表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Devinette  作者: 水無月
6/20

第三話・クリスマスイヴ《解答編》

 恋人達で溢れかえっている待ち合わせ場所で、私は一人佇んでいた。

 待ち合わせの時間まであと5分。

 外は寒かったけど、なんだかわくわくしていて寒さは感じていなかった。

 と、ふわっと背後から首に何かがかけられる。

「なんでこんな寒い時に、外で待ち合わせするかな」

 匠が自分のマフラーを私に巻きながら、呆れたように呟いた。

「だって匠、こうでもしないと出かけてくれないじゃない」

「イルミネーションももう見たし、何も一番込んでる日じゃなくてもいいと思うけど?」

 もうっ、ムードがわからない奴!!

 でも、暖かい缶コーヒーをポケットから出して渡してくれる辺りが、相変わらず匠らしい素直じゃない優しさだと思う。

「暗号はすぐにわかった?」

「俺がわからないと思う?」

 不敵に微笑むと、匠はポケットから暗号を取り出す。



「ヒントの愛良の名前から察すると、文字と星の数が同じで、星にも濁点があるということは、『☆』=『ひらがな』。

 星の頂点が5つ、中の数字は10までって事は、

 数字が『あかさたな』って横の列、

 頂点の塗られた場所が『あいうえお』って縦の列。

 で、あいらの『あい』の星が右回りに塗られてるって事は、一番上から右回りが順番。


 で、それを元に訳すと、「こうえんのつりー、ろくじ」 だろ?」



「ご名答!」

 必死に考えた暗号がものの見事に解かれて、悔しいような嬉しいような微妙な気分だ。

「ま、愛良のわりに、よく考えたよ」

 小ばかにしているようにも聞こえるが、匠なりに褒めてくれているのがわかってちょっと嬉しくなる。

「匠のために、必死に考えたもの」

「そりゃ、どうも」

 ふっと笑うと、匠は踵を返した。

「じゃ、帰るか」

「えーーー!!ここのツリーはこれからがいいんじゃない!!」

 さっさと帰ろうとする匠の袖を思わず掴む。

 この公園のツリーはクリスマスイヴにのみ行なわれるイベントがあった。

 イルミネーションや飾りはだいぶ前から飾られているが、今日は特別。

 オーナメントに綺麗な小さな宝石箱が飾り付けられる。

 イルミネーションが点灯すると、その箱に飾られた宝石がキラキラ輝いてよりいっそう綺麗なのだ。

 その点灯の時刻がもう少し…。

「もうちょっとでいいから、いよーよ」

「しかたないな。愛良がそう言うなら」

 そう言って、匠はちょうどあいたベンチに腰掛ける。

「しかしよく考えるよな、こんなイベント」

「素敵じゃない!憧れちゃうけどな」

 実はその宝石箱、中にプレゼントが入れられるのだ。

 抽選で選ばれるとその宝石箱の中にプレゼントが入れられて、その箱に飾られた宝石と同じ宝石がついたキーがもらえる。

 柄の部分がツリーになっていて、その先端に宝石がついているのだ。

 恋人へのプレゼントをそこに入れて、鍵を恋人にわたし、オーナメントの中から同じ宝石がついた鍵のかかった小箱を見つける。

 それが、このイベントだった。

 だから、当日は傍に入れるのはその鍵をもった人のみ。

 わたし達みたいなのは、遠くから眺めるだけ。

「寒いのに、みんなよくやるよ」

 呆れたように呟きながら、周囲にいる恋人達を眺める匠。

 ほんっとにミステリー以外興味が無いんだから…。



「あ…!」

 時間になったのか、光が燈っていなかったツリーが輝きだす。

「確かに…いつもより綺麗かもな」

 感心したように呟く匠。

 宝石箱がキラキラと輝いて、幻想的な美しさだ。

 鍵を持った恋人達が次々とツリーの傍に行き、楽しそうに宝石箱を探している。

 羨ましいけど…でも、今年は一緒に見にこれただけいいかな?

 しばらく、二人でクリスマスツリーを眺める。



「さ、寒くなってきたし帰ろうか?家にご馳走用意してきたんだ」

 私がそう言って立ち上がろうとすると、匠は口元にちょっと笑みを浮かべた。

「じゃ、その前に手、出して」

「?」

 首をかしげながら手を出すと、匠はずっとポケットに入れていた手を出す。

 そして、私の手の上でそれを開くと何かが私の手に落ちてきた。

「…あ!?」

 そこにあったのは、ツリーをかたどった鍵。

「匠っ!?これ…!!えぇ!!??」

「もうちょっと可愛く喜べよ」

 慌てふためく私を見て、くくくっとおかしそうに笑う匠。

「だって、えぇぇ!!??」

「お前の考えそうな事なんて、お見通しなんだよ」

 そう言って不敵に微笑む匠の瞳は、なんだかとても優しく見えた。



 高鳴る胸で探し出した宝石箱の中には、小さな宝石のついた可愛い指輪。

 驚きと嬉しさで目が潤む私を、匠はくすくす笑いながら見つめている。


 そっけない態度をとりながら、いつも私に嬉しい驚きをくれる匠。

 私も、いつか匠の上手をいく演出、考えなくっちゃ!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ