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聖女と村娘の異世界旅行記  作者: 柘榴
旅立ちまで
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2 誕生日 2


                 **************************



「………を、用意してくれる?」

「了解!」


家の外から聞こえる話し声で目が覚めた。

慌てて時計を見ると、なんとまだ私が倒れてから5分ほどしか経っていなかった。

今の私は人の話し声ですら目が覚めるらしい。

とてもうるさいと評判の目覚まし時計を3個かけていたにも関わらず、起きたらもう遅刻寸前で、学校で必死に課題をやっていた前世とは大違いだ。

やはり、肉体が変わったからだろうか。



さて、やはり私には日本人としての前世があった。

名前を栗本 栞(くりもと しおり)という。

享年は17歳、死因は幼馴染みたちとの外出中に起こったバスの事故だった。



死んだことに対するショックも大きいが、なによりも寂しい。

今たらればを考えても、もう過ぎてしまったことだ。

もう一度「栗本 栞」として生き返ることなどできはしない。

それは分かっているのだが、それでも、もしもあのバスに乗っていなかったら…と考えてしまう。

何より心残りはたくさんある。


例えば、幼馴染みとの約束。

前世の私にも幼馴染みは3人いた。

大人になってもこうして一緒にいるのだと思うくらい、とても仲がよかった。

まるで今の私たちのように、大きくなったら皆で旅行に行こうね、と小さい頃に約束したのを覚えている。

まあ、高校で私だけ学校が分かれてしまい、1年ぶりに会えたと思った矢先事故に逢って死んでしまったため、結局叶わなかったのだが。

死ぬならせめて皆で旅行に行ってからにしたかった。



うじうじするのは嫌いだ。

落ち込むのはここまでにしよう。

落ち込んだって悲しんだっていいことなんて起こらない。

とりあえず前世のことを考えるのはやめて、これからのことを考えよう。


私が前世で読み(あさ)った異世界小説たちの中に、「クララ」という村娘の出てくる話はなかった。

つまり、悪役として断罪されることも、勇者や聖女として(あが)め奉られることもないということだ。

そのため、そのフラグを折るために前世の記憶を使う必要はない。


また、どこぞの主人公のように知識チートを使うという手はあるが、私は高位貴族の令嬢でもましてや王族でもない、ただの村娘だ。

もし私の案が大金になりなどしたら、金(もう)けのために誘拐される可能性だってある。

そのときに守ってくれるものは、何もないのだ。

そんなリスクを犯してまで稼ぎたいとは思わない。


それに、私はこの生活を結構気に入っている。

知識目的で王都に引っ張り出されたくはない。



ということで。

私は、余程のことがない限り前世の記憶や知識は使わずに、平凡な村娘としての人生を謳歌(おうか)することに決めた。



                 **************************



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