表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ひとりぼっちの最終防衛線(ラストライン)  作者: 輝夜
【Side Story:霧島怜編】一番星のレイ
123/197

其の五:ドキドキの朝!アライグマの頭が私の指定席?


次に意識が浮上したのは、小鳥のさえずりのような軽やかな音と、部屋に差し込む朝日の気配を感じた時だった。

(ん……あさ……?)


まだ少しぼんやりとした頭で、ゆっくりと状況を把握しようとする。

そうだ、私は宿屋の空き部屋に忍び込んで、ベッドで……寝てたんだっけ。

そして、途中で誰かが……。


ハッとして、自分とぴったりと密着している温もりの正体に気づく。

目の前には、すやすやと眠る少女の顔。昨夜、私の「寝床」に潜り込んできた、あのもふもふ防具の持ち主、フィリアちゃんだ。

彼女の腕が、しっかりと私(の意識がある空間)を抱きしめている。

吐息がかかるほど近い距離に、整った寝顔がある。


(うわあああああっ?! な、なんで?!)


一瞬、パニックになりかけたが、すぐに昨夜の出来事を思い出した。

そうだ、彼女たちが部屋に戻ってきて、フィリアちゃんが私の隣で寝始めたんだった。

そして私は……無意識に彼女の温もりを求めて、そのまま一緒に……。


(……いや、でも、これ……)


改めて状況を認識すると、なんだか顔が熱くなるような感覚に襲われる。もちろん、物理的な顔なんてないのだけれど。

フィリアちゃんの寝顔は無防備で、とても可愛らしい。均一な寝息、時折もぐもぐと動く口元。

そして何より、彼女から発せられる生命エネルギーが、まるで陽だまりのように温かくて心地よい。

昨夜、あれほど消耗していた私の存在が、今はなんだかしっかりと満たされているのを感じる。

直接エネルギーを吸収したわけではないはずなのに、この安心感と充足感はなんだろう。


(……むふふ〜……)


驚きはしたが、不快感は全くない。むしろ……至福。

しばらく、その至福の時間を堪能していると、部屋の反対側のベッドで寝ていたリズとミラが、もそりと起き出す気配がした。


フィリアちゃんも、んー……と小さな声を漏らして、ゆっくりと目を開け始めた。

(よし、今のうちに……!)

私はそっと、フィリアちゃんの腕の中から、すすーっと抜け出し、部屋の隅へと移動した。


三人は手早く朝の準備を始める。

私はその様子を眺めながら、今後のことを考えた。

(……よし、決めた。しばらく、このパーティーについて行ってみよう)

幸い、私には実体がない。こっそり憑いていくことくらい、造作もない。


彼女たちが宿を出る準備を整え、部屋を出ていく。

私はすかさず、フィリアちゃんの肩の所にふわりと漂い、ついて行くことにした。


宿の受付で会計を済ませ、三人は外へと出ていく。

朝の街は活気に満ちていて、様々な人々が行き交っている。

フィリアちゃんは、昨日と同じように、あのもふもふとした防具をしっかりと身に着けていた。その姿は少し暑そうだけど、なんだか頼もしく見える。


街を歩き出すと、フィリアちゃんは時折、楽しそうにリズやミラと話しながらキョロキョロと周囲を見回している。

その動きに合わせて、私は彼女の肩のあたりにもたれかかったり、頭の上(防具の上だけど)にしがみついてみたりした。

もちろん、彼女に重さを感じさせることはない。ただ、なんとなく、そうしていると安心するのだ。


(うん、やっぱりフィリアちゃん、落ち着くわぁ)


大きなぬいぐるみにくっついているような気分だ。

この先、何が起こるかはわからないけれど、とりあえずはこの温かくて頼りになりそうな「移動手段」兼「癒やしスポット」から離れないようにしよう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ