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ひとりぼっちの最終防衛線(ラストライン)  作者: 輝夜
【Side Story:霧島怜編】一番星のレイ
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其の六:初めての街と美味しい朝ごはん


(うん、やっぱりフィリアちゃんは落ち着くなぁ)


まるで、大きなアライグマのぬいぐるみにくっついているような気分だ。

フィリアちゃんが歩くのに合わせて、私は彼女の頭の上にしがみついたまま、改めて彼女の防具を観察した。

(うわ……)

その防具の内側、特に手や足の関節部分、そして胴体の内張りと思える場所に、いくつもの小さな魔法陣のようなものがびっしりと描かれているのが「視えた」。そして、その一つ一つに、昨日までの私と同じような、自我の薄い低級精霊?たちが、ぎゅうぎゅうに「詰め込まれて」いるのだ。

彼らは苦しんでいる様子こそないものの、ただひたすらに力を吸い上げられ、防具の性能を高めるための「部品」として利用されている。まるで、無数の小さな電池が直列に繋がれているかのように。

(あそこには……絶対に入りたくない……)


そうこうしているうちに、三人は一軒の食堂に入っていった。朝食の時間らしい。


「おばちゃん、いつもの三つね!」

リズが慣れた様子で注文すると、愛想の良い女主人が「あいよ!」と元気よく返事をした。

すぐに、焼きたてのパンとベーコンエッグ、そして温かいスープが運ばれてくる。

湯気が立ち上り、香ばしい匂いが食欲をそそる。……いや、私には食欲という概念はないけれど、霧島怜だった頃の記憶が、なんだかお腹が空いたような気分にさせる。


フィリアちゃんは「いただきまーす!」と元気よく手を合わせ、早速パンにかじりついた。

その瞬間、パンからふわりと、ごく微量の、しかし凝縮された「生命力」のようなものが立ち上るのが感じられた。

焼きたての小麦、新鮮な卵、燻製された肉……それらが持つ、微かなエネルギー。


(……ちょっとだけ、味見してみようかな)


私はフィリアちゃんの肩のあたりに移動し、彼女が口に運ぼうとしているパンから、ほんの少しだけ、エネルギーをちゅるん、と吸い取ってみた。

フィリアちゃんは気づいた様子はなく、美味しそうにパンを頬張っている。

うん、ほんのり甘くて、香ばしい「風味」がする。植物とはまた違った、なんだか優しい味わいだ。

調子に乗って、ベーコンからもひと吸い。卵からもひと吸い。

もちろん、料理の味が変わるほど大量に吸い取るつもりはない。本当に、ごくごく微量。

それでも、なんだか霧島怜だった頃の「朝食を食べている」感覚が蘇ってきて、少し楽しい気分になった。

(ふふ、役得役得)


三人が食事を終え、満足そうに店を出る。

「さて、それじゃあギルドに行きますか!」

ミラがそう言うと、リズとアリアも頷いた。

どうやら、冒険者ギルドに依頼を受けに行くか、報告に行くか、そんなところだろう。

ファンタジー世界の定番だ。


(ギルドかぁ。情報収集にはもってこいかも)


私は再びアリアちゃんの頭の上にしがみつき、三人についていく。

どんな情報が得られるか、そして、どんな「美味しい」エネルギー源が見つかるか。

少しだけ、ワクワクしてきた。


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