の手によって開かれようとしている。その事実は、人々の心を強く揺さぶった。


もちろん、誰もがその計画を歓迎したわけではない。

「これ以上の危険はごめんだ!」「神は我々をモルモットにするつもりか!」

オアシス内の集会所では、そんな不安や反発の声も上がった。しかし、それ以上に、「このままではジリ貧だ」「新しい可能性に賭けてみたい」という声が、次第に大きくなっていった。


各国政府、そして小野寺拓海率いる「対ルナ・サクヤ専門渉外局(通称:神様のご機嫌取り部署)」は、この新たな「神託」に対応するため、再び奔走を始めた。

彼らは、来るべき「ファンタジーゾーン」の開門に備え、挑戦者を募り、彼らを支援するための組織――「冒険者ギルド」の設立を急いだ。

そして、そのギルドの設立準備委員会に、真っ先に名乗りを上げた者たちがいた。


オアシス・トーキョー(仮称)に新設されたギルドの仮設支部。その掲示板に張り出された「冒険者募集(準備段階)」の告知の前で、一人の男が腕を組んで唸っていた。

「へっ、面白えじゃねえか! 新しい『獲物』がうじゃうじゃいる世界が、もうすぐできるんだろ? 上等だ!」

かつて「ワイルドハント」のリーダーだったケンジは、有り余る力を振るう新たな場所が見つかるかもしれないという期待に、武者震いをしていた。彼は、復興作業で重機よりも正確に瓦礫を撤去する「解体のケン」として名を馳せていたが、その心は満たされていなかった。彼のような、高い戦闘能力を持ちながらも、平穏な日常に馴染めずにいた能力者たちにとって、ファンタジーゾーンはまさに天国のような場所に思えた。


「…もし、その新しい世界に、未知の薬草が生えるというのなら…。それが本当に人々の傷を癒やす力を持つのであれば、私は、危険を冒してでも、それを手に入れる準備をしなければなりません」

オアシス・パリ(仮称)の小さな診療所で、聖女ソフィアもまた、静かな決意を固めていた。彼女は、癒やしの力を持つ仲間たちと共に、「ヒーラー部隊」を結成し、ファンタジーゾーン開門の日に備えることを決めた。彼女の診療所の棚には、ルナから送られた「異世界の薬草図鑑(基礎編)」のデータが、大切に保管されている。


建築家の天野陽菜は、オアシス・シカゴ(仮称)の設計ラボで、ルナ・サクヤから提供された「ファンタジーゾーンに存在するかもしれない鉱物資源」の理論データに目を輝かせていた。

「…信じられない。この『オリハルコン』の理論上の強度は、チタン合金の数百倍…! もし、本当にそんな素材が手に入るなら、私たちは、もっと強く、もっと美しい、天を突くような未来都市を創ることができる…!」

彼女は、ギルドと連携し、新素材の研究開発チームを立ち上げた。彼女の夢は、もはや単なる復興ではなく、人類の新たな進化へと向かっていた。


人々は、まだ見ぬフロンティアに思いを馳せ、それぞれの立場で、その「始まりの日」に向けた準備を開始した。

それは、ルナ・サクヤが意図した通り、人類社会に新たな「活性化」をもたらし、停滞しかけていた復興の槌音を、再び力強く響かせるきっかけとなったのだ。

神の設計図は、まだその全貌を現してはいない。だが、そのほんの断片が、すでに人々の心を捉え、未来への大きな期待を抱かせている。

その全てを、ルナは神域で、楽しげに見守っていた。

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