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第88話
「久しぶりですね」
涼太の口調が硬い。敬語とため口が混ざっているのはいつものことだが、今日は特によそよそしい感じがした。
「もう来てくれないのかと思いました」
少し拗ねたようにそう言うと、涼太は顔を伏せた。
彩羽が返事をしないので、目だけで様子を伺った涼太が言葉を継ぐ。
「南さんでしょ、彩羽さんが会いに来た人。前に隣に住んでいた」
意を決したという感じで顔を上げ、涼太は続けた。
「格好いい人だよね、背も高いし。上品で、優しい話し方をする人だった」
そう言った後、涼太は大きく息を吸った。
「何があったんですか。話してください」
涼太は、黙って彩羽を見詰めた。