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ひとりぼっちの最終防衛線(ラストライン)  作者: 輝夜
【Side Story:霧島怜編】一番星のレイ
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其の八:森の冒険はジェットコースター?!


はぐれないように、見失わないように、私はルンルンしながら、しっかりとフィリアちゃんの頭の上に陣取った。ここ、取った〜♪ここ、私の場所っ。

そして、私のこの新しい「移動能力」も、うまく使えばかなり便利そうだ。ドジな私でも、これなら安心(?)。逃がしてなるものかっ!


ギルドで新しい依頼を受けたらしい三人は、早速街の外へと向かい始めた。

どうやら、近くの森に出没するようになった少し厄介な魔物の討伐依頼のようだ。

私は相変わらずフィリアちゃんの頭の上(アライグマの耳のあたりが定位置になりつつある。ここは、私の場所だ。私が決めた。)にしがみつき、彼女たちの冒険に同行する。


森の中に入ると、フィリアちゃんたちはさすがAランクパーティーと言うべきか、見事な連携で魔物を狩っていく。

リズが罠を仕掛け、斥候として先行し、ミラの魔法が的確に敵の動きを止め、そこへフィリアちゃんがアライグマ防具のパワーを活かした突撃でとどめを刺す。

その戦いぶりは、見ていて惚れ惚れするほどだ。

私はというと、フィリアちゃんの頭の上でその様子を特等席で、あわあわ、うひょ~しながら、観戦(?)している。特等席である。

たまに、フィリアちゃんが大きくジャンプしたり、勢いよく駆け抜けたりすると、振り落とされないように必死にしがみつくのが、大変なくらいだ。あ、いや、正確に言おう。楽しいくらいだ。


(おおー、今の連携、かっこよかったなぁ。……ん? あれはなんだろう?)


戦闘が一区切りついた時、ふと森の奥の方に、キラキラと光る何かが見えた。

太陽の光を反射しているようだ。水面だろうか?

好奇心がむくむくと湧き上がってくる。

(ちょっとだけ、見に行ってみようっと)

私はそっとフィリアちゃんの頭から離れ、キラキラ光る方へと漂っていった。


木々の間を抜けると、そこには息をのむほど美しい、小さな湖が広がっていた。

透明度の高い水面が太陽の光を浴びて、まるで宝石のように輝いている。

(きゃはっ!)

そして何より、この場所には、濃密で清浄な「妖精パワー(仮)」とでも言うべきエネルギーが満ち溢れていた。

(うひょ〜!……ここ、すごい……!)


私は夢中になって、そのエネルギーを全身(という意識体)で吸収し始めた。

自分の存在が、よりはっきりと、より強く凝縮されていくのを感じる。

(むっはぁ〜〜〜〜、うふふ〜〜〜♪るんるる〜〜♪)

どれくらいそうしていただろうか。

存在力が上がったのだろうか?自分の認識を人としての形(とても小さい。これは...私は妖精になったのかも♪)として、認識できるようになって来た。


【ドラゴニア・クロニクル、鉄の街近郊の森・上空】


上空からルナ・エコーの監視チームが、今日もまた懸命な捜索を続けていた。

『…ダメだわ。このあたりも、エネルギー濃度が高すぎて、お姉さんの魂を見つけるなんて無理だわ…』

リーダー格のルナ・エコー7号が、苛立たしげに呟く。

その時、チームの一員であるルナ・エコー12号が、歓喜の声を上げた。

『隊長! 発見しました! 極めて微弱ですが、お姉さま固有の魂のパターンを、森の奥に感知しました!』

『なんですって!?』

『え?どこどこ?』

『こっちこっち! 湖のほとりよ! 急いで!』

全監視チームの意識が、一斉にその座標へと集中する。ホログラムマップ上に、小さな、しかし確かに輝く光点が現れた。


『間違いないわ…! お姉さんよ! 絶対に逃がさない…!』

ルナ・エコー7号は、全ユニットに最大戦速での接近を命じた。


【森の湖畔】


ふと、フィリアちゃんたちの顔が、思い浮かんだ。

(あっ!!! しまった! また見失っちゃったかも?!)


慌てて周囲を見回すが、もちろん彼女たちの姿はない。

またやってしまった! 私のドジ! なんとかして、「私の場所」に、戻らなければっ!

(フィリアちゃーん! どこかなー?!)

心の中で叫びながら、発見した「移動能力」を発動させようとする。

フィリアちゃんたちの気配、彼女たちの姿を強くイメージする。

すると、再び意識の中にビジョンが浮かんだ。三人は、湖とは反対方向の、少し開けた場所で休憩を取っていたようだ。

(待っててー!)

私が一瞬でその場所へと移動した、まさにその直後。


バシュンッ!という、微かな空間の歪みを伴って、ルナ・エコーの監視チームが、私がついさっきまでいた湖畔の空間に現れた。


『……いない!?』

『反応が…消えました! ほんの一瞬前まで、確かにここに…!』

『くっ…! また見失ったというの!? この、お転婆なお姉さんめ…!』

ルナ・エコー7号は、悔しそうに拳を握りしめた。彼女たちは、あと一歩のところで、またしても「お姉さん」を取り逃がしてしまったのだ。


【森の開けた場所】


私は、そんなニアミスがあったことなど露知らず、何食わぬ顔で、フィリアちゃんのお尻に「ひしっ!」としがみついていた。

「ん? なんか……気のせいかな?」

フィリアちゃんが不思議そうにくるくる回っていたが、もちろん何も変わったものはなく、首を傾げている。


(セーフ! セーフ!)


お尻にしがみつきながら、よっしゃ〜ってガッツポーズ。

パワーアップできたけど、やっぱりこの子たちと一緒にいる方が断然楽しいに違いない。

それに、「移動能力」があれば、多少フラフラしても何とかなりそうだという自信もついた。


(さて、次はどんな冒険が待ってるのかな?)


フィリアちゃんは立ち上がり、リズとミラに声をかける。

「よし、休憩終わり! 次のポイントへ行こう!」

「了解!」

「ええ、気を引き締めていきましょう」


私はフィリアちゃんの頭の上に乗り直して、ふふん、と少し得意げな気分になりながら、次なる目的地へと運ばれていくのだった。

うん、やっぱり冒険って楽しいねぇ! (私が戦ってるわけじゃないけど!)

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