第四話・バレンタイン《問題編》
街中がバレンタインにそまる2月。
女の子からチョコレートをあげるイベントだが、チョコレート好きとしてはもらう側のイベントの方がよかったと思う、
私、橘 愛良。
幼馴染の横溝 匠と出かけるたびに、『何物欲しそうな顔してるの?』と意地悪く言われる始末だ。
普段売っていないようなメーカーの美味しそうなチョコがあるのをみて、食べたくないわけがない…。
しかも、あげたい相手の匠は売っているチョコに興味はない。
食べないものを貰ってもしょうがないと言って、買ってきたチョコだと受け取らないのだ。
そんなわけで、毎年苦手にもかかわらず手作りのチョコレートを作る。
買ってくれば、美味しいチョコを一緒に食べれるのにと思いつつ……。
そんなこんなで、バレンタイン当日の放課後。
私は手紙を一通持って、匠のいる教室へ向かっていた。
チョコレートはある場所に隠してある。
毎年の儀式のようにただ渡すのじゃ、面白くない。
暗号…とういより、今回はクイズに気持ちを込めつつ、正解の場所にチョコレートを置いてきたのだ。
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チョコレートのある場所を探してね!
① 図書室のミステリー小説の棚の上
② 匠の下駄箱の上
③ 音楽室のピアノの中
私の気持ちが一番こもっている場所にあるよ!
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きっと匠なら、隠し場所も、暗号にこめた想いも気づいてくれるはず…。
そう思って、匠のクラスを覗く。
「え……」
信じられない光景に、思わず固まった。
匠の周りに大勢の女子。
「はい。横溝くん、チョコレート」
「あ、あたしも持ってきたよ」
代わる代わるに綺麗に包装された、どう見てもお店で買ったチョコレートを渡す女子達。
そして……
「どうも」
それを僅かな笑みを浮かべて受け取る匠。
だ…誰からも受け取らないって言ってたのに……。
呆然と立ち尽くす。
なんだかショックだった。
居た堪れなくなって思わず走ってその場を去る。
校門まで走っていったところで、手にしていた手紙がない事に気づいた。
でも、今更とりに戻るのもなんだか恥かしい。
しばらく、悩む。
とりあえず、チョコレートだけでも回収しようと思いつき、隠し場所に向かったがそこには既にチョコレートはなかった。
直接渡すつもりだったから、宛名のない手紙…。
匠がチョコレートを持っていったはずはない。
きっと、何かがおいてあると気づいた人が……。
果てしなく落ち込みながら、私は一人とぼとぼと学校を後にした。