第六話・初詣《問題編》
今日は大晦日。
私、橘 愛良は自宅のコタツに入りながら、携帯電話片手にちょっとむくれていた。
メールの相手は幼馴染の横溝 匠。
年が明けたら直ぐに初詣に行こうと数日前から誘っているものの、直前となった今も『寒いから嫌だ』という意見を変えてくれる気配はない。
年明けまで数時間となり、私は匠を外出させる為に頭をフル回転させていた。
匠を動かすには、やっぱり好物を使うしかないだろう。
匠が感心するくらいの暗号を作れば、きっとそのご褒美に付き合ってくれるはず。
なんだかんだ言ったって、匠は優しいから。
私は一生懸命考えた暗号を、メールに打ち込むと送信ボタンを押した。
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件名:初詣
本文:
↓るあざたゆいで ←ぎふきもちせ →やぬ
↑いうり = あいら
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匠が相手だからヒントは私の名前のみだが、匠ならきっと大丈夫。
文頭の矢印がポイントだと直ぐに気付くだろう。
携帯をパタンと閉じると、私は知らずのうちに笑みを浮かべていた。
メールを見た匠が、仕方がないなって顔をしながら待ち合わせ場所に来てくれる姿が目に浮かんだのだ。
「さて、支度しよーっと!」
そう独り言を呟いて、コタツの中から出る。
新しい年になって初めて会うんだから、いつもと違う姿を見せたかった。
匠が来てくれると信じ、私は身支度の手伝いをしてもらうため、母を捜しに軽い足取りで部屋をでたのだった。