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ひとりぼっちの最終防衛線(ラストライン)  作者: 輝夜
第四章 ルナ・サクヤの揺りかご

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第四話:神の庭園、その始まり


オアシス間の交流が活発化し、人類の復興がようやく軌道に乗り始めた頃。

ルナ・サクヤは、神域で、新たな「課題」に直面していた。

それは、「亜」の侵攻によって地球上に残された、広大な「空白地」の存在だった。そこは、生命の気配が失われ、そして何よりも、次元の「歪み」が、まるで傷跡のように深く刻まれている、危険な領域だった。


「ねえシロ、この『歪み』、放置しておくとどうなるの? 具体的なシミュレーション結果を見せて」

『…予測困難ですが、最悪の場合、次元の裂け目から、未知の、あるいは制御不能なエネルギー体が漏れ出す可能性があります。かつての「亜」の残渣が、再び活性化する危険性も否定できません。最も可能性の高いシナリオでは、30年以内に地球全体のエネルギーバランスが崩壊します』

システムの冷静な分析に、ルナは小さくため息をついた。

(…やっぱり、ただの更地にしておくわけにはいかないわね。この厄介な『歪み』のエネルギーを、何とかして無害化、あるいは…有効活用する方法はないものかしら)


彼女の並列思考が、猛烈な速度で回転を始める。

「システム」の広大な情報ネットワークから、様々な星々の環境再生データや、エネルギー変換理論を検索し、それらを地球の状況と照らし合わせていく。彼女の目の前のホログラムには、無数の数式とシミュレーションモデルが、万華鏡のように明滅した。

「この星系の『マナ循環システム』は面白いわね…でも、地球の物理法則とは相性が悪いか…」

「こっちの星の『エーテル変換触媒』は…コストパフォーマンスが悪すぎるわね、却下」


そして、彼女は一つの、あまりにも大胆で、そして彼女らしい「解決策」に辿り着いた。

(……そうだわ。この『歪み』のエネルギーを、そのまま新しい『生命』の源泉にしてしまえばいいのよ。ただし、それは人間とは異なる、もっと…『刺激的』な生命体。そして、その生命体が活動することで、歪みのエネルギーは消費・安定化され、同時に、そこから得られる『素材』や『資源』は、人類の新たな発展の糧となる。完璧じゃない! 一石二鳥どころか三鳥よ!)


彼女の脳裏に、新たな「地球デザイン」の設計図が浮かび上がった。

オアシスという安全な「揺りかご」の外側に、広大で、危険で、しかし魅力的なフロンティア――「ファンタジーゾーン」を創造するという計画。

それは、地球の恒久的な安定化のための、極めて合理的な処置であり、最高の舞台設定でもあった。


「小野寺さん、ちょっといいかしら」

再び、小野寺拓海の元に、神からの「お呼び出し」がかかった。

今度は、草原のテラスカフェだった。

「…ファンタジーゾーン、ですか?」

ルナから計画の概要を聞かされた小野寺は、美味しいケーキを前にしながらも、そのあまりの突飛さに言葉を失った。芸術的なモンブランが、喉を通らない。

「そう。これは、私達にとって、新たな『試練』であり、そして『機会』よ」

ルナは、穏やかに、しかし有無を言わせぬ口調で言った。

「オアシスの安全は、私が絶対に保証するわ。でも、その外に広がる新しい世界で、皆がどう生き、何を得るかは、自分自身の力と勇気次第。私は、そのための『舞台』を用意してあげるだけ」

その言葉には、人類の自立を促す、厳しい、しかしどこか温かい期待が込められていた。

小野寺は、この気まぐれな神が、ただ人類を救うだけでなく、その先の「成長」までも見据えていることを知り、改めてその計り知れない器の大きさに、畏敬の念を抱くのだった。そして、この美味しいモンブランをどうやって再現するかという、新たな悩みの種も。

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